知らぬは本人ばかりなり。
starstarstarstarstar - 3年前
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昔のCMで、大滝秀治さんが「おまえのぉ話しは、、つまらん!」とピシャリと言い切るオチがありましたが、
数十年来の親友に、突然それを云われ、絶交どころか絶縁を言い渡される、、“いい人”である事だけが取り柄の主人公の悲哀。
閉鎖的で保守的な島社会の中で、親友一人を失うだけで、
あぁもゴッソリとアイデンティティを喪失するものなのかと。
なんだよ、、村社会ニッポンと大差ねぇじゃんか、なぁ?デワノ守さんよぉ。
でも、まぁ、、主人公からすれば、なんで?急に突然?つか、今更?マジなんで今?、、なんだろうけど、
親友からしたら、、じわじわと積み重なった違和感、価値観のズレが、幼少からずっといる腐れ縁のキャパを遥かに超えて、もう大爆発した当然の帰結だったんだろうなと、私は思う。
どうして?って嫌われる理由が思い付かないその無神経な雑さ、、そう云うトコなんだよ?って、つまりはそんな奴に、あぁだこうだと懇切丁寧に説明したところで理解出来ないだろうし、納得しないだろ?なんだろうなぁ、コルム的には。
つか、何気にドミニク役のバリー・コーガンさんが、主役二人を喰うくらい、マジで素晴らしい存在感を放ってる。
恐らくは軽度の知的障碍により、周りから圧倒的に馬鹿にされ、一切の躊躇もなく下に見られ、ましてや島の厄介者とまで揶揄されるドミニク青年、、
親友に絶縁されて縋る者がいない主人公を、何だかんだ労り、口は悪いけど励ましてくれたのに、その主人公ときたら他の島民と同じく陰で彼を心底馬鹿にしてる。
でも、そんな下に見ていたドミニクにさえも、言動の端々に、感性や知識・行動力に於いて本当に劣っていたのは自分の方だったと、、心では絶対に認めずとも、頭では理解出来て、更に淋しさが倍増する主人公に、
人間の愚かさと、どうしようもない愛おしさを感じましたよ。
卓抜な諍い論、あるいは人間の愚かさ
starstarstarstarstar - 3年前
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ポスターから地味目を予想していたら、何の何の!冒頭から一気に引き込まれ、成り行きにハラハラ、ドキドキ、ヤキモキしながら息を呑んで、一瞬の弛みもなくラストまで連れて行かれた。
冒頭から素晴らしい音楽がここはアイルランドだと告げる。絶縁を宣告されながら納得いかず相手を追い回し続けるパードリック。現代なら男同士版ストーカーである。2人とも悪い人間でも嫌な輩でもなく、どちらも、思いやりも優しさも備えた人間なのに、片方がもう一方に決別宣言したために、島じゅうの人間が2人を注視している。パードリックを遠ざけるためなら、コルムは常軌を逸した行動も厭わない。
そしてラスト30分、2人の関係に不可逆的な変質が生じる。愛するものの死が猛毒の怒りを生じさせ、怒りは憎しみへと転じる。ラストシーンの浜辺、海の彼方の本土の内戦に言及される。最近砲声が聞こえないね、と片方。また始まるよ、ああいうのも悪くないさ、ともう片方。この作品のなかで何度か繰り返された本土の内戦の砲声、それまでは遠景に過ぎなかったこの砲声が、ラストの浜辺でパードリックが口にする台詞によって、ついに2人の物語とシンクロする。
この映画が描きたかったのは、このラスト、かつては親友だった者同士の間に不可逆的に生じる憎しみの感情、その誕生の瞬間を捉えることだったのだと腑に落ちる。それはこの映画の遠景であるアイルランド内戦を突き動かす動因でもあるだろう。アイルランドだけではない。世界中のさまざまな土地で今でも引き起こっている紛争や内戦の中核に居座る動因でもあるだろう。
人間とは何と愚かで哀しい生き物なのだろう。脇役の物言わぬ馬や牛、ロバや犬が、優しく寄り添い、人間たちを慰め、諌めているかのようで、心に残る。
脚本、演出の監督の力量にうなる思い、感服でした。脚本、演出、俳優、美術、音楽のアンサンブルも素晴らしい。
☆4.8
starstarstarstarstar - 3年前
今からちょうど百年前の架空の島の出来事は、小さな火種が大火に拡大していく内戦の暗喩とともに、一人の女性と一人の若者の選択として見ると、現代と共通する狭くて古い男性社会に対する痛切な皮肉に感じられた。
1.コルムは「考える人」?
コルムは「… 続きを読む
今からちょうど百年前の架空の島の出来事は、小さな火種が大火に拡大していく内戦の暗喩とともに、一人の女性と一人の若者の選択として見ると、現代と共通する狭くて古い男性社会に対する痛切な皮肉に感じられた。
1.コルムは「考える人」?
コルムは「考える人」だとパブの店主や客は言う。確かにコルムはなぜ内戦が起きているか分かっているが、パードリックはあまり分かっていないし家に新聞があっても興味が薄い。コルムの家には蓄音機や絵画、世界各地の品など文化・芸術的なものがいくつもあり、バイオリンが弾けて作曲もできる。
そんな文化・知的レベルがパードリックより高いコルムはパードリックと日々繰り返す無為な話が時間の無駄だと感じ絶交を宣言する。
その気持ちは分からんでもない、パードリックはそっとしておいてやれよ、そういうとこだよ嫌がられるの、作曲には時間と熟考が必要なんだよ、と見せかけて…
2.本当にコルムは「考える人」か
①好きな音楽で、しかも超有名なモーツァルトの知識ですら間違っていた(17世紀の作曲家でないとシボーンに指摘される)
②家にある世界各地の品に統一感もなければインテリア的な飾り方もしていない。雑然とただあるだけ(薄い木製のお面はぶつけると割れるし裏は見ないから吊るさずに壁にかけるでしょ普通)
③バイオリンを弾き音楽に専念したいと言いつつ指を切り落とす(本末転倒やないかい)
④不満を無視や否定的な態度で表す幼稚さ(ドミニクにまで12歳か?と言われる始末)
また、上記の“受動的攻撃性[Passive aggression]”によってパードリックを攻撃し、相手が和解しようとすれば自傷行為で脅迫する一方的な被害者意識、大人とは思えない説明能力と想像力の欠如(モラハラの典型的行動)
⑤曲名の「精霊」は“響き”でつけた(中学生の考えた必殺技かよ、エターナルフォースブリザード)
⑥家に本が一冊もない(よりにもよって『丘の上の本屋さん』を観た翌日にこれはキツい)
コルムはシボーンに「君には分かるだろ?」と、パードリックと違い自分は知識人側で彼に自分の豊かな才能や知識、時間を浪費されていると同意を求めたが、結局彼らの言う「考える人」など狭い島の「井の中の蛙」に過ぎない。そして蛙は井戸の中で他の蛙と“内戦”を起こした結果、日常を壊すほど取り返しのつかないものを失った。(コルムは指と家、パードリックはロバと妹)
3.イニシェリン島の希望
鞄に入りきらないほどの本を持ち、真の「考える人」だったにも関わらず、島では「愛想のない」「行き遅れ」女でしかなかったシボーンが兄の世話や明らかに自分と釣り合わない男たちとの破滅的な結婚ではなく、「井の中」から「大海」へ出て自立できたことが救いであり希望。船の上で一人だけ他と違う鮮やかなコートの黄色は希望の光のようだった。
シボーンに幸あれ。
※当時、女性は付き添いの男性か紹介状がなければ図書館に自由に出入りすることが許されなかった。そんな時代に司書として働けるシボーンの優秀さと、彼女を「行き遅れ」と罵った人間の低俗さ、知性の無さ、権威の帽子を被った“男らしさのシンボル”の矮小さ、最後に何を失ったのか、という対比が最高で最悪な皮肉だった。
※“シェリー酒”を好んだ女性作家にはフェミニズム批評の古典書『自分ひとりの部屋』(1929年刊行)を著したヴァージニア・ウルフをはじめ、エミリー・ディキンソン、ジョージ・エリオット[メアリ・アンのペンネーム]、アガサ・クリスティがいる。
4.イニシェリン島の絶望
ドミニクは事故ではなく自殺だと推測している。父親に暴力を振るわれたにも拘らず誰からも庇われず、むしろ島民からは見下し馬鹿にされる。最悪な環境の中、シボーンに告白するも失恋し、諦めずに再挑戦しようにも彼女は島を出てしまった(シボーンが島を出るシーンで崖から見送るパードリックの奥のボヤけた人影は彼だと推測)。島を出る金も力もない若者が「嫌なら出て行く」方法は一つしかない。キリスト教では自殺は禁忌だが、彼が教会に礼拝に行かなかったことからも信仰心など抑止力にならなかったのでは。
(なお、事故だったらそれはそれで父親に対する「神によるあまりにも残酷な仕打ち/天罰」という意味で良い皮肉でもあると思う)
《余談》
閉鎖的で硬直化した社会から周縁化される者たちがその社会に見切りをつけて出て行くのは百年前も現在も変わらない。
外務省の海外在留邦人数調査統計で、2022年10月1日現在、日本の海外永住者は過去最高の約55万7千人となった。海外永住者の6割は女性だ。
若者は自殺という形で出て行く。この国の若者(15〜39歳)の死因の第一位は事故や病気ではなく自殺だ。
「イニシェリン島は大変だ、嫌な島だなあ」と言える状況ではない、この“島”も。
(字幕翻訳:牧野琴子)
鑑賞後に語り合いたい
starstarstarstarstar - 3年前
1/28 109シネマズ湘南
マーティン・マクドナー監督の作品て、『スリー・ビルボード』の時もそうでしたが、話のきっかけはセンセーショナルだけど、そこからさほど映画独特のケレン味やエンタメ性も無く、エンディングまで淡々と物語が進んでい… 続きを読む
1/28 109シネマズ湘南
マーティン・マクドナー監督の作品て、『スリー・ビルボード』の時もそうでしたが、話のきっかけはセンセーショナルだけど、そこからさほど映画独特のケレン味やエンタメ性も無く、エンディングまで淡々と物語が進んでいく。けれども観終わった後にじわりと心がザワつく…
そんな上質な人間ドラマだと思います。
これから観られる方へ、一応アカデミー賞多部門ノミネートされている作品ですが、とても静かな映画です。
私の隣のおじさんは開始15分で寝ていました(笑)
この作品、静寂の演出がとてもいいんです。
何気なく部屋に佇んでいる場面で、奥で鳴っている時計のチクタク音最高です。
その寝ているおじさんはイビキこそかいていませんでしたが、寝息も邪魔になるくらいの静寂。
なのでこういった静かな映画が苦手、もしくはポップコーン無しでは映画を観られない方、睡眠不足が続いている方は鑑賞を控える事をオススメします。
だけど鑑賞する事ができましたら観た人同士で大いに語りあいたい作品です。
あの事件は個人に問題があったのか、もしくはあの土地に問題があったのか…?
私もお酒片手に本作について誰かと語り合いたいです。
地味ですが、じわります
starstarstarstarstar - 3年前
1923年
独立を果たしても激化する内戦下のアイルランド。
本土が見える位置にある、多分アラン諸島にあるとする、架空の島での物語。
ナイスな男パードリックと、
残りの人生を変えようと決意したコルム。
2人の静かな闘いの物語でもあります。
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1923年
独立を果たしても激化する内戦下のアイルランド。
本土が見える位置にある、多分アラン諸島にあるとする、架空の島での物語。
ナイスな男パードリックと、
残りの人生を変えようと決意したコルム。
2人の静かな闘いの物語でもあります。
お互い譲れない信条の下、もう後には引けません。
対岸の内戦と同じく‥。
万人受けする話ではありません。
地味です。
しかしセリフ回しの細かい所がユーモラスで、
はっと驚くシーンも多数あります。
何よりバリー・コーガン!
今作も怪演!
どうしようもない奴かと思いきや、
女性への素晴らしい礼儀正しさを見せ、
家庭の問題や哀しみを抱えた、複雑な人物を見事に演じていました。
ダンケルクの純朴、グリーンナイトの狡猾、
今作の複雑さ。
少ない表情変化で魅せてくれます。
恐ろしい子‥‥!
愚か者たち
starstarstarstarstar - 3年前
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この島は退屈で悪意のある人しかいない。
その言葉に縛られていても分からない人には意地を張り続
けるしかない。
清い精霊なんて、あるわけない。
その島の一番のバカと言われたドミニクは主人公が悩む
友人との不和を「12才か」と喩える。
ドミニクは紙一重の天才かもしれない。
その島の人々は精神年齢が12才のままなのだ。
警官なのに暴君で、教会もあるだけで意味もなし。
懺悔をするくせに自傷行為でしか思いを示せなかったり、
嫌がる人を思いやれず追いかけ回し、己を優しい人間だと
言い張る。
みんなみんな、どうしょうもない愚かな人達。
自分の意地だけを性懲りもなく、張り続ける。
島を離れれば片づく問題と、はなから島を離れるなど考え
ない者達。
事情により離れられない者。
この教訓噺は現代の日本でも、よくある話かもしれない。
本脚本を演出に昇華する監督は、やはり認めざるを得ない。
主演のコリン・ファレルはバイオレンス物の印象が強く
て、本作のように困った時は眉を八の字にする様は
『ウディ・アレンの夢と犯罪』再びか。
バリー・コーガンの存在がミステリアスで、彼の演技は
どの作品も面白い。
ただ我々の日常を極論で見せただけ
starstarstarstarstar - 3年前
取っ掛かりは子供時代によく見られたもの。
「友達をやめる」
そんなことを言いながら割と簡単に仲違いして割と簡単に仲直りしたものである。なのでたぶんみなさん大なり小なり経験がおありかと。
そこからちょっとずつおかしな方向に進んでいく。
(単純… 続きを読む
取っ掛かりは子供時代によく見られたもの。
「友達をやめる」
そんなことを言いながら割と簡単に仲違いして割と簡単に仲直りしたものである。なのでたぶんみなさん大なり小なり経験がおありかと。
そこからちょっとずつおかしな方向に進んでいく。
(単純にどこに転がっていくかわからない映画は見ていてワクワクしませんか)
ちょっとした悪意も積み重なって周囲にも影響していく。人間関係のイザコザ。
噂話をしてみたり、悪口を言ってみたり、無視してみたり、秘密をバラしてみたり、八つ当たりしてみたり、人のせいにしてみたり、考える人がいたり、考えない人がいたり、田舎から都会に飛び出してみたり、昨日まで生きていた人が急に死んでみたり。この島内で起こったことは我々の町内で起こったことと同じだ。あまりにも極端であるが(笑)
突き詰めていくとそこに辿り着く。
そう考えてみると、実際に町内で起こった出来事をひとつずつ大袈裟にしてこの映画はできたのかもしれない。
それくらい普遍性があったと思うある意味で。
あくまでだいぶん極論にしてあるが(笑)
しかし救いはある。
そんな中でも自分のことだけではなく人の心配はするのである。そんな極論の世界でも人の気持ちは考えるし自分が悪いと思えば謝る時は謝る。
退屈で悪意ばかりの人間であるが一方で思いやりが示される。人間には闇だけでなく光がある。
不思議な映画であったがそんなこんなで妙に胸に迫る映画でした。
あなたの理解を拒むアイリッシュ魂
starstarstarstarstar - 3年前
何とか消化しようとしても胃の中で存在し続ける食べ物のように、個々の人物の行動は理解を超えるが、ズシリと心に入り込んで、アイルランドという不思議の世界を感じさせて、見るものを飽きさせない。理解しようとしてはならない、ただ受け入れるしかない世界。アイルランドという未知の世界を旅してみたくなった。
暇と退屈を通した批評
starstarstarstarstar - 3年前
※本文にネタバレがあります ネタバレを読む
2人の男の奇妙な関係
暇と退屈がキー
生きることは死ぬまでの暇つぶし
というセリフがある
どう暇を潰すか
それこそが価値観
芸術的創作に費やす
誰かと談笑する
いままでの暇つぶしが
突然無意味になることもある
数十年来、ともにした2人
価値観の変化から絶縁を宣告
その関係はすでに固いものになっていた
ゆえに絶縁は容易でない
ゆえにまさに身を切る指を切る
ずっと曇りの不穏な島
対岸は戦時下、着弾の破裂音
島民は無関心
島内のゴシップが関心事
暇を突きつけられると
埋め合わせる衝動が生まれる
それには誰も抗えない
誰に何に依存するか
談笑も芸術も読書も所詮は同根
ただ芸術や読書は外部なのかもしれない
別の居場所をもてる
それでも苦しかったら
島を出るしかない
この映画をつまらないで片付けることは
ゴシップに明け暮れる人々
なのかもしれない
どこまでも薄暗くて美しいイニシェリン島と
starstarstarstarstar - 3年前
ただでさえ閉鎖的で純粋な島民は、本土から時折聞こえる内戦の音にますます明るい未来を描けず、負のスパイラルに陥っている。そしてその反動が思いの外過激になるのである。
ともあれ、わかりやすい映画が好きな人は見ないでください。カタルシス効果は少しあるとは思いますが。
島の風景が全てを物語っているところが素晴らしかった。ロバが可愛いかった。