☆3.5
starstarstarstarstar - 2年前
Filmarks試写会にて。
太平洋戦争が開戦するとアナウンサーたちは大本営発表を流して国民の戦意高揚を図り、軍に同伴してアジア各地の前線で放送局を開設、敵国軍人への戦意喪失の呼びかけや同化政策教育といった「電波戦」に従事する兵の一人にな… 続きを読む
Filmarks試写会にて。
太平洋戦争が開戦するとアナウンサーたちは大本営発表を流して国民の戦意高揚を図り、軍に同伴してアジア各地の前線で放送局を開設、敵国軍人への戦意喪失の呼びかけや同化政策教育といった「電波戦」に従事する兵の一人になっていく。
事実とも自らの考えとも乖離した内容の発信に抵抗できない一方で「電波戦士」になり切れない葛藤、同僚や取材相手が戦地に赴き死んでいくことを止められない自分への怒りや絶望を感じさせる和田の鬼気迫る実況が見事だった。
≪余談≫
全体的に「わかりやすい」のだが、そのわかりやすさに違和感が残った。
①状況を説明する台詞が多く、町並みや建物全体を引きの映像や広い場所の描写が少なく、人物たちはバストアップの映りが多い。
そのため映画というよりテレビドラマのスケールに感じられた。(学徒出陣壮行会、東京大空襲などのシーンで規模の大きさを表現できれば良かったかも)
②本作とほぼ時期を同じくして講談社 本田靖春ノンフィクション賞を受賞した『ラジオと戦争 放送人たちの「報国」』(NHK出版,大森淳郎)。
NHKのラジオ放送に携わった放送人たちの証言と記録、稀少な音源・資料をもとに、本作と同じく戦争とラジオの関係を緻密に追った傑作の本書には、視聴者から放送が軍や戦争の礼賛や戦意高揚に偏りすぎていないかと指摘があった旨が記されている。
一方で、本作の民衆はあまりにも放送を鵜呑みにし、踊らされるだけの存在に描かれていないかと疑問に思い監督への質問タイムに挙手した。
監督からは書籍は読んでいるが、視聴者の意見は礼賛する内容の方が多く長編の書籍と比べて2時間しかない映画には入れられなかったと回答された。
しかし、まさにその少数派の「声を上げられない姿」を描いてこそ、戦時中の同調圧力の根深さが描けたのではないか。
(放送を聞き万歳する人々の中に怪訝そうな顔をした人を混ぜたり一瞬抜きで映したりくらいはできたのでは)
③諜報・傍受する部屋を立ち入りが簡単な割にあからさまな「秘密組織」っぽく描き過ぎでは。
(映画『新聞記者』の情報調査室みたい)
④「関東大震災では正しくない情報で10万人が死んだ」という内容の台詞があるのだが、正しくない情報、流言飛語で最も殺された朝鮮人たちについて触れなくて良いのか疑問が残った。
⑤女性たちの「最低ね」「なのよ」「変わらないわ」などの喋り方に違和感。
何かモヤっとして
starstarstarstarstar - 2年前
※本文にネタバレがあります ネタバレを読む
帰宅してからwi kiで和田信賢アナウンサーを検索する。後輩の証言では上層部と揉めて、学徒動員壮行会の中継放送をやるべきでないと主張した?でもこれもムリがある話しで。当日酔い潰れて逃げ出したのでないにしても、nhkの職員として前日学生に取材するまで、その哀しい宿命に気付かない事自体。おかしな話。
戦前のメディア関係者は新聞社も、文学者も、映画界も、音楽家も、画家も、国威発揚に与して、当時の国策の名の下に若者を扇動し、送り出した事を総括し、反省と謝罪を繰り返しながら戦後を過ごした人も多い。
ゾウさんの、作詞家で知られる「まどみちお」さんも、戦時の扇動詩の発表を終生の恥として生きたらしい。
「アナウンサーたちの戦争」というタイトルなら、彼らが何と戦ったのか?はっきりさせないと。この映画のままだと「戦争に巻きこまれた、アナウンサーたち」が正しいタイトルなのではないか?と思う。
「史記」由来の素敵な漢詩も、アナウンサーとしての和田氏が実際に口にして、それが放送されてもいないなら、壮士にも届く訳もなく=架空のアナウンスメント(この映画の為の虚構)と言わざる得ない。そのあたりが、モヤっとした理由です。
愚かな戦争に翻弄される「言葉の人間」の足掻き
starstarstarstarstar - 2年前
『#劇場版アナウンサーたちの戦争』。敵国への憎しみを植え付け、戦争への意識を煽るため、大敗の事実を隠蔽し、嘘の情報を流すことを強いられた人々の苦悩と葛藤。この業界の端っこにしがみつく人間として、他人事ではない、重く、辛い、受け止めなければならない真実。言葉は武器か?無力か?
言葉の重み
starstarstarstarstar - 2年前
※本文にネタバレがあります ネタバレを読む
劇中で下記の話があった。
"関東大震災の際に正しい情報が入らなかったために多くの命が犠牲になった。"
もしそう思っていたら、お国のためならば、戦況が悪化していても嘘を突き通し国民を騙すような放送を続けるのは、正しい情報を放送したのだろうか?きっと、先人の方々が過ちをおかしたことに気づき正す方向性を見出せなければ現在はなかったのではないだろうか。
内容はとても良かった。
ドラマは見たことがないので、劇場版との違いはわからないが、戦時中の日本の放送事情を知ることが出来た。当時の戦地状況を伝える映像が綺麗にカラーで修正が施されているのも非常に見やすく、説明も分かりやすかった。
ストーリーはどこまでがフィクションでノンフィクションなのかは不明だが(当該作品を見て和田信貴氏が気になったらWikipediaを見てほしい)。
戦況が悪化していると知りながら嘘の情報を放送し、話した内容を意味の分からない子供が真似をしたことに罪悪感を覚えたのがきっかけなのか。
仕事のため、国のために、国民にも自身に対しても嘘を突き通したことに対する贖罪だったのか。
ラストの特攻隊員として旅立った学生のハガキが印象的だった。当時は書いた文章も検閲されたであろう時代に最期に取材に来てくれた和田氏に伝えられることを伝えたシーンが印象的だった。
アナウンサーたちの戦争
starstarstarstarstar - 2年前
マスメディアはその名の通り大きな媒体であるから、今も昔も容易に世論を形成しやすいし、大きな流れを作って扇動していくのだから、受け取る側は用心して付き合うべきである。それはこの作品の主人公たち送り手も同様であって、言葉等に違和感を抱いてもそれ… 続きを読む
マスメディアはその名の通り大きな媒体であるから、今も昔も容易に世論を形成しやすいし、大きな流れを作って扇動していくのだから、受け取る側は用心して付き合うべきである。それはこの作品の主人公たち送り手も同様であって、言葉等に違和感を抱いてもそれを伝えていくことであっという間に大衆に伝わってしまう。事実を伝えられない苦悩は痛いほどわかるが、そこで起こった過ちを今日まで教訓としてきたか?というと、どうも自信を持って肯定できなくなっているんじゃないか?受け取る我々にしても、あの時とは手段が大きく変わった送り手側にしても。