聴こえないはずの雑音が聴こえる
starstarstarstarstar - 3年前
※本文にネタバレがあります ネタバレを読む
たんたんと耳が聞こえない女の人がボクシングをする日常を描く。それはわかる。
日常をたんたんと。
ふと考える。何が言いたいのか。
なるほど。最後にわかった(ような気がする)。
明らかに彼女は鬱屈を抱えている。
同時に進むジムの閉鎖と平行して彼女はやる気を失っていくように見える。拾ってくれた会長。その会長との別れが迫る。
それはひとつの鬱屈の要因。
応援はしてくれるものの心配してボクシングを辞めさせようとする母親。それはわかるがちょっと苦しい。
それもひとつの要因。
警察の職務質問。質問に答えられない。諦めて去って行かれる。
それもひとつの要因。
ボクシングの試合で反則をされても言葉で訴えられない。
それもひとつの要因。
数えきれないくらいの要因が彼女にはある。
それぞれの要因が積み重なっていく。
最後のシーン。
試合をして負けた相手から声をかけられる。
「ありがとうございました」と。
そこに嫌味はなかった。
そのあと、ケイコは憑き物が取れたように晴れやかに坂を登って行った。
おそらく負けたのは反則のせいだと思っていたであろう。そして彼女を恨んでいただろう。しかし彼女は嫌なヤツではなかった。彼女も同じように苦労している。生活に追われている。自分だけではなかった。みんなそれぞれに鬱屈を抱えているのだと気がついた。そしてパァーと視界が広がった。全てが見えるようになった。未来が明るくなった。
鬱屈の要因はいわば生活の雑音。
聴こえないハズの雑音がケイコを苦しめていた。
何で自分ばっかりこんな目にと思っていたのではないだろうか。
始めから生活の雑音にまみれた映画だった。音楽はなく、街の音、靴の音、ボクシングのミット打ちの音。それらが象徴的に使われていた。
最後に雑音がとっぱわられたケイコから視界が広がるパァーという音が聴こえた。
エンドロールでも音楽はなく街の音のみ。
また雑音にまみれる。まだまだ人生は雑音にまみれて続くよと言わんばかりに。
☆4.3
starstarstarstarstar - 3年前
女性であること、障碍者であること、プロとはいえ有名ではないボクサーという職業であること、ケイコの立場から見たコロナ禍の社会はまるで別の世界に見えた。
三浦友和をはじめ実力が高いキャストの中で劣らないどころか輝く主演岸井ゆきのの演技は、まる… 続きを読む
女性であること、障碍者であること、プロとはいえ有名ではないボクサーという職業であること、ケイコの立場から見たコロナ禍の社会はまるで別の世界に見えた。
三浦友和をはじめ実力が高いキャストの中で劣らないどころか輝く主演岸井ゆきのの演技は、まるで「ケイコ」という女性のドキュメンタリー映画を観ている心地にさせられる。
そんな錯覚を起こさせるリアルさの要因として、ケイコの「日常」が徹底的に描かれている事にある。
ケイコの思いを解説する便利で都合のいい役は本来ケイコの日常には存在しない。その為、あくまでも日常から観客が察するよう、ストーリーは限りなく説明が希釈され出来事がただ淡々と進んでいく。
それ故にケイコの日常に薄らと張った蜘蛛の巣のように存在する差別と不条理、周囲の言葉、理解されない・伝わらない・思い通りにならないもどかしさがまるで目の前で起きているように感じられて胸が締め付けられたし、「目は口ほどに物を言う」ケイコの姿と終盤の秘めた思いを雄弁に綴るノートの展開で目頭が熱くなった。
《余談》
強いて言うなら字幕ありにして主人公としてフォーカスした聴覚障碍者の方にも楽しめる作品にして欲しかったし、『Coda あいのうた』のように当事者(聾者)を起用することはなかったのかも気になる。
《パンフレット》
映画タイトルの印字もないケイコのノート型。表紙の文字は“SMALL,SLOW BUT STEADY”
小笠原恵子さんのライフヒストリーをそのまま再現する映画化にはいくつかの理由で抵抗感やリスクを感じたため、新たにプロットを書き、それを読んで判断してほしいとプロデューサーにお願いしたとのこと(監督インタビュー)。この部分が気になる。
こういうのも悪くない
starstarstarstarstar - 3年前
予告通り、聴覚障害のある女子ボクサーの話。
あまり煽るような起伏もなく、日々を淡々と描くスタイル。
障害に対する気づきみたいなものもあるし、日常のなかでの心の揺れみたいなものを描くところに感情移入もある。
ただ、ロッキーやジャンプ漫画のよう… 続きを読む
予告通り、聴覚障害のある女子ボクサーの話。
あまり煽るような起伏もなく、日々を淡々と描くスタイル。
障害に対する気づきみたいなものもあるし、日常のなかでの心の揺れみたいなものを描くところに感情移入もある。
ただ、ロッキーやジャンプ漫画のような”努力”→”勝利!!”で締めくくるわけではなくて、淡々と。
号泣したい!だけが映画ではないとおもうし、こういうのも生活のインターバルとしていいのではないかと思います。
負けるでも立ち上がる
starstarstarstarstar - 3年前
日本らしいの製作 まじてよかった
恐るべし岸井ゆきの
starstarstarstarstar - 3年前
全体が引き締まりボクサーの減量如く贅肉を削ぎ落とした作品。
岸井ゆきのさんの醸し出す雰囲気がとても好き。
ただ軽々しく観る作品ではない。
『〜取り敢えず』でなく真正面から向き合いたいと感じた時に観て欲しい作品です。