久しぶりのクライヴ・オーウェンが(出番多くないものの)素晴らしい!登場した瞬間、あの眼差し、あの声で、一気に全てを納得させてくれる。(ヴァイオリンの演奏ぶりがイマイチなのは大目に見ましょう。彼は演奏家ではありませんから。わたしは眼を閉じ、胸を締め付けられるその調べと音色に集中します。涙がこぼれます。)
防空壕での少年と青年の競演をはじめ、ヴァイオリンの音色を何度も聴けるのも嬉しい。余談ながら、ヴァイオリンを教えている友人によると、ヴァイオリニストにはユダヤ系がとても多いのだそう。(音色が民族性とマッチするからなのだろうか、流浪を宿命づけられているからなのだろうか…。)
ホロコーストを直接ではなく、こういう視点から描いたものは少ない気がする。ラジオで聴く拡大する戦禍と故国へのナチスの侵攻。故郷に残された家族の安否は不明。隠し持った家族の写真を胸に、少年はひとり密かに涙を流す。どれほどの不安と恐怖と悲しみに苛まれているのかは、傲岸不遜に見える彼の虚勢と強がりから窺うことしかできない。
愛する家族の安否がわからないという苦しみ。そしてそれに終止符が打たれるとき、彼は再び神を見いだす(神が自分を見つけた、と彼は言う)。もはや人間同士の繋がりや恩義や約束事、自らの天才ヴァイオリニストとしての栄誉などどうでもよくなってしまうくらいの、絶望的な深い悲しみのなかで…。
原題となっているthe song of names、これが素晴らしい。全て歌われると5日もかかるという名前の歌。so many names…。この歌を聴くためだけでも、この作品を見る価値があると思う。この歌と重ね合わせられるように最後に奏でられる白鳥の歌とともに。