☆4.0
「王の子供は王じゃない。王になるのは能力ある者だ」 「俺と一緒にに跳ぶのは誰だ」 『知は神の武器、正義を実現し、忍耐を獲得し、悪習を滅ぼし、敵を撃退、全てを超越するー』 セリフ一つひとつに声に出して読みたい教育語録が満載。 考えやルーツの異… 続きを読む
「王の子供は王じゃない。王になるのは能力ある者だ」 「俺と一緒にに跳ぶのは誰だ」 『知は神の武器、正義を実現し、忍耐を獲得し、悪習を滅ぼし、敵を撃退、全てを超越するー』 セリフ一つひとつに声に出して読みたい教育語録が満載。 考えやルーツの異なる他者を知り、信じ、能力を引き出し、折れないよう腐らないよう鼓舞しモチベーションを保つ…つくづく教育とは難しく、教師には様々な力が必要だと実感・感服する。 派手なアクションや爆発、CGはないが、オープニングや作中で飛び交う数式や図形、構造物の線画アニメーションと現実世界の合成がおしゃれで目を楽しませてくれる。 アーナンドに牽引されるように知識を身近な現象や生活と繋げて工夫しながらサバイブする生徒たちの逞しい姿。 観衆とアーナンド先生を巻き込む一体感と辺りをカラフルに彩る色粉の乱舞が『天使にラブソングを2』のJoyful,Joifulのようで最高にアガる、恥と劣等感という自縄自縛を振り払う歌ありダンスありラップありのホーリー祭り。 競争率100倍とも言われる難関試験に挑む若者たちの貧困と数々の妨害を超えて未来を開くという陳腐な言葉だが奇跡と呼ばざるを得ない偉業と、その偉業を知った多くの人々に与えた影響の大きさ。 観ている側が思わず励まされ、何か学びたくなってしまう胸熱な作品だった。 《余談》 日本語版キャッチコピー 『親ガチャなんて関係ない!』 めちゃくちゃある。 経済格差が教育格差に直結する事実は、ジニ係数が示す所得格差が年々拡大し、“親ガチャ”という言葉が流行して国会でも取り上げられる日本の姿にも重なる、もはや世界的な問題である。 インドは経済成長が目覚ましく、1990年代に比べれば貧困層は減少しているものの国際貧困ラインである1日1.9ドル以下で生活する人が2015年時点で1億7千万人以上存在し、労働人口の80%にあたる4億5千万人は路上販売や行商、臨時雇い、ゴミ拾いなど、インフォーマルセクター(行政の指導の下で行われておらず、国家の統計や記録に含まれていない経済活動)に従事せざるを得ない。国の富の85%は人口の10%が所有すると推定されている。 この社会の深刻な格差は個人の努力の問題だろうか。その解決策は意識と志の高い個人の勇気と努力だろうか。 実話ベースの作品だからこそ、一部の人が富を占有する事に触れると同時に格差という社会課題を変えるべきは生まれに関わらず福祉や教育を誰でも受けられるような「制度」とそれを整備する「政治」である事に、「社会問題は社会の問題」である現実にも触れて欲しかった。 タイムズ誌やオバマ元大統領に賞賛されるほどの達成困難な偉業の根本的な原因である「そんな制度はない」という状況は、たとえ無料であろうとも塾生の97%が男子である状況は、変わったのだろうか。 (子ども食堂を政治家が称賛する国の国民より) 《パンフレット》 インドの文化について大変為になる解説あり。生徒たちが凶徒に放ったマハーバーラタに因んだ矢の意味は正に下剋上。 なお、生徒を演じた30人のキャストの中には、アーナンド・クマールの実際の教え子も含まれているとの事。事実は小説より奇なり…。 (字幕翻訳:佐藤裕之)