汚い川の魚
※本文にネタバレがあります ネタバレを読む
苦しい世界、行くも地獄戻るも地獄。 気がついた時には暗い影がすぐそこまで忍び寄ってる。 身寄りのないタクヤは病気の弟のために自らの戸籍を売るが弟は助けられず、今度は自分が戸籍売買に手を染める。貧困ビジネスの中で出会ったマモルを弟のように可愛がり、マモルがこの世界から足を洗えるように金をくすねる。佐藤に嵌められ、目玉をくり抜かれただけでなく、腎臓を取るために梶谷の車で山梨の病院まで連れて行かれる。梶谷は自分が引き込んでしまったタクヤが同じ流れを断ち切ろうとしていることを知りタクヤと逃げる。 マモルは家族から逃げるように東京へ出てきたはいいが、ピンハネされたバイト代では食っていけず、タクヤに拾われて戸籍売買を手伝う。理由を知らされないまま佐藤にタクヤと会うなと言われタクヤの跡をつけるとタクヤは逃げる算段を整えている。希沙良のメッセージを受け取り家を出ようとすると佐藤とジョージが乗り込んでくる。タクヤの死を感じ取り残された金と新しい身分証を手に東京ではないどこかへ逃げる。 タクヤとマモルは互いに追われる身となる。 タクヤは命が助かったし、マモルは金が手に入った。 それでも2人にハッピーエンドはとても訪れそうにない。 ジョージたちが捕まったとはいえ、マモルが追われていることからも疑いの目は晴れていないし、タクヤと梶谷は先に警察に捕まる。まさか戸籍を売ってた人がおとり捜査の警察だとは思わなかった。 でも、捕まった方がきっといい。両目を失っているのに病院にもいけずに追っ手に怯える日々。罪を償って一からやり直すしかない。 一度踏み外した道から元の場所へ戻るのは思ったよりも難しい。目の前のお金のために大事なものを一瞬で失う。 まさにこの間戸籍証明書を取り寄せた。大事な場面で戸籍は必要になる。戸籍がないと身分を証明できない。戸籍を売るなんて愚かだと思うが、お金が喉から手が出るほど欲しい人にとっては目が眩んでしまう。 本当は一緒にご飯食べてるだけでよかったはずなのに。 闇バイトのように一時的にはお金が手に入っても、彼らは使い捨てにされ、将来だけではなく場合によっては命さえも失ってしまう。過激なことをやって懐が潤ったとしてもそれは継続しないし、先を見据えてみれば非合理だとつくづく思う。 今作では3世代にわたって連鎖する闇が3日間に凝縮されて描かれる。マモルは裏の世界から抜け出せたかもしれないが、代償は大きかった。 目玉をくり抜かれた姿は衝撃的で、目隠しではないと気づいた時の慟哭には身震いした。 梶谷はジョージたちにちゃんとビビりながらもタクヤに水や薬を飲ませ、意を決して逃げ出して、風呂に入れて、飯を食わせるとても面倒見のいい人間臭くて魅力的だった。せめても梶谷は由衣夏と幸せになって欲しい。 遠い世界の話のようで、きっとすぐそばにある現実だと思うと暗澹たる気持ちになる。