旧き友は忘れて
「ほらね?あなたって人はいつもそうやって憎めないことを言うんだから...大嫌いよ!死ぬほど嫌い!」 午前十時の映画祭16 「男と女の友情は成立するか?」をテーマに、監督ロブ・ライナー×脚本ノーラ・エフロンが贈る珠玉のラブ・コメディ。大学卒… 続きを読む
「ほらね?あなたって人はいつもそうやって憎めないことを言うんだから...大嫌いよ!死ぬほど嫌い!」 午前十時の映画祭16 「男と女の友情は成立するか?」をテーマに、監督ロブ・ライナー×脚本ノーラ・エフロンが贈る珠玉のラブ・コメディ。大学卒業時に偶然出会ったハリー(演:ビリー・クリスタル)とサリー(演:メグ・ライアン)が、離れたりくっついたりする12年間を描く。3ヶ月足りない?失礼、12年と3ヶ月を描く。 公開当時からヒットしていたし、今更何を言うでもない。劇中でメグ・ライアンがイッてしまったカッツ・デリカテッセンは、公開から40年近く経った現在でも本作の聖地としてニューヨークの観光名所として知られている。なお、2025年のNFLスーパーボウル内のCMにおいて、メグ・ライアンはビリー・クリスタルの前で実に36年ぶりにイッたのは記憶に新しい。 ケーキの横にチョコレートソースを盛り過ぎたので、話をケーキに戻そう。そんなもんで、私としても世間一般と同様に何度も観た作品ではあるが、不思議なことに何年かに一度、本作を無性に観たくなる発作に襲われる。一流シェフのフルコースではないが、味噌汁なき食卓はそれはそれで拷問であり、自分としては機会があるたびにこうしてLOVE注入をしているのである。 何が魅力かと言えば、おそらくビリー・クリスタルとメグ・ライアンの凸凹した感じが最大の魅力かと思う。本作でもたびたび引用される「カサブランカ」(1942)と比較してみよう(ちなみに、本作の主題歌である"It had to be you"は「カサブランカ」序盤でも演奏されている)。ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマン、当時きってのハードボイルド俳優と絶世の美人女優が織りなすラブロマンスは、製作過程はともかく演技としては非常に洗練されている。途中まで未練がましかったボガートも結局最後はカッコいいし、バーグマンは美しく儚い。翻って本作はどうか?ハリーもサリーも共に偏屈で妙に理屈っぽい。そして毎度毎度どうでもいいことで見解の相違が露わになる。周囲からすればマジどうでもいい事柄でさえ、本人達にとっては世界を左右するイデオロギーの衝突となってしまう。しかし嫌いかと言われるとどうやらそうでもなく、むしろ言い争いや見解の相違の中に、自分を曝け出せた安堵さえ窺わせる。そのくせして本人達は終盤まで妙な理屈をこねくり回してそのことに気付かないフリを続けている。「カサブランカ」で諸先輩方が見せた粋からは程遠い不恰好ぶりである。だがそれがいい。 改めて劇場で観ることが叶ってよかった。次はいつ発作が来るだろうね?リバイバルって何の意味があるの?昔の映画は忘れろってこと?それとも忘れた映画を思い出せってこと? いいえ、昔の映画を忘れたことを思い出せってことだよ。そのためにリバイバルはある。