「金とは鋳造された自由である」
1989年11月9日のベルリンの壁崩壊によって東西ドイツの再統一が決まり、1990年10月3日の再統一に先がけ、1990年7月1日に東西ドイツマルクの通貨統合が行われた。旧東ドイツ国民の持つ東ドイツマルクを全て西ドイツマルクに交換、東ドイツ… 続きを読む
1989年11月9日のベルリンの壁崩壊によって東西ドイツの再統一が決まり、1990年10月3日の再統一に先がけ、1990年7月1日に東西ドイツマルクの通貨統合が行われた。旧東ドイツ国民の持つ東ドイツマルクを全て西ドイツマルクに交換、東ドイツマルクは廃止となった。 この映画はその通貨統合直後の、西ドイツとの 国境に近い東ドイツの田舎町ハルバーシュタットでの物語。 東西ドイツ統一のあおりで失業したローベルトとマーレンの夫婦の元に、幼馴染で親友のフォルカーが西への出稼ぎから戻ってくる。西に「馴染めなかった」と言って。 その夜、ローベルトとフォルカーは、近くの道を大型トラックが何台も列をなして軍用地に向かって走っていくのを目撃する。あれは何だ?何を運んでいるんだろう?顔を見合わせるふたり。 軍用地で働いているロベルトの叔父に連絡をとり、トラックが運んでいたものを突き止めるべく、ふたりは軍用地の地下倉庫に案内してもらう。 すると、そこには…。 実話に着想を得たというこの物語、大人のお伽噺かファンタジックな冒険譚のようでありながら、確かにこういうことありえただろうなぁと思える痛快な物語だ。 東西ペルリンの壁崩壊から東西ドイツ再統一までのこの頃、秘密警察まであった東ドイツの社会主義体制は機能しなくなり、しかし西ドイツの資本主義体制の支配もまだ充分には浸透していない東ドイツでは、たとえ国営企業が次々に廃業に追い込まれ、その結果失業者続出だったとしても、ぽっかり開いた束の間の空白のような自由感、解放感が満ち満ちていたのだろう。この映画を観て初めてそのことに気づくことができた。皆で協力し合って、紙屑と化したお金をユニークに運用するそのやり方は、まるで錬金術のようだけれど、資本主義の先取りでもある。それを皆でやるところに、社会主義的ユートピア志向のようなものが感じ取れる気がした。 主要な出演者たちが東ドイツ出身の俳優たちばかりであることも、たぶんこの映画の空気感に寄与しているのだろう。既に消滅して36年近くが経つ東ドイツだけれど、東ドイツ出身者のなかにはまだ東ドイツ的なものが生き残っているはずだから。 原題はZwei zu eins(2対1)。旧東ドイツマルクから西ドイツマルクへ1:1で交換される基礎額を超える場合の交換レートを表すと同時に、2つのドイツがひとつに再統一されたことも示唆し、またロベルトとフォルカーとマーレンの関係も暗喩する、トリプルミーニング。