映画『海街diary』の大ヒットを記念して、6月27日(土)、四姉妹の三女・千佳役を務めた夏帆と是枝裕和監督によるティーチインイベントが新宿バルト9にて行われた。
『海街diary』は、吉田秋生の同名漫画を『そして父になる』の是枝裕和監督が映画化した、鎌倉に住む3姉妹と腹違いの妹が織りなすヒューマンドラマ。北米配給ほか、すでに101カ国での配給が決定している話題作。ティーチインイベントは初めての経験という夏帆だったが、満席の会場から次々と質問が挙がるにつれリラックスした様子を見せ、観客との交流を楽しんだ。
──劇中で「あれ」という言葉がたくさん出てきたと思うのですが、意図的に入れたものなのでしょうか?
是枝監督 意図的ですね。脚本を書いているときに固有名詞は使わないようにしていました。目に見えるものって、例えば“ペットボトル”だったら普段「あれ」とかいうじゃないですか。あとは、役者さんたちにセリフを言ってもらって、そこから固有名詞を削ったりもしていました。
夏帆 そうですね。現場でも日常の話し言葉に変えてくださっていた気がしますね。
──劇中に出てくる家は実際の家ですか?
是枝監督 北鎌倉にある実際に人が住まわれている家です。最初は表だけ撮影させてくださいと言ってお願いして、玄関を見たら「玄関もいいですね〜」と(笑)さらに、あの縁側を見てしまったら撮らないわけにはいかないだろうと思ってしまって……。家主の方には本当にお世話になりました。幸が家の柱にすずの身長を書き込むシーンがあるんですが、あれも実際に書かせていただきました。一発勝負だったからドキドキしたけど、いいシーンになりましたね。家主の方も記念になると快く承諾してくださって本当に感謝しています。原作を読んだときに、この作品は家が主役とも言えると思ったので、素敵なお家が見つかって本当によかったです。
夏帆 セットだったら全然違う映画になってしまったでしょうね。
──四姉妹が本当に美しかったです。女性を美しく撮るコツなどはあるのでしょうか? また、映画の中で本当の姉妹のように見えましたが、現場での雰囲気はどうだったのか教えていただきたいです。
是枝監督 単純にそれぞれのキャラクターを掴んで自然に見せるために、馴染ませつつどう立たせるかということを意識しました。汚しながら綺麗に撮るという感じですね。
夏帆 現場は本当に楽しかったです! 自分でも不思議なくらい本当にあの三人が好きで、いい意味でみんな普通の感覚を持っていて、一緒にいてすごく安心できるんです。最近もちょこちょこ会ったりしています!
──広瀬さんのサッカーの上手さに驚きました……。
是枝 一年ちょっとかな、コーチをつけてちゃんとやったんです。彼女自身元々バスケットボールをやっていて運動神経もよかったんですけど。この作品の中で、すずがサッカーが上手だということは結構重要だと思っていて。すずにとってサッカーは自分を開放する手段のひとつなんですよね。ぼくは大好きなシーンがあって、千佳と浜田店長が試合を観いているんですけど、すずがゴールを決めたときに二人がぐるぐる回りながらすごい喜んでいるんですよ(笑)妹のゴールにすごい喜んでいる姉という感じがよく出ていて、何度見ても微笑ましくて笑ってしまうんです。
──様々な監督さんの現場を経験されていると思いますが、夏帆さんから見て是枝監督の現場の雰囲気はいかがでしたか?
夏帆 撮影に入る前に、あの家で四姉妹で一日掃除や料理をしたり、初めての顔合わせのときは、桜が咲いている季節だったのでお花見をしたりしました。そういう空気感を作ってくださったので、無理せず現場にいることができたし、現場にいながらお芝居しているのかしていないのか分からなくなることもありました。そんな自然体でいることができたのは初めての経験でしたね。
──縁側で千佳が佳乃の足をツンツンするシーンがとても自然で素敵でした。あれは演出なのですか?
夏帆 あれは撮影の合間に私が(長澤)まさみちゃんにふざけてやっていたところに監督が来て、「そのままそれやって」と言われて取り入れたことなんです。近い関係になれたからこそやっていた仕草というものは映画の中でたくさんありましたね。
是枝監督 あのシーン素晴らしいでしょ?(笑)撮影中はみんな控え室に戻ることがほとんどなくて、あの家でワイワイやっていましたよね。そのときに結構みんなのことをジロジロ観察して、いいなと思うことをそのまま取り入れたりしていました。そうするとすごくうまくいくんです。会話もこっそり聴いていたりして……普段やってはいけない、撮影現場だから許されることですね(笑)
──食事のシーンが多くでてきましたが、現場で印象に残っている差し入れなどはありますか?
夏帆 差し入れというか、劇中にでてくるお料理は飯島さん(飯島奈美さん:本作のフードコーディネーター)が作っているんですが、撮影の合間にカキ氷のシロップを作って下さったりして、そのシロップがすごい美味しかったですね。あと、いろんな種類の素麺とかも本当に美味しかったです。劇中でも登場するアジフライは私は四枚も食べました(笑)ほかのみんなも本当によく食べていましたね。
是枝監督 飯島さんの料理は本当に美味しかった。アジフライのときはご飯片手にスタッフが行列をつくってましたね(笑)
夏帆 こんなふうに映画を観終わった方たちと一緒に話せる機会がこれまでなかなかなかったので楽しかったです!
映画『海街diary』は、全国公開中。
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【Story】鎌倉で暮らす三姉妹、幸、佳乃、千佳の元に、15年前家を出ていった父の訃報が届いた。長い間会ってもいなかった父の葬儀のため山形に向かった三人はそこで異母妹すずと初めて会う。身寄りのなくなった彼女が、葬儀の場でどうしようもない大人たちの中で毅然とふるまう姿に、長女・幸は別れ際とっさに口にする。「すずちゃん…鎌倉にこない?いっしょに暮らさない?4人で」。そうして鎌倉での4姉妹の生活が始まる。
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