主役は二人の刑事。1988年の『ネオ東京』から深化を遂げた、哀しき怪物の物語
2026年5月15日の『機動警察パトレイバー EZY』公開を指折り数えて待つなか、2002年の劇場版第3弾『WXⅢ』が2週間限定の4Kリマスター版としてスクリーンに帰ってきました。 原作はゆうきまさみ氏による漫画版のエピソード「廃棄物13… 続きを読む
2026年5月15日の『機動警察パトレイバー EZY』公開を指折り数えて待つなか、2002年の劇場版第3弾『WXⅢ』が2週間限定の4Kリマスター版としてスクリーンに帰ってきました。 原作はゆうきまさみ氏による漫画版のエピソード「廃棄物13号」。 しかし、本作は主役、ヒロイン、そして物語の骨格に至るまで、徹底的なまでの大幅改変が施されています。 もともとはOVAのスピンオフ企画として立ち上がった背景もあり、特車二課の面々はほぼ登場しません。 初見時、誰もが「特車二課の活躍」を期待して劇場へ足を運んだはずですが、そこにいたのは巨大ロボットを操る若者たちではなく、本作オリジナルキャラクターの城南警察署のベテラン刑事・久住と若手・秦。 事件の真相を地道に追う二人を中心とした「刑事サスペンス」としての構図に、当時は度肝を抜かれたものでした。 ■ 現代社会に放たれた「生体」という名の野心作 本作において、レイバーはあくまで背景のガジェットに退いています。 主役に躍り出たのは、遺伝子実験の果てに生まれた悲劇の怪物「WXⅢ」。 当時、怪獣を描いたアニメ作品といえば『ザ☆ウルトラマン』や『ウルトラマンUSA』といったヒーロー色が強いものが主だったが、本作は現代社会に地続きのリアルなSFとして、極めて野心的な試みを貫いています。 ■ 継承される悲劇、波及する影響力 喪失した娘が怪物化するというモチーフは、大森一樹監督の『ゴジラVSビオランテ』(1989)でも描かれていますが、本作はその悲哀をさらに深化。 また、後にポン・ジュノ監督が『グエムル -漢江の怪物-』(2006)で描いた「日常に潜む異形の恐怖」に、本作が多大な影響を与えたというのも、この緻密なリアリズムを観れば誰もが納得です。 ■ 総評:パトレイバーが遺した「三つの警告」 押井守監督は第1弾で「システム依存への警鐘」を、第2弾で「平和の中の戦争」を見事に描いてみせました。 それに対し本作は、それらとは異なるベクトルである「バイオテクノロジーと軍事利用の倫理」というテーマを鮮烈に叩きつけています。