未知への歓喜と恐怖
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ずっと楽しみにしていたジブリの新作 正直なところやっぱりよくわかんなかった。 でも、楽しかったし、わくわくした。 真っ直ぐ無鉄砲な男性とたおやかで力強い女性 見た目はよくないけどとても美味しそうな食卓 不気味で憎たらしいのにどこか愛らしい生き物 綺麗で魅惑的なのに底知れない恐怖が漂う自然 物理法則も自然法則も無視した超越的な世界観 どの場面を掬い取ってもジブリがそこにあって 言語情報は多くないはずなのに映像に情報が溢れてる。 今作は特にアニメーションが印象的だったように思う。 荒地の魔女みたいなお婆ちゃん7人いるなとか アオサギの剥き出しの歯がトトロみたいだなとか エボシ様みたいな豪胆さと優しさがあるなとか 外壁の蔦を辿って登っていくのパズーみたいで カルシファーみたいに炎が生きてるようで 戦闘機の外殻が王蟲の抜け殻のようで 世界の崩壊はラピュタのバルスみたいで 争いに翻弄されていくのが風立ちぬみたいで どこかでみたような映像表現が沢山あって、きっと一人ひとり違う作品を当てはめるんだろうなって思った。 過去作の焼き回しにも思えるけどきっと総決算なんだと思う。 ストーリーは、母を失った眞人が新たな母と新たな環境に挑戦して融和して家族になっていく話。だと思う。 アオザキを介して母の死に向き合い、新たな母を受け入れる。そんな話だと思う。 新しい家に移り住んで他人行儀に振る舞う一方で部屋で1人になった途端に安堵から眠りに落ちて母を夢見て涙する。幼い眞人にとっては簡単に受け入れられなかっただろうけど、懸命に受け入れよう戦ってた。 そんな最中、アオサギが現れて亡くなった母の話をする。 母に会いたい気持ちもあっただろうけど、もう居ないことはわかってて、それでも母に会いたくて冒険を始める。 非現実的な別の世界へ落ちていくのはアニメだからだけど、自分も幼い頃"もう一つ"のどこか別の世界を夢見たことが何度もあった。街を探検したり家の中に秘密基地を作ったり、知らない人にも躊躇いなく話しかけたり、思いつきで行動したり、そういう少年の時の危なっかしさみたいな青っぽさが懐かしく羨ましく映った。 空から落ちて来た石が別の世界との扉を作り、 大叔父はそこの主人として自分の世界を創り出す。 塔の中の世界では別々の時間が時の回廊で繋がっていて 眞人はそこで昔の母とキリノさんに会い世話になる。 異質で特異な動植物が生きる世界も変わらず時間は流れていき、髪は生え虫は湧き、生態系は日々変わっていく。大叔父も歳を重ねて老いていき、眞人に世界を維持するために跡を継いでほしいと願う。 自分の理想の世界が手に入るという状況でも、眞人は自分が悪意を持っているから、自分では世界を作れないから、争いの絶えない戦時中の世界であっても新たな家族と友人と生きていきたいと願い、結果石の世界は崩壊する。 理から外れた世界にも普遍的な問いがある。 "君たちはどう生きるか"と。 これは眞人も作中で問われたように、 観客である自分にも問われていたように思う。 眞人は自分の意志で考え判断し決意したが君たちは? 君たちはどう生きるのかと。消費して消費されて思考を持たずに、まさに石のように生きるのかと。作中は石が意思を持っていたのがとっても良かった。哲学的にも。石は創造と死を、木は繁栄と生を。 突然の展開も多くて散らかってると思うけど、本筋は一本通ってて結構シンプルだと思う。1人の少年の成長譚。眞人は自分で世界を創れたのに夢の世界が目の前にあったのに困難の多い元の世界を選択する。そこに何かが、大きな何かがある。 宣伝を一切しないことで逆に一方的な期待感を寄せていた人は裏切られたように感じるのかもしれない。それもわかるし、何も知らないからこそ作品に魅入ってしまう自分もいた。声優はキムタク以外全然わからなかった。 10年ぶりのジブリ作品というだけで過剰なまでの期待を自分は寄せていたし、夜遅い時間でも映画館は超満員で集客手法としてはジブリブランドを最大限活かした上で、前情報のない観客は先入観とか固定概念とかを捨てて作品と向き合えたのかもしれない。 エンターテイメントとしてはどうなんだって話もあるけど、理由を求めて合理性や効率性が重視される社会だからこそ理由なき感情に寄り添える余白を持ちたい。 抽象的で暗喩的な作品は意味がわからない 意味がわからないものは面白くない って思っちゃうけど、 でも、考えたい。 自分の視点で自分の言葉で自分の価値観で考えたい。 短尺の動画から即時的な快楽を日常的に摂取して 意訳された言説を疑いなく真実だと信じ切って ネットの誰かがそれっぽい答えを教えてくれる そんな都合のいい今の社会だからこそ 自分で考えて、自分なりの答えを出して、 自分の生き方で生きていきたい。 そんな風に思えた映画だった。 比較対象にするのは野暮だけど…最近だと新海監督の作品は映像が恐ろしく精緻でストーリーの仕掛けも秀逸で現代にあった面白さがあると思う。でもどこか綺麗過ぎて無機質に感じてた。ジブリはどんどん寓話的な作品から難解に独善的になっていってる気もするけど、それでも登場人物や動植物が息をして生々しく存在を感じられる。 作画にスタジオポノックやスタジオ地図、スタジオカラーやコミックスウェーブなど錚々たる面々が入り込んでて、これが日本アニメの叡智を集結した映像なんだと思えた。 ジブリというだけで強大なバフがかかってしまってるけど、ジブリの新作を劇場で見れただけで満足してしまった。そして、もうこれが本当に最後の宮崎駿監督作品かもしれないと思うと寂しさもまた同居している。 よく知らない人の考察なんかどっちでもよくて、まして都市伝説みたいな視点とともにその人の解説がさも真実かと思い込んで自分の体験になり変わることだけは避けたい。 君たちは、私たちは、どう生きるのか。 わからないことに恐怖して目を逸らして拒絶して 自分が理解できる価値を感じることだけ受け入れる。 果たしてそれでいいのかと、その生き方でいいのかと そう強く問われているようにも思えた。 誰かに生かされているのではなく、 自分は自分を生きるのだと。 自分の感じた感情を大切に取っておきたい。 私が感じた感情は誰にも奪えない。 映画にもいろんな決意が滲んでたように思う。 こんなにわくわくできて幸せだった。