☆3.4
才あるワルの主人公が巨悪を倒すという王道エンタメでありながら、社会の末端で苦しむ人々の過酷さを巧みに描き出している。 人気俳優の映画を通して社会問題を知り、関心を持つきっかけになるという点はエンタメの持つ素晴らしい一面だ。 しかし、その感… 続きを読む
才あるワルの主人公が巨悪を倒すという王道エンタメでありながら、社会の末端で苦しむ人々の過酷さを巧みに描き出している。 人気俳優の映画を通して社会問題を知り、関心を持つきっかけになるという点はエンタメの持つ素晴らしい一面だ。 しかし、その感動的なストーリーの裏側には、どうにも拭いきれない「ご都合主義」が残った。 起死回生の決死の「座り込み」とその後の世間のリアクションは、まさにその最たる例だろう。 現実の警察が、たった数人〜数十人の市民の抵抗に簡単にひるむことはない。 そして、命を賭けた座り込みが、世間から「迷惑な奴らだった」「自業自得だ」と冷笑され、死体蹴りされて終わる可能性の方がはるかに高い。沖縄の基地反対運動への冷たい視線や、「高齢者の集団自決」を嘯くような言説を思い出すと、この描写はあまりに楽観的だ。 さらに、水道というライフラインが止まった際の影響も、都合よく描かれている。高級車を洗ったりジャグジー風呂に浸かったりする富裕層よりも、乳幼児のミルクを作る親や医療・介護の現場など、金や体力で解決できない「社会的弱者」にこそ深刻な被害が及ぶはずだ。 そのような不便や被害を被った市民―それまで村のことに興味を持たなかった人々―が、テレビで「迷惑者」の主張を聞いて素直に同情してくれるだろうか。特別な悪人ではない「普通の」市民にとって、弱者を助けるために不便を被るより、弱者を黙らせて問題を「解決」する方が、はるかに簡単だ。 このようなご都合主義を避けるために、ストーリーにはいくつかの改善点があったように思う。 映画『JAWAN』のように、村の脅威である「搾取層」や「権力者」を個別に突き上げ、市民を巻き込む手法なら、単なる同情ではなく熱烈な賛同を得られたのではないだろうか。 また、主人公カディルだけでなく、ヒロインや友人、敵以外の名もなきバイプレーヤーたちにも、それぞれの背景や考えが描かれていれば、より物語に深みが増し、現実味のある展開になったのではないだろうか。 社会問題を扱う映画だからこそ、現実の厳しさを無視したご都合主義は、物語の説得力を大きく損なってしまう。本作の脚本の巧みさがあっただけに、その点が非常に惜しく感じられた。 《余談》 ①女性が蚊帳の外? 水の問題はじいちゃんの問題ではなく村全体の問題なのだから女性たちも座り込み参加者になった方が良かったのでは。(ヒロインのアンキタは座り込みに参加していたし) ②老人ホームってどんなんだろ 老人ホームにスタッフがいなかったのだが、日本で言うケアハウス、特別養護老人ホーム、住宅型有料老人ホームみたいな要介護レベルの低い人向けなのだろうか。日本では入居者も介護者も女性比率が高いのだが、(インドは男女で施設を分けるものなのかもしれないが)ばあちゃん達はどこにいるのか疑問に感じた。 ③敵キャラ どこか皆詰めが甘くて緊張感に欠けるが、インテリヤクザさんはめっちゃ好みだった。 (字幕翻訳:大西美保)