『八つ墓村』なのか?
このレビューはどうしても多少のネタバレを挟まないと書けないので、ある程度承知の上でお読みください。 横溝正史ファン、特に金田一耕助ファン(それも特に多治見要蔵ファンw)としては見逃せない作品がやっと公開に成りましたので(出来はどうであれw… 続きを読む
このレビューはどうしても多少のネタバレを挟まないと書けないので、ある程度承知の上でお読みください。 横溝正史ファン、特に金田一耕助ファン(それも特に多治見要蔵ファンw)としては見逃せない作品がやっと公開に成りましたので(出来はどうであれw)、早速観て来ました。 原作含め過去映像作品を観られた事のある方なら誰でもすぐ判るとは思うのですが、今までの物とは「全くの別物」、骨子だけを残して(骨も結構砕いてるかな)肉は全て真新しいモノに置き換えられています。 換骨奪胎というか、ほぼ革故鼎新(かくこていしん:ほぼ全て作り替える事)をした感じでしょうか。 これをどう見るかによってかなり意見が違ってくるかと思います。 特に渥美版(‘77)や古谷版(‘78)、豊川版(‘96)などが印象に強く残っている方にはそのあまりの違いぶりにかなり驚かれると思います。 その驚きをどう捉えるか? 中には「これは『八つ墓村』ではない!」と憤慨される方も相当数おられるかと思います。 ・時代が現代なのはまぁいいとして、辰弥の出生の経緯が初めからはっきりしている事。通り名が「寺田」ですらない。 コレはこの作品(本作の事ではなく『八つ墓村』という作品自体)の肝の一つだと言ってもいい要素だと思うんですが… ・金田一含め各キャラの肉付けが斬新過ぎる。 過去にはスーツ姿などもありましたが、フリフリさんってwしかもレジェンド笹野鈴々音! ・死者が8人ではない。 つまり「八つ墓明神の祟り」になぞらえた、「犯人による」故意的な連続殺人事件ではない。そして死ぬ人が死ななくて死なない人が死ぬ。 ・金田一がほぼ推理しない。 そもそも作り自体が「ミステリー」ではなく、「ホラー」寄りの「ファンタジー」(怪奇譚·怪異譚)なので、事件を解決する事に重きを置いていない。 等々々… これだけ見ても知っている『八つ墓村』ではないと判ると思います。 これを改悪と見るか? 斬新、新鮮と見るか? 『八つ墓村』という作品を全く読んだり観た事がない方なら、こういう怪奇譚だと好意的に思われるかも知れません。 私も全く頭をカラにして、タイトルが同じだけの別作品として観るならば「それなりに」怖い怪奇譚として観る事が出来ました。 若い世代や怖がりの方なら充分怖いホラー作品だったと思います。 ただ、私の様に過去作を観た事がある方には違和感を感じた場面も多かったのではないでしょうか。 しかし、私がこの「作品単体」で観た時、過去の改変だからどうというのではなく、イマイチに思ったモノがいくつかありました。 ・折角のホラー仕立てなのにホラーに成り切れていない。 77年版のレイティングが「G」なのも驚きですが(あの時代はユルかった?)、あれだけのショックシーンが一つの見せ場であり売りで成功したのに、今作は新たな客層を取り込むのも狙いでしょうが、どちらかと言うとハイターゲットのリピーターを意識した企画だったと思うので(現に私が観た回の客層は7:3でジジババだった様に感じましたw)、もっと攻めた表現でも良かったかなと思います。 私的には77年版の方が断然怖かったです。 清水監督と言えばホラーですし、皆もそれを期待していたと思うので、せめて15+、欲を言えば18+でも全然良かったのですが。 ・劇伴(BGM )の当て方が上手くない。 此処で音楽が欲しい、此処はこのBGMの方が合っている等と思う場面が多々見られました。 比較に出して悪いのですが、同じ日に観た『踊る大捜査線~』は内容はたいした事ないのにw、劇伴(の当て方)が素晴らしく、それだけで引き込まれてしまいます。 そのシーンを盛り上げるのも感情移入させるのも其処に合った音楽だと思います。 映像、音楽が組み合わさって映画ですから。 あ、良かった点も挙げておかないとw ・多治見要蔵は貫禄では流石に77年版に敵いませんが、ビジュアルは良かったです。 狂気具合は越えてたかも。 スタチューでなくアクションフィギュアが出たら即、買うと思いますw ・里村典子の登場。 なかなか映像作品では不遇な扱いを受ける彼女が登場できたのは喜ばしい。 あ、でも代わりに春代が出なかったか… 使い古されたタイトルですので、なんとかそれらを乗り越えようとされていたのは充分伝わります。 ですが、表面をいくら変えようとも骨の部分(テーマ、コンセプト、技術等々)がしっかり作られていないと崩れて醜い(観にくい)モノに成ってしまいます。 どんなに姿形が変わっても、私は「それ」が観たかった。 それが出来ていたならば過去作とは別の位置で後年に残る作品として評価されると思うのですが。 あ、最後に一言。 エンドロール後もちょっと映像あります。 全てを観たい方はお気をつけて。