ドーナツ食べたい
アメリカにおける年間消費額10億ドル。個人の平均年間消費量31個。これはドーナツの話だ。 母国の内戦を経験、アメリカに移住し、カンボジア難民によるドーナツビジネスの礎を築いた「ドーナツキング」ことテッド・ノイ。 経済界へ多大な影響を及ぼすほ… 続きを読む
アメリカにおける年間消費額10億ドル。個人の平均年間消費量31個。これはドーナツの話だ。 母国の内戦を経験、アメリカに移住し、カンボジア難民によるドーナツビジネスの礎を築いた「ドーナツキング」ことテッド・ノイ。 経済界へ多大な影響を及ぼすほどの成功を成し遂げたものの、ギャンブル依存症や長年連れ添った妻クリスティへの裏切りで祖国で隠居するに至った彼の数奇な人生に、米ドーナツ産業の系譜やカンボジアの内紛まで深掘りしながら、アメリカ人のドーナツに対する並々ならぬ愛着を示すようなHIPHOPを中心としたポップな楽曲とカラフルな画作りで彩りつつ迫るドキュメンタリー。 製作総指揮は、まさかの『ブレードランナー』などでお馴染みリドリー・スコット。彼が才能を認めるアリス・グーが監督を務めた。 多くの起業家が直面してきたとおり、盛者必衰の理をあらわす。テッドが表舞台から退場するや否や、これまで辛酸を舐めてきた本国の老舗ダンキンドーナツが再び攻勢をかける。 家族を従業員に個人経営を続けてきたカンボジア系ドーナツ店。このまま大企業に飲み込まれてしまうのかと思いきや、テッドたち移民第1世代のハングリー精神が見事に覚醒遺伝。一流大学を卒業した孫世代たちは、経営学やSNS、新しいアイディアを駆使して生き残ることに成功している。 同じくアメリカンドリームを掴んだ者を描く作品としては、マクドナルドの創業者レイ・クロックをマイケル・キートンが素晴らしい演技で体現した『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』が思い出されるが、全体的に悪者として描かれるレイ・クロックと対照的に、テッド・ノイの過ちが(結局、孫世代には「生きる伝説」などと言ってSNSのバズりネタに利用されているのだが)関係者から許されているところがドラマティックである。 カリフォルニアにある90%以上のドーナツ店がカンボジア系というのも初めて知ったし、ポル・ポト率いるクメール・ルージュが起こした内戦運動などカンボジアの歴史の復習もできるなど勉強になるドキュメンタリーだった。