美しい多様性の街サラエボ
タイトルからは中身がわかりにくいけれど、嬉しい誤算の素晴らしい映画だった。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争終結後のサラエボで、U2が歴史的なコンサートを開くまでの経緯を描く作品なのだけれど、U2が主役なのではなく、主役はあくまでもサラエボの人々… 続きを読む
タイトルからは中身がわかりにくいけれど、嬉しい誤算の素晴らしい映画だった。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争終結後のサラエボで、U2が歴史的なコンサートを開くまでの経緯を描く作品なのだけれど、U2が主役なのではなく、主役はあくまでもサラエボの人々であり、サラエボの街だった。 それを実現させた立役者ビル・カーターがサラエボに赴いた動機の説明が、言い得て妙で、興味深い。彼は言う。恋人を事故で失ったとき、愛を失ったのではなく、愛の受け手を失ったのだと。なるほど、確かに。(と思いました。) その後サラエボという戦場に飛び込んだ彼の姿を見ながら、天国の恋人はハラハラしつつも、喜んでいただろうし、誇らしかっただろう。 それにしても、自国の大統領がある日突然、自国の軍隊を使って自国民を殺戮し始めるとは、そんなことがありうるとは、何と恐ろしい狂った事態であることか。しかもそれが数年も続くのだ。 現在ウクライナやガザやヨルダン川西岸でも、似たようなことが続いているのだが…。 ボノの思慮深く温かな人柄が感じ取れる作品で、ZOO TVの試みも、サラエボの人々の反骨精神も音楽を愛する心も、音楽が人々をひとつに甦らせるありさまも、いずれも素晴らしく、2日続けて観ずにはいられない作品でした。 タイトルの『キス・ザ・フューチャー』は、U2のサラエボでのコンサートで、ボノがサラエボ市民たちに語りかけた言葉。 上映館が少ないのが、もったいない。