二つの結末
※本文にネタバレがあります ネタバレを読む
試写にて鑑賞。難しい。 展開のテンポも早く、用語の説明もない。 その上、トーンは静かで頭に入ってくる前に次の展開へといつの間にか進んでいる。もう一回見たらまた違って見えるかもしれない。 ストーリーは諜報員のジョージが世界を脅かす不正プログラムのセヴェルスを流出させた二重スパイを追う話。ミーチャムから容疑者5名を知らされ、誰が犯人なのかあの手この手で追求していく。容疑者の中には愛する妻キャスリンの名前もあり、妻を疑う心と信じたい心の間で揺れ動きながらも真実を追い求める。 早速妻にセヴェルスの話をして表情を探りながら、容疑者5人を一挙に自宅へ集めゲームを催す。料理には自白剤を盛り込み嘘を暴こうする。 ゲームではフレディが浮気をしていることをジョージが暴露したことでクラリサは激情的にナイフでジョージの手を突き刺す。 夜皆が帰った後にゴミ箱から映画の半券を見つけたジョージはキャスリンにかまをかけるが、キャスリンは映画のことを知らないと嘘をついたため妻への疑念が深まる。ジョージは彼女のパスを使ってPCにログインし、チューリッヒに彼女が行くことを突き止める。 次の日、釣りをしているジョージの元にジェームズがやってきて妻が偽名で銀行口座を開き、そこに700万ポンド(13億円)が入っていると聞かされる。ますます妻への疑惑が深まる中でジョージはクラリサの元へ行き、彼女も浮気をしていることをネタに衛星へ不正アクセスするよう脅す。そして3分20秒の間にチューリッヒで妻がロシアの反政府組織の人間と交渉してることを知る。 しかし、この不正アクセスがバレてしまいジョージは窮地に陥る。チューリッヒから戻ったキャスリンにもフレディが接触してジョージの失敗を伝える。 この事から2人は互いに嵌められていたことに気づく。妻のためなら何でもするジョージと夫が唯一の弱点だと言われるキャスリンは互いに利用され失脚させられそうになっていると察する。 この時点でキャスリンはスパイではないことがわかり、キャスリンの言葉からフレディがスパイではないかと考え、反転攻勢にでる。 ジョージはジェームズを呼び出し彼を試した後、嘘発見器を使ってキャスリンを除く4人を尋問する。 そして改めて6人でテーブルにつき、種明かしがされる。 ジェームズが酔った勢いで口を滑らせ、セヴェルスのことを知ったゾーイは敬虔なカトリック教徒としてそれを見過ごせず、フレディに近づいて衛星のリダイレクト時間を聞き出してセヴェルスを阻止しようとする。唯一何も関与してないクラリサは何が何だかわからない。 そして、本当の黒幕は上司のスティーグリッツで、セヴェルスの一件は彼が優秀なジョージとキャスリンの共倒れを狙って画策したことだった。スティーグリッツはジェームズを利用してセヴェルスを盗み出し、2人に濡れ衣を着せようとした。ジェームズはジェームズでロシアの原子炉でメルトダウンを起こすことでロシアの国内を混乱させようとした。(恐らく時勢的にもウクライナ戦争を止めようとした)ジェームズも彼なりの正義心から行ったことだった。 そして、ジェームズはジョージに向かって空砲を打ち、すぐさまキャスリンがジェームズの頭を撃ち抜く。 スティーグリッツにエレベーターで引退を促すキャスリンは彼の陰謀を打倒したことを暗に伝えており、ジョージとキャスリンは愛を確かめ合ってエンドロールを迎える。 ストレートに見るとこう言う流れだったと思う。 (一回しか見てないから時系列違うかもだけど) でも、何か変。何か見落としている。 あまりにあっけなく終わったように感じる。 色々と記憶を呼び戻して考えて見ると違った結末が見えてくる。 これは憶測も入っているからどこまで意図されたものかはわからないが、セヴェルスをめぐる全てのことがキャスリンによって仕組まれたのではないかと考えられる。 一番引っかかるのは"映画の半券"。 キャスリンはジョージと映画を見に行った時、ジョージ含め周囲が驚いた一度目は驚かず、ジョージがキャスリンの方を見た時にあからさまに驚く仕草をする。これは最初の方で着替えをするキャスリンがジョージに対して、見られているのはわかると言うセリフと関係している。キャスリンは意図的にジョージに疑念を抱かせている。 脱いだ服はその辺に捨て置いて片付けるのはいつもジョージ。ラストシーンでティッシュをゴミ箱に投げたが入らない。でもそんなことは気にしないキャスリンが映画の半券をわざわざ目につくように捨てるのは不自然。諜報員のチーフをしている凄腕のキャスリンでも自宅では気を抜いているのかもしれない。ただ、映画のことを聞かれて知らないと言うのは明らかに嘘であり、キャスリンの言動は不自然だった。 最後のシーンで口座にはまだ700万ポンドがあることを話し、キスを交わす2人からも恐らく700万ポンドは彼らの手に渡ることになるし、スティーグリッツも失脚させられ、2人の完全勝利となっている。 もちろん、セヴェルスの存在を知り、それを盗ませるところからキャスリンが仕組んでいたかはわからない。 ただ、どこかでキャスリンはゲームを楽しみだしている。こんなに楽しいのは数年ぶりと言う言葉からも、彼女はこの展開を楽しんでいる。 またジョージもどこかで真相を掴んでいるように思われる。衛星でキャスリンのことを監視している時に、監視して監視されて、お互いにそれを知っていると言う言葉からも、キャスリンはジョージに監視されていることを知っているし、ジョージが何をしているかもキャスリンはわかっているように受け取れる。 口裏を合わせたわけではなくとも2人はお互いのことを疑いながらも信頼し合っている。 本作のテーマは信頼であり、誰を信じられるかということである。諜報員は誰もが嘘をつき、欺きあっていて、欺瞞に満ちている。 そんな中でもジョージは嘘を嫌い、妻のためなら人も殺せると言う。同じく諜報員だった父親の浮気を暴き、家族とキャリアを同時に失わせたことがフレディから明かされ、鬱になったこともわかる。ジョージは父を失脚させたが、同時に自身も傷ついており、ジョージは大切な人を失いたくないし、傷つけたくないと思っている。浮気しまくっている周囲とは違って妻一筋のジョージは心からキャスリンを愛している。 一方キャスリンは必要な嘘はつくといい、仕事以外でもブラックバックとして謎が多い。ゾーイとのカウンセリングでは2人が互いに初めて面白いことを言ったというセリフがポイントになって、その発言が真実であるとわかる。キャスリンは健康を害するほどに薬を服用しており、ジョージに監視されることにストレスを感じている。ただ、着替えをジョージに見られている時に、ジョージが謝ると、それもまた嬉しいと返す。 キャスリンはジョージから監視されることにストレスを感じつつも愛を感じており、相反する感情が混在しているように見える。 冒頭にミーチャムが浮気したことで妻を怒らせているという会話があるが、これももしかしたらキャスリンのことなのかもしれない。ミーチャムはジョージにキャスリンを調べさせて彼女が浮気しているのことを遠回しに伝え、ジョージが父親の人生を奪ったようにキャスリンも彼から奪い2人ともども葬り去ろうとしたのかもしれない。 ただ、これもキャスリンが仕込んだことであって、ミーチャムと浮気をしてジョージを試したとも考えられる。そしてジョージはジョージでフレディやクラリサの浮気を知っていたことからキャスリンの浮気も知っていたのかもしれない。(むしろ1番身近なキャスリンが浮気していてそれをジョージが知らない方がおかしい)だから、ジョージはジェームズを介してミーチャムを殺した可能性すらある。 ジェームズをキャスリンが殺してカーペットで片付ける流れも、今回が初めてではない程に自然。家に来たときゾーイがカーペットが新しくなってると言う言葉からも誰かを殺すことが予定されていたかのようだし、騙し騙され真相を突き詰めることのすべてが夫婦の愛を確かめ合うためのゲームだったのかもしれない。 ミーチャムのことはかなり飛躍した憶測だが、色々な考え方ができるという点ではとても歯応えのある映画だったように思う。 登場人物の関係性は事前にわかっていたが、それでも聞き馴染みのない言葉が多く、正直ついていけてない。ここに書いた内容でも記憶違いで間違ってる点が多分あると思うし、もっと面白ポイントが散らばっているはず。深読みしないと呆気ない物語に感じる点ではちょっと微妙どけど、妄想が膨らむ映画としては見終わった後の方が忙しい映画だった。 嘘と欺瞞に満ちた諜報員たちの中でも夫婦をやっていけるのは信頼し合っているからという普遍的な価値の表れなのかもしれない。 もう一回観たいな。