片桐はいり インタビュー|映画は映画館で“浴びる”のが楽しい、ミニシアターの苦境…映画の力を信じ復興願う──

片桐はいり
写真左から)片桐はいり、本企画・発案の常俊清香

新型コロナウイルス感染症の全国的な拡大、政府による緊急事態宣言に伴い、休館せざるをえない映画館・ミニシアターが数多く存在する。1ヶ月以上続く休館状態により、全国のミニシアターは閉館の危機にさらされている。ある劇場の支配人は「休館1ヶ月でもかなり苦しい」「休館の状態が3ヶ月続けば必ず閉館に追い込まれる」と切迫した状況下であることを話している。

映画ランドNEWSでは、俳優として活躍する傍ら、ボランティアの“もぎり嬢”としても名を馳せる片桐はいりさんに、ミニシアターの魅力や支援プロジェクト「SAVE the CINEMA」「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」について、また「映画を映画館で観る」楽しさなど、お話を伺った。インタビューは電話にて2020年5月5日に実施した。(取材・文:小宮駿貴/企画:常俊清香)

──新型コロナウイルス感染症の影響により、休館せざるをえない映画館・ミニシアターが数多く存在します。片桐さんの地元・大森(東京)にあるキネカ大森をはじめ、ミニシアターが置かれている現状について今の率直な心境を伺えますか?

片桐はいり
片桐はいり

片桐:本当に大変なことになりました。「SAVE the CINEMA」や「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」について毎日チェックをしていて、あっという間に支援金が集まって…。3億円は達成するのではないでしょうか。映画館の規模によって影響は異なると思います。家族で運営されていたり、お1人でやられている映画館もたくさん見てきましたから。キネカ大森も含め、それぞれの映画館でそれぞれの問題を抱えていると思います。このような時期に、家で映画を視聴することに慣れた方々が、映画館に戻ってくるのだろうか。今後、人の咳を気にしながら映画や演劇を楽しめるのだろうか。悲観的なことが大きく報道されがちですが、映画館にとってはそればかりではないだろうと思いたいです。いま改めて映画館で映画を観たいと思う、オンライン配信サービスで映画に目覚めた人が「大きな画面で映画を観たい」と思う可能性…うまく言葉がまとまりませんが、映画や映画館の力、それを応援する方々の力を私は信じます。楽観的と言われるかもしれませんが、楽観は意志なんです。

──「SAVE the CINEMA」などを通して、実際に数字として“応援の力”はどんどん広がっていっていると思います。このような支援プロジェクトについてはどう思われますか?

片桐:どの立場になって言ったらいいかわかりませんが、ありがたいことです。劇場のスタッフのような気持ちもあるので。「SAVE the CINEMA」は国からの支援・公的援助を求めるプロジェクトですよね。映画も国の文化として守られるべきだと思います。新型コロナウイルス感染症の状況であろうとなかろうと、ミニシアターは“危機に瀕している”わけですから。私のように、常に小さな劇場がどうなっているか気になる人間にとって、不謹慎かもしれませんがこのような情勢の中でミニシアターに注目が集まっていることはありがたいとも感じます。さまざまな支援プロジェクトを通して、劇場を利用される方々に「本当になくなって欲しくない」と思っていただきたいですし、それぞれの劇場の“色”が個々の企画や支援を通して現れていることにも目を向けて興味を持っていただけたらと思います。

SAVE the CINEMA:https://bit.ly/2yBA6gZ

ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金:https://motion-gallery.net/projects/minitheateraid

──そうですね。大きな支援プロジェクトもそうですが、ミニシアター同士が手を取り合って企画し“支援の輪”を広げていることにも注目していただきたいですね。

片桐:もちろん、映画やエンタメに限らず大変な事態になっている業界は多くありますが、私は悪いことばかりではないと思っています。それぞれの劇場が手を取り合っていること、「映画を上映したい」「映画を観たい」という切実な気持ちが表れているのは素晴らしいことだと思います。

──邦画・洋画、インディーズ映画など映画文化の多様性を支えていくにはミニシアターの存在が必要不可欠だと思います。近年では『カメラを止めるな!』(2017)が話題になりましたよね。

片桐:小さな劇場から始まって大きな映画館へと拡大していく、そういう夢も面白いですよね。ですが、そういった機会がオンライン配信サービスの普及によって、作り手はみんなそちらへ行ってしまうかもしれない。オンライン配信サービスが主流になって、それに熟達した人が面白い作品を作るかもしれない。でも、「いや!そうじゃない!」と映画館で映画を上映するために作品を作る人が今後どれだけ多く残るのか。祈るばかりです。

──新作映画をオンライン配信サービスで届ける施策も増えてきていますよね。

片桐:たとえ配信が増えたとしても、映画館で観るものを作る人がいなくなるとは、私はどうしても思えないんです。オンライン配信と映画とはそもそも違うものだ、と思う人たちが絶対に出てくると信じています。

──そうですね。片桐さんが思う“映画館の楽しさ”とは。

片桐:“浴びる”ということですね。映画を「鑑賞する」という感覚はないです。巨大な画面で一緒に観ている方々の笑い声、音に関しても聞いているというより“浴びている”ような。観ている方々の“波動”もそうです。席が満員であれば満員なりの、ガラガラだったらガラガラなりの“波動”、そういうものが渦巻いた暗闇での時間をみんなで共有するのが映画だと思うんです。だから今は家で映画を観ていないですね。あまり観る必要を感じていないというか、観たいという意欲があまり起こらないです。映画館に行けないので。

──“浴びる”という表現がすごく好きで、映画館で映画を観ることの素晴らしさが伝わってくる言葉だと思います。“もぎり”をされていて、来場者とコミュニケーションをとることはありますか?

片桐:もちろんお話をすることもあります。映画を観終わって文句を言っているお客さんと、「そんなことないですよ!これは面白いですよ!」と議論になることもありますよ(笑)。それが楽しくて“もぎり”をしています。3月末にもぎってた時、「握手してください」と言っていただいた時は、(濃厚接触を避けるために)「握手よりも!」とグータッチしたり…。早くマスク越しではなく、お顔を見てお話したいですね。

──収束して映画館が復旧した際に、また“もぎり”をやっていただきたいです。

片桐:もちろん、今はやりたいと思います。ですが、人と接触したりすることがサービスにならない可能性がありますよね。人と接触することがない無人のサービスが最善と思われる社会になっていくかもしれませんから。収束してみないとわからないことばかりです。その時、自分がやりたいと思うのかどうなのかも、その場になってみないとわからないですしね。

──収束後の社会情勢もまたこれまでとは一変している可能性もありますよね。最後に、全国の劇場支配人やミニシアターを愛してやまない方々へ向けメッセージをお願いします。

片桐:「一緒に頑張りましょう!」と言うのは恐れ多いですが、私にできることがあればお手伝いしたい。私は、映画館で映画を観たい人、映画館で映画を上映したい人は決していなくならないと信じています。映画の力を信じています。

──ありがとうございました。

SAVE the CINEMA:https://bit.ly/2yBA6gZ

ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金:https://motion-gallery.net/projects/minitheateraid

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