予備知識ゼロから始まった32年越しの再会。クリント・イーストウッド『許されざる者』が教えてくれた映画の奥深さ
starstarstarstarstar - 2週間前
「午前十時の映画祭16」にて鑑賞いたしました。
初見は32年前の1994年です。
まだサブスクもなく、レンタルビデオの新作が1泊600円ほどだった時代。三軒茶屋にあった「三軒茶屋映画劇場」という、今では珍しい洋画2本立てを格安で楽しめる映… 続きを読む
「午前十時の映画祭16」にて鑑賞いたしました。
初見は32年前の1994年です。
まだサブスクもなく、レンタルビデオの新作が1泊600円ほどだった時代。三軒茶屋にあった「三軒茶屋映画劇場」という、今では珍しい洋画2本立てを格安で楽しめる映画館で出会いました。
その日はクリント・イーストウッド監督特集で、『許されざる者』とケビン・コスナーが初の悪役に挑んだ『パーフェクト・ワールド』という豪華な2本立てでした。
『アンタッチャブル』や『フィールド・オブ・ドリームス』の大ヒットですっかりコスナーに魅了されていた私は、彼の新作目当てで劇場へ向かったのです。
だが、予備知識ゼロ・西部劇ほぼ初体験・イーストウッド作品は地上波の『ダーティハリー』程度だった当時の私にとって、この作品との出会いは、何もかもが衝撃的でした。
今思うと、「映画の2本立て」はこういうめぐり合わせがあって幸せな時代でした。
まだ20歳そこそこ、多くの映画に出会えていなかった私の本作初見の感想は、「渋い大人の復讐譚」でした。
そこから30数年。
クリント・イーストウッド監督の出演作である『ローハイド』をはじめ、『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』『奴らを高く吊るせ!』『荒鷲の要塞』『ダーティハリー』『ダーティファイター』、さらに彼が師と仰ぐドン・シーゲル監督やセルジオ・レオーネ監督の作品まで幅広く鑑賞するようになりました。
そうして振り返ると、本作品の主人公であるウィリアム・"ビル"・マニー(演:クリント・イーストウッド)は、彼がかつて演じてきた主演作の主人公たちの空気を全身にまとい、まるで彼らの「後日談」のように頭の中でフラッシュバックしてきます。
イーストウッド自身が「最後の西部劇」と位置付けたように、数々の作品と共に歩んできた観客にとって、実に奥深い味わいを持つ作品なのでした。
作品内容も、「かつて極悪の限りを尽くした男が矜持を守るため、かつての仲間を無残なかたちで殺し晒した悪徳保安官への復讐」というファクターだけではなく、保安官リトル・ビル・ダゲット(演:ジーン・ハックマン)にも自身が出演した『フレンチ・コネクション』のドイル刑事よろしく、町の治安を維持するための彼なりの矜持と方法に則り、単純な復讐劇ではなく、各々の持つ信念、矜持に従う男たちのドラマであることが改めて感じとりました。
イーストウッド、ハックマン、モーガンはじめフランシス・フィッシャー、リチャード・ハリスの名優の競演と鬼気迫る演技、そして哀愁漂うレニー・ニーハウスのギターの調べは何十年経っても心を打ちます。時の移り変わりと共に視聴をすると感じ方が変わる名作ですね。
しかし、『最後の西部劇』として40年近く経過。
老獪なマニーを演じたイーストウッド監督が未だ現役なのは驚きです。
ためてためてドカーン!
starstarstarstarstar - 2週間前
※本文にネタバレがあります ネタバレを読む
子供だった私はアカデミー賞を取るような映画は理解できなくて、「アカデミー賞」イコール「難しくておもんない映画」という図式が出来上がっていた。「ランボー2怒りの脱出」がノミネートされないアカデミー賞はクソだとマジで思っていた笑(「ロッキー」が作品賞を取っていたと知るのはずっと後のことだった)。
なので、ずっと避けて通ってきたのだがこの「許されざる者」がアカデミー賞を取った時にはじめて認めてやってもいいと思ったものである(どっからの目線やねん!笑)。
歳を経て今あらたに見る「許されざる者」はだいぶ心に沁みます。むしろ自分も「許されざる者」であると思う。
少しだけ箇条書きで言わせてください。
・奥さんの命日が8月6日。アメリカ軍により初めて広島に原爆が落とされた日。これは偶然ではないだろう。この後クリントイーストウッドが「硫黄島への手紙」を撮ることになることは感慨深い。
・「ちんこが小さい」とバカにされたロクデナシが娼婦の顔を切り刻む。器の小さい男。そこから全てが始まる。男の器が小さいのはどの時代でも同じか。
・馬に乗れない。何度もこける。おじいちゃんのこけるところは見てて痛々しい。あえてカッコ悪いとこも見せる。
・モーガンフリーマンのインディアンの嫁、サリー。2人が去っていくのを見送るあの無愛想な顔。わかってたと思われるもう帰ってこないことを。さすがインディアンの娘。運命には逆らわない。
・イングリッシュボブの扱いたるや笑。なんてかわいそうなんでしょ。嘘を暴かれてボコボコにされる。最後は馬車の中から見苦しく文句たらたらで叫びまくる。カッコ悪いわ。
・イングリッシュボブの女王の話とか原爆の平和記念日とか盛り込んで、イギリス、アメリカ、日本の関係が透けて見える仕組みにもなっている。油断できないなあ笑。
・やたらに性欲ギンギンのモーガンフリーマンから女を抱かないのなら自分の手でするのかと聞かれて睨むウィリアムマニー。初期のダウンタウンDXで浜ちゃんが菅原文太に「オナニーはするんですか」と質問したのを思い出した笑(文太さんは少し間をおいて「しねえなあ」っていうてたなあ笑)。
・標的の2人を殺した後、街の外れでお金持ってくる娼婦を待つ。遠くから馬で来てるのを映しながらその流れでウィルはキッドの告白を聞く。劇中の時間の動きが止まらない。素晴らしい演出。
・イキってたキッドは初めて人を殺して「あいつは2度と息をしない」ともうビビりまくってケツをまくった。結局5人殺したとか大嘘つきだったのだが、ウィルは全くそこは責めない。今回で1人殺しただろと前向きに捉えさそうとする。とてもいい先輩だ笑。
・頑なに断ってた酒をモーガンフリーマンが死んだと聞いた時に飲み始める。ここまでか、もう無理だと悟った。かつての自分を取り戻す儀式のように。
・キッドはただの子供。殺した後に逃げる姿は鬼ごっこで逃げる子供のよう。幼い。ここであ〜子供かコイツとなる。
・ジーンハックマンを殺した後に、さりげなく雑魚にもう一発喰らわせる。当たり前のように。何の感情もなく。完全に戻ってきてるあの人。
・酒場を出る時に「撃ってきたら殺す。家族や親戚まで殺す」ってめっちゃ怖いこと言ってる笑。悪者のセリフ。自らの幻影をうまく利用してる。
・「娼婦を人間らしく扱え」と吠えて去っていく。これで都市伝説となっただろう。守らないとウィリアムマニーが来る!
・クリントイーストウッドはこの脚本を若い時に手に入れたが、自分が歳をとるまで取って置いたという。ゆえに熟成された。普通こんないい脚本はすぐに映画化したい、我慢できないとなるはずであるが、そこは「耐える男」クリントイーストウッドの本領発揮。ためてためてドカーン。まさしく作品とその製作過程とさらに役者の個性が合致する(そしてそれは「ランボー2怒りの脱出」とも合致する笑)。
すみませんたくさん溢れ出てしまいました。もっとあるけど、このへんで。
当然、こんなに語りたくなる映画はいい映画に間違いない。
ネットを埋葬しろ、娼婦を人間的に扱え!
starstarstarstarstar - 3週間前
初公開時以来久しぶりに鑑賞。若いときには充分読み取れなかった襞が、陰影が、今なら読み取れることを感じます。自らが依って立つ枠組みそのものに疑問を呈する、幾重にも重層的に折り畳まれた表現と彫りの見事な、アンチ西部劇。何と含蓄深く、味わい深いことか!ラストのイーストウッドの凄み、惚れ惚れです。
許されざる者
starstarstarstarstar - 5年前
午後エンタ午後ロード
奥深い映画
starstarstarstarstar - 9年前
イーストウッド監督の傑作西部劇を再鑑賞。
主人公はもちろんイーストウッド演じるマニーだけど、
他の登場人物もそれぞれ善と悪、強さと弱さがあり、それらがせめぎ合うことで、西部劇にありがちの勧善懲悪ではない重厚な物語となっている。
なんて奥深い映画なんだろう。
舞台は1880年代のワイオミング州。ロッキー山脈東部の丘陵の牧草地帯で別名「カウボーイ州」の風景が美しい。