私はまだココにいる(という映画の名前に)
starstarstarstarstar - 1年前
突如に国家権力に囚われてしまった夫。5人の子ども達とともに、妻は「悲しい顔をして」欲しい雑誌記者のカメラに向かって笑顔でまなざしを向ける。映画という装置の役割を感じるこの映画。日本人の俳優なら、この妻の役を誰かなら演じ切れたであろうか。
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突如に国家権力に囚われてしまった夫。5人の子ども達とともに、妻は「悲しい顔をして」欲しい雑誌記者のカメラに向かって笑顔でまなざしを向ける。映画という装置の役割を感じるこの映画。日本人の俳優なら、この妻の役を誰かなら演じ切れたであろうか。
主演は、フェルナンダ・トーレス、幸福だった家族が事件に巻き込まれる40代から、65歳、85歳を演じ切る。単に悲しい顔ではなく、怨みがましい顔でもない。
愛する夫を奪われながらも、子ども達に過剰に心配させまいとする。気丈な母の静かで力のある表情。もし映画を学ぶ者ならば、この表情を見る為だけでもこの映画の入場券を買う価値がある。
トランプに内政干渉的な異常な50%関税を、課せられたブラジルであるが、近代の民主化には、隣国のアルゼンチン同様たくさんの国民が国家権力の犠牲者となっている。きな臭い直近世情の中。ただ自由を与えられただけでは無い国家の歴史に学ぶ点は多い。
笑って写真を
starstarstarstarstar - 1年前
※本文にネタバレがあります ネタバレを読む
エンドロールにも多くの写真が流れる。
家族の記録として必ず笑顔で写真をとる。
父が亡くなったと知った時でさえ笑顔で。
ブラジルで過去に起こった事件ではあるが、現代にもつながる部分がある。世界で広く観られているのも右傾化する社会背景があるように思う。
本編はルーベンス・ヴァイパの妻で子どもたちの母であるエウニセの視点で終始描かれる。マスコミの騒ぎや軍部の拷問なども描かれているシーンは少なく、淡々と時間が流れていくよう。
仲睦まじい夫婦と一男四女、それに家政婦と拾ってきた犬一匹を合わせた大家族。海岸沿いの大きな家で理想的な毎日を過ごす。家族でビーチにいったり、子どもたちは友人とビーチバレーやサッカーをして、たまにアイスをみんなで食べに行く。
そんな折、夫の友人がロンドンへ移り住む。左派の議員だった夫は仲間の心配を気にし過ぎだと思うが、妻の助言もあり、長女をロンドンへと渡らせる。
政治情勢は不安定でも、新しい家を建てる計画を家族でたて、これからもリオで過ごしていく予定だった家族のもとに突然男たちがやってくる。妻の視点で見ている観客の我々も男たちが政府の人間なのか、反体制派の人間なのか最初はわからない。ただ、徐々に彼らが軍の関係者で夫は何らかの容疑で逮捕されたとわかる。
夫の様子も帰りもわからない中、妻と次女も連行され不当な扱いを受ける。何度も反体制派と思われる人々の写真を見せられ、夫も子どもたちの様子もわからない留置所の中で5日が経過する。ようやく自宅へと帰ることができ、子どもたちの顔を見てシャワーを浴びて安堵する気持ちになりつつも、依然として夫の不在が重くのしかかる。疲れを癒すように眠りに落ちる。
目を覚ますと夫の逮捕が報じられており、司法的続きに沿って居場所の特定や釈放を試みるが出来ることは少なく、逮捕された証拠を友人に求めるが誰もが口をつむぐ。常に監視にされされる中、犬が轢かれてしまう。目の前の状況には目もくれずただ監視してるだけの男たちに苛立ちをぶつけるが、状況は何も変わらない。
ついに夫の訃報を聞く。夫の遺体がどこにあるかもわからず、死を知ったことすら隠して釈放を求めるポーズをとり、涙を流す暇もなく現実に向き合わなければならない。新たな家のための土地を売り、お金を作って家政婦に暇をだし、祖父母らのいるサンパウロへと引っ越すことを決める。
家族の思い出が詰まった家を引き払い、リオを後にする。
時が経ち、ついに夫の死亡証明書を手にして喜ぶ姿は複雑な想いになる。子どもたちも自立しながら1人また1人と巣立っていく。時間が経っても家の伝統は変わらず記念に笑って写真をとる。
一緒に抜けた歯を海岸に埋めて、本当はいつか大人になった時に返してあげようと思ってたはずの父の姿はそこにない。
映画の中でもあっという間に時間が経つが、その長い年月の中で戦いをやめなかったからこそ、夫の死亡証明書を手にできた。真実究明のための動きが彼女の働きによって起こったのだとわかる。
派手な銃撃戦や激情的な会話などはほとんどなく、静かに事が起こり、静かに次へと進んでいく。嘆き悲しみ、怒り狂うこともあっただろうが、そこではなく家族が思い出と共に変化していくことに重点が置かれている。
小さい頃の写真を見て、ホームムービーを見て、感傷に浸るシーンはグッとくるものがあった。私はまだ人の親ではないが、子を持つ人、特に育て上げた人なら誰もがうっとりとするシーンだったと思う。
長い老後を過ごしてく中でも心に残るのは、連れ添った夫との思い出や子どもたちと過ごしたあの日々なんだと思う。
戦争が起こっていなくても軍事独裁政権や強権的な政治体制になることは反体制的な思想や言動を取り締まる動きに繋がりやすく、世界も、そして日本もまさに今そういった脅威が忍び寄っている。
当時の政権や軍部がやったことであって個々人に責任はないのかもしれない。留置所で担当していた軍人も本意ではなかったと言うが、だからといって行為が正当化されるわけではない。
責任の所在を有耶無耶にし、人々の人生を簡単に壊してしまう状態になる前に危機感を持っておかなければ。
こんな時代だからこそ、日本が反戦映画を作って欲しい。社会的な不合理や理不尽を良しとしないメッセージを映画で映してほしいと思った。
強くありたい
starstarstarstarstar - 1年前
正義は勝つという言葉が好きです。が、そうはいかない現実があった時に、自分や人々は、どのくらい主人公のように強くいられるのだろうと思いました。
今垣間見られる個人主義や排他主義に、自分や人々が流されていくのは嫌だなぁと感じています。。
誰もが地球人として優しくいられるように、まずは自分が、人に優しくありたいしそのために強くありたいと思いました。家族をより愛おしく思いました。
観てよかったです。
なぜ賞をもらう?
starstarstarstarstar - 1年前
家族の物語としては感じるもの多い。しかしエンタメとしては面白味に欠ける。ブラジルの軍事政権のことをなぜ。教え子にブラジルルーツの子がいるからシンパシーは感じるけど。
独裁国家に生きる、ということ
starstarstarstarstar - 1年前
なせ今頃70年代の軍事独裁の記憶を辿るのが?
本来古臭い話が古くならない現実が今の世界にある。
戦争がなけれはいい論者が蔓延る現在の世界に、じゃぁこんな世界に貴方は生きられるか?を突きつけてくる。