☆3.4
「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。」 前作『原発を止めた裁判長』でおなじみの樋口英明元裁判長が読み上げる判決文は、単なる法的判断… 続きを読む
「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。」 前作『原発を止めた裁判長』でおなじみの樋口英明元裁判長が読み上げる判決文は、単なる法的判断を超え、国土とそこで暮らす人々の営みを守るという強い保守的な思想と深い愛国心を感じる名文だ。 本作は、その思想を体現するかのようにソーラーシェアリングに挑む農家たちの姿を豊かな自然と共に映し出していく。光と影のコントラスト、四季折々の田畑の表情、そこで汗を流す人々の横顔――どれも美しい。 しかし、期待していたほど深くは掘り下げられていない、というのが正直な感想だ。前作の原発事故の解説がなくなった分、今作では個々の人となりやソーラーシェアリングそのものに焦点を当てると思っていたが、時系列に沿って出来事が淡々と並べられているだけで、味の薄い幕の内弁当に感じられた。 定点観測で植物や動物の成長を追うような演出、登場人物の苦労や喜び、ソーラーシェアリングの仕組み、費用、現状や課題、メガソーラーとの違い、慎重派な専門家や官僚の意見、海外での事例など、多角的な視点の一つひとつへの深掘りがあればドキュメンタリーとしての説得力が増したのではないだろうか。 とはいえ、農業と再エネが共存する未来のビジョンを、映像美とともに提示してくれた意義は大きい。ソーラーシェアリングという言葉を初めて知る人にとっては、入門編として十分価値がある作品だ。