一度始まった戦争に終わりは無い
ギクシャクした親子のドタバタ珍道中の先に見えてくる、深い家族の絆と愛。 ラストは涙が止まりませんでした。 戦争の傷は次世代にも連鎖する。 一度始まった戦争に終わりは無い。 戦場にいた兵士のPTSDについて知る機会も増え、とくに去年は戦後8… 続きを読む
ギクシャクした親子のドタバタ珍道中の先に見えてくる、深い家族の絆と愛。 ラストは涙が止まりませんでした。 戦争の傷は次世代にも連鎖する。 一度始まった戦争に終わりは無い。 戦場にいた兵士のPTSDについて知る機会も増え、とくに去年は戦後80年の節目で、日本兵のPTSDについても多く語られる機会があったように思います。 その中に「今から思うと酔っ払って暴力を振う父親はPTSDだったのかもしれない。」という証言を聞いてショックでした。 愛したいのに愛せない。 愛された記憶が無いから愛せない。 「戦争さえ無ければ」と何度も何度も強く思う映画でした。 最初は大人になった娘との距離が掴めないマイペースな父親かと思いましたが、列車に乗ろうとするシーンで明らかフラッシュバックが起きていることに気づかされます。(スティーブン・フライの演技力!!列車の車輪がきしむ音!) おそらくルーシーの母親はPTSDのフラッシュバックが度々起きていて、明らかにルーシーにも影響を及ぼしていた。 そんな母親の死をきっかけに、ルーシーは母親を苦しめていた過去を知る旅に出たのだと思うのですが 実は明るく見えていた父親も現在進行形で苦しんでいたことを知ることになり… これまで2人がそれぞれ別々に抱えて苦しんでいた問題の原因が実は同じところに端を発していたことを知る。 この親子の関係を通して、自分の抱えている問題は決して自分だけのものではなく、自分が問題を抱えていることによって周囲にも影響を与えているのだと知りました。 (イラついたり強引な行動に出たり、上手く愛せなかったり) なので、勇気を持って自分の問題と向き合うことは、周りの人をも救うことになる。 もちろんそれには時間がかかりますが、母親の存在と死を通して、この親子は前に進み理解し合えることが出来たと感じました。 そして何より、封印されていた家族たちの美しい記憶も蘇ることが出来た。 亡くなっていった人々にとっては、忘れ去られることの方が辛いに違いない。 母親の実家の窓を見上げるシーンも大好きです。 まるでロミオとジュリエットのバルコニーのような、ロマンティックな若い2人の思い出が素敵で、心なしか父親が若々しい青年のように見えました。 あと、ストーカー的な人生の先輩お姉様方のセリフはいちいち良いです。 後悔することもあっただろうけど「自分で選択した」がなんとも力強い! ルーシーに核心をつくセリフは、観客側が2人の親子関係を見直すターニングポイントとなるセリフだったと思います。 笑えるシーンもたくさんあって、決して重いだけの映画ではないのですが、アウシュビッツのアウシュビッツの埋もれたレールが強烈で、あたかもその場に巻き込まれているような臨場感がありました。 戦争体験者は加害者であっても被害者であってもPTSDを抱えている。 でも、そのことが子供にまで影響を与えていることを知りショックでした。 戦争は終わらない。心の傷として代々引き継がれていく。愛されることを知らない子供は愛し方がわからない。 もしかすると自傷行為やネグレクトの原因は、命が軽んじられた時代に遡り、負のループを招いているのかもしれない。 戦争の影響が世代を超えて地続きに繋がっていく恐ろしさ。 一度始まった戦争に終戦は無いのだと感じました。