『チャイルド44 森に消えた子供たち』ロバート・ハリス ✕ 藤原ヒロシ トークショー

6月24日(水)、2009年度版「このミステリーがすごい!」海外編で第一位となったトム・ロブ・スミス原作の同名小説を名匠リドリー・スコット製作で映画化した『チャイルド44 森に消えた子供たち』のトークショーイベントが渋谷・ユーロライブにて行われた。

『チャイルド44 森に消えた子供たち』は、犯罪なき理想国家を掲げるスターリン体制下のソ連で起こった連続子ども殺人事件を描いたミステリー。犯人を追う主人公が真相に迫っていくうちに国家の闇に気づくといったスリリングなストーリーで、ロシアでは映画も本も発禁となった問題作である。

イベントでは、J-WAVEのナビゲーターのロバート・ハリス氏と音楽プロデューサーの藤原ヒロシ氏が登壇し、本作の魅力を語った。

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──映画を観て、実際どのような感想を持ちましたか?

ハリス氏:当時のスターリン政権下って恐怖政治だよね。何が怖いかって言うと、恐怖政権下にあるソビエト国家そのものがすごく怖く描かれていて、そこがすごくサスペンスになっているなと思ったね。

藤原氏:逆に僕は「え!?」と思ったんですよ。猟奇殺人の映画化と思って来たので。いつまでたっても殺人事件が起きないな、と思って観てしまったんだよね。でもロシアのやばい世界というか、ずっと暗い世界が描かれていて、観た後にずしんときて。帰り道に「これすごく良い映画を観たんじゃないかな」と思いましたね。

ハリス氏:そこに重みがありましたよね。1967年に実際にシベリア鉄道で旅をしたことがあって、まだソビエト時代ですよね。でね、シベリアの駅に夜汽車が止まるんですよ。すると、兵隊が5メートル間隔でこっち見て立っていて、すごく怖いの。たまたまその時、僕は読む本が1冊しかなくて、ポリス・パステルナークの「ドクトル・ジバゴ」を持って読んでいたんですよ。そしたらKGB(ソ連の秘密警察機関兼対外諜報機関)の職員が来て、没収されちゃったんですよ、「この本は昔から発禁になっている」と。その代わりに「レーニン全集」全3巻みたいの渡されて、これが全然面白くないの(笑)その後3日間それで過ごしたんだよ(笑)

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藤原:僕も5年位前にロシアに行ったんですけども、セントピーターズバーグで夜、たまたま友達が立ちションしてたら警察に捕まったんですよ。

ハリス:いや、それ日本でも最近は捕まるんじゃないの(笑)

藤原:あ、そうなんですか(笑)でも、セント・ピーターズバーグで警察に捕まるってちょっと怖い感じがしますよね。

ハリス:怖いよね。僕の場合、ゴーリキー・パークに行くと、怖い顔した少年たちが群がってきてタバコとかジーンズをくれって言うんですよ。で、女の人がそのへんで重労働しているっていう縮図がすぐ見て取れるので、かなりこの社会は怖いなっていう印象がありましたね。

藤原:今でも田舎の方に行くと、ちょっと怖い雰囲気ありますよ。

ハリス:プーチンの政権、民主主義って言われているけど違いますよ。だってこの本やこの映画だって発禁されていて、まだ映画はそのままなんだよね。

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──社会的な要素が色濃く出てると、問題視されてしまう国なんですかね。

ハリス:そうですね。あと、この映画で僕が見どころだと思ったのは夫婦の関係だね。変わった関係で一緒になっちゃって、どんどん女性のほうが強くなっていくっていう。それもすごい面白い。

藤原:見終わった後の感想が皆さん違うと思うんですよね。純愛映画を観たっていう感想もあるだろうし、重いサスペンスを観たとか、良いミステリーを観たとかいろいろな感想があって。観た後に一緒に語り合える映画だと思いますね。

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──最後に映画を観た立場から、注目すべきところを教えていただけますか?

藤原:やっぱり体制との闘いですかね。政治との闘いに懸けた男というか夫婦というか人間らしいドラマが良かったです。

ハリス:この夫婦がある意味心の旅と、それからモスクワからシベリアへの身体的な旅をするんですね。そういった旅の物語として観るのも面白いと思います。

<ゲスト紹介>
ロバート・ハリス氏:1948年生まれ。高校時代から国内、海外をヒッチハイクで旅する。上智大学卒業後、東南アジアを放浪。バリ島で1年 を過ごしたのちオーストラリアに渡り、1988年まで16年間滞在。シドニーで書店兼画廊「エグザイルス」を経営する。また、映画・TVなどの制作スタッフとしても活躍し、帰国後、1992年よりJ‐WAVEのナビゲーターに。現在、作家としても活躍。また「UEFAチャンピオンズリーグハイライト(NTV系)」の英訳/英語ナレーターを務めるなどTV番組でも活躍する。最新刊に「世界を50年間も放浪し続け学んだCOOLで自由な人生哲学」(発行元:NORTH VILLAGE)がある。

藤原ヒロシ氏:1964年生まれ。音楽プロデューサー、アーティスト、ファッション・デザイナーと様々なジャンルで活躍。裏原宿ストリートのカリスマとしても知られる。日本におけるDJの先駆者として様々なクラブでDJをつとめた。高木完とのヒップホップユニット、タイニー・パンクスで活躍、日本のヒップホップの黎明期を支える。音楽プロデューサーとしても、小泉今日子やUA、藤井フミヤなどといったアーティストの楽曲提供。現在はシンガー・ソングライターとしても活動中。またデザイン集団 Fragment Design(フラグメントデザイン)としてナイキ、リーバイス、ステューシーなど様々なファッションブランドとのコラボレーションを展開。ナビゲーターも勤めるJWAVE「SOUND POOL」もOA中。


『チャイルド44 森に消えた子供たち』7月3日(金)、TOHOシネマズ みゆき座他 全国順次ロードショー

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1953年、スターリン政権下のソ連で9〜14歳の子どもたちの変死体が次々と発見される。しかし、犯罪なき理想国家を掲げる政権下の中、これらはすべて事故として処理されてしまう。秘密警察の捜査官レオ(トム・ハーディ)は、親友の息子の死をきっかけに、事件解明に乗り出すが、捜査が進むにつれ、元同僚の秘密警察に追われ、さらに妻ライーサ(ノオミ・ラパス)にも不当な容疑がかけられてしまう……。

公式サイト:http://child44.gaga.ne.jp/

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