義人と悪党の対決、あるいはアダムはアップルケーキを焼けるのか?
予想以上に面白い作品だった! 見るからにコワモテ「悪党」+「ネオナチ」スキンヘッドの仮釈放囚人アダムと、テキパキ、サバサバと心広く囚人を迎え入れる牧師のイヴァン。こんな人相も行動も態度も悪い囚人が更生するなんてありうるのか…と、先行きを心配… 続きを読む
予想以上に面白い作品だった! 見るからにコワモテ「悪党」+「ネオナチ」スキンヘッドの仮釈放囚人アダムと、テキパキ、サバサバと心広く囚人を迎え入れる牧師のイヴァン。こんな人相も行動も態度も悪い囚人が更生するなんてありうるのか…と、先行きを心配せずにいられない不穏な空気のなかで映画は始まる。 更生施設として囚人たちを受け入れるイヴァンの教会には、既に2人の元囚人がおり、片方はアル中で盗癖のある元テニスプレーヤー、もう片方はすぐに銃で発砲するのが習癖の?元テロリスト。その2人に思わずホッとしてしまうほど、アダムは手強い凶悪な悪党の雰囲気プンプンなのだが、教会に来たとき、彼は今後の目標を訊かれ、教会の庭にあるリンゴの木のリンゴでケーキを作ることだと成り行き任せに答える。 しかし程なく、リンゴはカラスの集団に食い荒らされ、カラスを追い払うと、今度は虫に食われ…。これではアップルケーキなど無理ではないか…。 しかし踏んだり蹴ったりはリンゴだけではなかった。アダムは人づてに、イヴァンが踏んだり蹴ったり続きの苦難の人生を歩んできたことを聞かされる。加えて、イヴァンから借りた聖書は、なぜか必ずヨブ記で開く癖がついている。ヨブ記は、信仰心厚く高潔で地上の幸福にも恵まれたヨブが、苦難に見舞われ続ける「義人の苦難」と呼ばれる話。苦難のかけらも見せず心広く前向きなイヴァンに、アダムは揺さぶりをかけ始める…。 最初から最後まで、これほど先の読めない作品、固唾を飲んで成り行きを見守った作品は久しぶりで、本当に面白い映画だと思いました。 至るところでニヤニヤ、あるいは思わず笑えてしまうのだけれど、だとしても、この作品の含蓄の深さに変わりはない。個人的には今回のマッツ映画祭で1番のお気に入りで、リピート必至。 タイトルのアダムズ・アップルは、アダムの目標であるアップルケーキを作るための教会の庭に実るリンゴのことであると同時に、通常は「喉仏」のことを指すこの言葉の、その意味の由来である喉元に引っかかったリンゴのように、イヴァンのありようがアダムの(心の)喉元に引っかかり続けるさまをも指しているように思われる。