「SUPPORT EIGA PEOPLE ON THE LAND.〜映画に関わるすべての人々をサポートする〜」をビジョンとして掲げる映画ランド。そんな弊社が、映画界で活躍する監督・スタッフ・役者にお話を伺う。
野心がない・競争心がない・協調性がない、と揶揄される「ゆとり世代」。そんなゆとり世代のアラサー男子3人を描いた2016年放送のドラマ『ゆとりですがなにか』の映画版『ゆとりですがなにか インターナショナル』が大ヒット上映中。ドラマ版で教育実習生として山路先生を振り回し、強烈な印象を残した佐倉悦子を演じた吉岡里帆に、今作について、そしてドラマ版出演からの7年間についてお話を伺った。
吉岡里帆
YOSHIOKA RIHO
1993年生まれ、京都府出身。
NHK連続テレビ小説『あさが来た』(15)で注目を集める。主な出演作にドラマ『カルテット』(17)、『しずかちゃんとパパ』(22)、Disney+『ガンニバル』(22)、映画『泣く子はいねぇが』(20)、『島守の塔』(22)などに出演。映画『ハケンアニメ!』(22)で第46回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。今年は『アイスクリームフィーバー』、『Gメン』、連続ドラマW『落日』などに出演。現在、カンテレ・フジテレビ系ドラマ『時をかけるな、恋人たち』が放送中。
時間の進み方がリンクしている感じ
――ドラマ版は2016年で、吉岡さんも注目され始めた頃の作品ですが、7年ぶりに悦子役を演じられていかがでしたか?
吉岡:宮藤(官九郎)さんが悦子を「ゆとりモンスター」から、ちゃんとした大人に成長させてくださっていたので、とても嬉しかったです。ここ数年で、別の作品で柳楽さんや、太賀くんとも夫婦役をしていたこともあって、かなり月日が経ったのを身をもって感じました。実際の劇中の時間軸の進み方と、リアルな現実世界での進み方がリンクしている感じがして、撮影をしていてとても楽しかったです。エモかった(笑)。
――悦子という人物を吉岡さんはどんなふうにとらえていますか?
吉岡:ドラマ版とスペシャル版の時は、小悪魔やあざといを通り越して、怖い人という印象が私はあって(笑)。若さゆえの怖さみたいな狂気を秘めていて、これぞ「ゆとりモンスター」という感じでした。エキセントリックな言動でみんなを困らせて、特に山路先生(松坂桃李)を困らせて、振り回して。振り返ると、当時あの若さだったからできた役だったなと思います。
――悦子のエキセントリックな印象は劇場版では変わりましたか?
吉岡:精神年齢も見た目も大人になり、ちょっと丸くなったかなと思います。マイペースぶりは変わってなくて、自分で自分の未来を切り開いていく力強さはちゃんと残っていました。
――悦子とご自身が似ていると思うところはありますか?
吉岡:しいて挙げるなら打たれ強さですかね。ドラマ版の時も悦子はいろんな人に怒られたり、問題を起こして、パニックというか危機的状況になるんですが、上手く強さで切り抜けていくキャラクター。そこは私も共感できるかもしれないです。
翻弄される2人
――ドラマの悦子先生は山路先生のことを本当はどう思っていたのでしょうか?
吉岡:どうなんですかね?ドラマ版の時は恋愛感情というよりも、勝手に振り回される山路先生と勝手に振り回しちゃっている悦子先生、という構図が面白かったですよね。教育実習として入ってきて、子どもたちと初めて接していっぱいいっぱいな悦子と、それを放っとけない山路先生みたいな。
――ドラマ版で山路先生に「いい先生じゃなくていいんで、いい人間になってください」と悦子先生は言われていましたが、彼女の今の人生にこの言葉は影響があったと感じますか?
吉岡:とてもあったと思います。劇場版では悦子をちゃんとした大人に成長させて脚本を書いてもらっているのですが、「自分に出来ることは何なんだろう」と考えるきっかけになっているのが、あの教育実習期間な気がしていて。学校の先生になっていないところもミソだなと。悦子は「自分みたいなタイプの人間は、子どもたちに何かを教育することが向いてない」とか、そういう風に悩むこともあったんだろうなと予想できます。
本当に教師を志している意識の高い人たちと出会って、山路先生みたいな人にしっかり真正面から叱られて、悦子も壁にぶち当たったのかなと。劇場版の脚本を見て、その空白の時間を感じました。
岡田さんの二日酔いのシーン
――吉岡さんがお気に入りのシーンやセリフなどはありますか?
吉岡:自分が出ていたシーンだと岡田さんの二日酔いのシーンです(笑)。酔っ払って二日酔いの岡田さんの芝居が面白すぎてズルいですよね(笑)。ちょっと抜けてる感じが絶妙で、岡田さんの魅力が全開でした。
そこにブタと外国人の方がたくさんいるという衝撃のシーンなので、脚本を読んでいてもカオスで、撮影していてもめっちゃ笑いました。
――登場するブタは演技はしてくれましたか?
吉岡:けっこう自由なブタちゃんでした(笑)。でもすごく岡田さんに懐いていて、抱っこしている間もじっとしていて。岡田さんとブタが相性良かったのを私は現場で目撃しました(笑)。
7年前が戻ってくる
――『ゆとり』の3人のみなさんとの久しぶりの共演はいかがでしたか?
吉岡:7年前の気持ちに戻される感じがあって、すごく緊張しました。もちろん先輩方と共演するというだけで普段も緊張するんですが、ちょっと質が違うというか。当時の右も左も分からなかった私が、また戻ってきちゃう感じで。ゆとりの現場は掛け合いのテンポがとても早いんですよ。テンポを守りつつ、独特な間も守りつつお芝居をする、そこが難しかったです。
あとは3人(岡田将生・松坂桃李・柳楽優弥)が並んだ時に、『ゆとりですがなにか』なんだ、というのをすごく感じました。いち視聴者としても、本当にエモーショナルな瞬間が詰まってるというか、3人の空気がすぐあの時の時間に戻るんだなと感動しました。
――7年間たくさんの経験をされて多少は余裕はできたのでは?
吉岡:全然なかったです。(安藤)サクラさんに最後ご挨拶するときに「緊張しました」というのをお伝えしたら、「大丈夫、みんなも緊張してたみたいだよ」って言ってくださって、当時から相変わらず優しいな、包容力があるな、大好きだなと感じました。
山路先生にしか見えない
――撮影中のエピソードや共演者の方との思い出があれば教えてください
吉岡:ドラマ版の時は岡田さんとはあんまり絡みがなくて。山路先生と子どもたちとお芝居をするシーンがほとんどだったので、今回、岡田さんとの2人のシーンもあってとても新鮮でした。ドラマ撮影当時は全然おしゃべりしてなかったので、初めましてぐらいの感覚でお話しして、すごく気さくに話してくださって嬉しかったです。
あとは山路先生。松坂さんが出られている映画はこの7年間よく観ていたんですけど、ゆとりの現場でお会いすると本当に山路先生にしか見えなくて。
――見た目がですか?
吉岡:話し方や姿勢、顔表情とかですかね?劇場版では山路先生がちょっと毒気が強くなっているなと思いました。7年の間に自我が強くなっているというか(笑)。自分の個性を受け入れて、成長というよりはバージョンアップ?7年前よりもさらに面白い山路先生と対面しました。
素直に頑張ったなと思います
――吉岡さんにとって7年という月日は目まぐるしかったと思いますが、振り返ってみていかがですか?
吉岡:7年は短いようで長いし、長いようで短いしなんとも言いがたいんですけれど。本当に沢山仕事をした7年だなと思います。初めて民放の連続ドラマにレギュラーで出させていただいたのが『ゆとり』だったので、自分にとってもとても思い出深くて。色々悩んだりもしていた時期だったので、ありがたいことにまだこうやって続けさせてもらっていて、頑張ってきてよかったなと思いますし、劇場版になる時に呼んでもらえたということがとても嬉しかったです。素直に、頑張ったなと思いますね。
――当時はどのようなことに悩まれていたのでしょうか?
吉岡:当時は失敗も多かったり、怒られる日もありましたし。至っていないというか、力がない不甲斐なさみたいなのとか、ただただシンプルにそういうところです。
――経験を重ねていき、免疫がついた?
吉岡:免疫は本当についたと思います。強くなったし、いろんな難しい事に直面してもちょっとやそっとじゃブレないというか、「絶対なんとかなる」と思えるようになったというか。
「上手に歳を重ねていくのは面白い」と思ってもらえるような役
――年齢を重ねていく中で、今までとはまた違う役柄も増えてきていると思いますが、今後挑戦してみたい役はありますか?
吉岡:役の変化としては、若いときは主演の人に向けて刺激になるような、物語が進んでいく、その瞬間瞬間に主人公が心動くきっかけを作る、みたいな役割が多かった印象があって。
最近、自分が主演をさせてもらえるようになると、ほとんどが受け身なんですよね。出会っていくキャラクターをどういう風に受け止めていくか、どういうふうに反応していくかがとても大事なシチュエーションが増えて。だから周りを見て、人を見て、自分が大変だった時にどうされたら嬉しかったか、どうされたら心がちょっと落ち着いたかとか。そういうことを考えるようになりました。自分のことでいっぱいいっぱいだったところから、もっと大きく広く見れるようになってきた実感があるので、そこは役にも反映されている気がしています。
今後は「上手に歳を重ねていくのは面白いな」と思ってもらえるような役をしていきたいので、若くて元気で、というのを経て、いろんな経験をしているからこその哀愁や、優しさ、強さみたいなのを、若い人たちに届けられるようなパワフルな役をしていきたいです。
――最後に記事を読んでいる方にメッセージをお願いします
吉岡:7年の時を超えて、『ゆとりですがなにか』が映画になりました。自分で想像していたよりも劇場で笑ってしまって、最高な一作だなと思っています。ドラマ版を観てくれていた人にも、そして令和を今まさに戦いながら生き抜いている方たちにも、たくさんのエールと笑いを届けられる作品なので、ぜひ劇場でご覧ください。
(取材・写真:曽根真弘/ヘアメイク:中野明美/スタイリスト:黒崎彩)
『ゆとりですがなにか インターナショナル』は全国東宝系にて大ヒット上映中
脚本:宮藤官九郎
監督:水田伸生
出演:岡田将生/松坂桃李/柳楽優弥/安藤サクラ/仲野太賀/吉岡里帆/島崎遥香/手塚とおる/髙橋洋/青木さやか/佐津川愛美/矢本悠馬/加藤諒/少路勇介/長村航希/小松和重 /加藤清史郎/新谷ゆづみ/林家たま平/厚切りジェイソン/徳井優/木南晴夏/上白石萌歌/吉原光夫/でんでん/中田喜子/吉田鋼太郎 ほか
配給:東宝
©2023「ゆとりですがなにか」製作委員会
公式サイト:https://yutori-movie.jp/
公式X(旧Twitter):@yutori_ntv