『君は月夜に光り輝く』月川翔監督インタビュー|永野芽郁×北村匠海は「長年連れ添った夫婦のよう」相性の良さに“救われた”撮影の日々──

映画『君は月夜に光り輝く
月川翔監督インタビュー

君は月夜に光り輝く
月川翔監督

2019年3月に公開され大ヒットを記録した映画『君は月夜に光り輝く』のBlu-ray&DVDが9月18日(水)にリリースされる。特典ディスクには、イベント映像集や永野芽郁×北村匠海×月川翔監督による“新撮スペシャルコメンタリー”などが収録され、充実の内容となっている。『君の膵臓をたべたい』に続いて、「生と死」に向き合う新時代の純愛物語ともいえる本作の監督を務めた月川翔が、未公開シーンや永野芽郁×北村匠海との撮影エピソード、自らを“受注生産型”と見極めるようになったきっかけについて赤裸々に語った(取材・文:渡邊玲子/撮影:小宮駿貴)。

永野芽郁×北村匠海は「長年連れ添った夫婦のよう」

君は月夜に光り輝く
(C)2019「君は月夜に光り輝く」製作委員会

──入院しているはずの渡良瀬まみず(永野芽郁)がある日突然教室に制服姿で現れて、それを目にした岡田卓也(北村匠海)が静かに涙を流すシーンが撮影初日だったそうですね。俳優にとって難しい初日だったのではと思えるのですが、あえて難しいシーンから撮影に入るのが月川監督の狙いだったのでしょうか?

月川:撮影の都合でそうなってしまっただけです。匠海くんには「試されてる!?」と受け取られたようですが(笑)。僕は「まだ何も積み上げられていないタイミングで、いきなり泣き芝居をさせてしまってごめんね」と申し訳なく思っています。まさか初日に、あんなにすごい芝居を出してくるとは思わなかったから本当に驚きました。匠海くんは「まみずが目の前にいてくれたから、あの芝居が出せた」と言うんです。そういう意味では、2人の相性の良さに“救われた”初日でしたね。

──北村さんと永野さんは意外にも今回が初共演ですね。

月川:そうなんです。でも、「長年連れ添った夫婦か?」というくらい、“阿吽の呼吸”でしたね。会話がなくても心地よさそうだし、しゃべり始めたら今度は延々としゃべってるし(笑)。でも、俳優同士の相性の良さなんて、いざ蓋を開けてみるまでわからないものです。

北村匠海への信頼感「相手がどんな芝居をしても、ちゃんと受けてくれる」

君は月夜に光り輝く
(C)2019「君は月夜に光り輝く」製作委員会

──北村さんとは『君の膵臓をたべたい』に続いてのタッグとなりますが、再び起用した理由とは?

月川:今回も“北村匠海が女の子に振り回される”という設定なので、どうしても最初は『君の膵臓をたべたい』を意識せずにいられませんでした。でも、匠海くんと話し合った結果「まずは『君は月夜に光り輝く』の卓也を演じることに集中してみよう」ということに。匠海くんに対しては、「相手がどんな芝居をしても、ちゃんと受けてくれる」という信頼感がありました。芽郁ちゃんは、NHKの朝ドラ「半分、青い。」でずいぶん長いこと同じキャラクターを演じ続けていたこともあって、撮影前は「映画の現場ってどうやるんでしたっけ?」「えーっ!?できるかなぁ」みたいな感じだったんです(笑)。芽郁ちゃんが新鮮なお芝居をバーンと出す瞬間を逃さないようにしたいと思ったので、なるべくテストで固めずに、テイクも重ねずにいきたいと、キャスト・スタッフとあらかじめ相談はしていました。でも、いざ現場に入ったら「段取り」の時点でスタッフが2人のお芝居に胸を打たれて涙しちゃって…。「もう、このまますぐ撮りましょう!」という感じでしたね。

──永野さんと北村さんのお芝居で、特に印象的だったシーンはありますか?

月川:まみずが病室で「もう二度と会いに来ないで」と卓也に告げる場面です。脚本を書いていた時点では、「果たしてこれだけで卓也はまみずに会いに行かなくなるのかな」という迷いがありました。会いに行けない理由を他にも作らないといけないんじゃないかと思い、いろんな設定を足してみましたが、この場面の2人のお芝居を見ていたら「あぁ、これはもう会いに行けないよね…。」というところまでちゃんとたどり着いていたんです。2人のお芝居から教えてもらったことが、この現場ではたくさんありました。

──DVD特典には「メイキングハイライト」と「本編未公開シーン」を見ながら、月川監督とお2人が語るスペシャルコメンタリーが収録されるそうですね。収録時にはどんなお話をされましたか?

月川:映画の公開以来、久しぶりに3人で会いました。考えてみると、「本編未公開シーン」のコメンタリーというのは珍しいのかもしれないですね。実は映画に出てくる「ロミオとジュリエット」の場面も、最初はもっと長かったんです。ジュリエットの格好をしたまみずが、一瞬だけ卓也と入れ替わる場面も撮っていて。あとは、松本穂香さんの素晴らしい“泣きの芝居”もありました。編集の都合で泣く泣くカットせざるを得なかった映像を観ながら、僕が「ごめんなさい!」と謝罪するコメンタリーになっていると思います(笑)。

「まみずが生きる喜びを感じた瞬間だけ光り輝く」

君は月夜に光り輝く
月川翔監督

──映画化するにあたって、原作から大きく変えた部分はありますか?

月川:大きなところで言うと、2つありますね。1つ目は、「なぜまみずの肌は光るのか」ということ。「もともと原作がそういう設定だから」ということではなくて、ちゃんと自分の中で“発光病”というものをコンセプトにしたいなと思い、自問自答を繰り返した結果「まみずが生きる喜びを感じた瞬間だけ光り輝く」という設定にしました。もちろんそれは彼女の病気の症状でもあるわけだから、「彼女が生きる喜びを感じていること」と、「死に近づくこと」が同時進行で起こっていることを表現したかったんです。

──なるほど。だから映画ではまみずが「光り輝く」シーンは、屋上の場面のみで象徴的に扱われていたのですね。

月川:もう1つは、原作では卓也が屋上の縁に立つ場面が登場するのですが、それを映画ではバッサリと削りました。「代行」という、まみずが自分の代わりに卓也にやってもらうことこそがこの作品の個性だと思ったので、「私の代わりに生きて」というまみずの想いを物語の着地点にするべく脚色していきました。

──ところどころにユーモアがちりばめられているのも本作の魅力ですよね。美術や衣装にも、スタッフのこだわりが感じられました。

月川:病室にお見舞いに行くシーンとなると、どうしても「ベッドで寝ている病人と、パイプ椅子に座ったお見舞いの人」という絵になりがちじゃないですか。でも、この映画においては、病室の中を走りまわったりするカットもあるので、「なるべく2人がくつろいでいるように見えるスペースを作ってください」とスタッフにお願いしました。

──それでカウンターやオシャレなソファが置かれていたわけですね。永野さんと北村さんのお芝居には結構アドリブもあったとか。

月川:僕が「病室の中を2人でグルグルと追いかけっこをして、最終的には背中合わせで座って欲しい」と言っただけで、彼らはすぐに反応してくれて、とても助かりました。カットをかけずにいると、「まだ続けろってことね」みたいな感じで、彼らも芝居を続けてくれる。2人がIKEAで買い物をしているシーンは、ほぼアドリブでしたね。卓也がスマホでまみずと会話しながら歩いているシーンも、実際に芽郁ちゃんが僕の隣で匠海くんに電話して、モニターを見ながら指示を出していたんです(笑)。

──俳優同士のその場のやりとりを活かす場合、スタッフも臨機応変に対応する必要がありますね。

月川:そうなんです。だから僕はいつも撮影に入る前にスタッフを全員集めて、「こういう撮り方をするので、各自何とかしてください」とお願いをするところから始めます。みんな面白がって応えてくれるんですが、スタッフには相当迷惑をかけていると思いますね(笑)。

──「月川組」はいつも必ず同じメンバーというわけでもないですよね?

月川:カメラマンの柳田裕男さんは『君の膵臓をたべたい』以来2度目、美術の五辻圭さんとは過去に5作品ぐらい一緒にやっています。録音の加藤大和さんは今回が初めて。だいたい今まで一緒にやったことのあるメンバーと、初めましてのメンバーが半々くらいになるような比率にしてます。現場ではみんな面白がってやってくれています。柳田さんは現場の最前線で泣きながらカメラを回していました(笑)。

──本作はロケーションも印象的でした。主にどちらで撮影されたのでしょうか?

月川:屋上と病室は富山で撮影しています。本当は、あの部屋は病室じゃなくてジムなんです。運動器具をどかして、そこに壁を建てて撮影しました。「病室を四角い空間にするのは嫌だ」とリクエストをしたら、スタッフが半円状のジムの物件を持ってきてくれて。もともとスタジオ収録じゃなくて、ロケで撮りたいと決めていたので、窓外の風景も印象的な場所を選んだんです。病院の外観と一階のロビーは、とある企業の保養所をお借りしたのですが、とても曲線が印象的な建物だったので、病室もそれに合わせることにしました。

匠海くんとまた一緒にやるとしたら、今度は全く違う役柄を演じてもらいたい

君は月夜に光り輝く
(C)2019「君は月夜に光り輝く」製作委員会

──スタッフに限らず、月川監督の作品にはお馴染みの俳優さんが登場することが多いですよね。同じ俳優さんを別作品で演出していく面白さと、難しさとは?

月川:『君の膵臓をたべたい』と『センセイ君主』の浜辺美波さんみたいに、全然違うことをやってもらうのも楽しいし、今回の匠海くんのように、似たような役柄だけど別の人間を生きるというのも面白い。同じ俳優を起用するにしても、いろんなケースがありますよね。もちろん、「まったく新しいキャストで新鮮なものを見たい」という気持ちもありますが、「この俳優の新鮮な面を見てみたい」というのもあるし、「確実に信頼できる」という意味では、やっぱり心強いところもありますから。今後もキャストもスタッフもミックスしながらやっていくと思います。

──「前回を超えなくちゃ」とか、「成長した姿を見せたい」みたいなプレッシャーもありそうですね。

月川:それは当然ありますよね。「前はうまくいったけど、あれと同じじゃ嫌だよね」みたいなことは、やっぱり直接言葉にはしなくてもお互いあるはず。もし匠海くんとまた一緒にやるとしたら、今度は全く違う役柄を演じてもらいたいです。

「映画って面白い!」と思った出発点は、アクション映画だった

君は月夜に光り輝く
月川翔監督

──今後、新たに挑戦したいジャンルはありますか?

月川:実は、もともと僕が自主映画を撮り始めた原点というか、そもそも「映画って面白い!」と思った出発点は、アクション映画だったんです。そういう意味では、やはり「いつかアクションに挑戦してみたい」という気持ちはあります。

──今の月川監督がアクション映画を撮るとしたら、どんな作品になりそうですか?

月川:それこそ自主映画の頃は、「マイケル・マンの映画は最高だなぁ」って思いながら撮っていたので、「何が一番やりたい?」と聞かれるなら、“ガン・アクション”がやりたいです。

──全く想像がつきません(笑)。

月川:ははは(笑)。自分でも「果たしてできるのか?」と思います(笑)。

──月川監督は、もともと東京藝術大学大学院のご出身で、在学中は黒沢清監督や北野武監督に師事されていたそうですね。その当時、将来ご自身が今のような作風の映画を撮ることを想像されていましたか?

月川:いや、まったく想像していなかったです(笑)。大学とか大学院の頃は、「恋愛もの」を観ても、「なんでこんな甘ったるいものを作ってるんだ!」みたいな感じに尖った生意気な学生だったので、まさか自分がその後そういう作品を量産していくことになるとは(笑)。

──いつ頃、その“宿命”を受け入れられたんですか?

月川:周りが「君はこっちだろう」と見出してくれなかったら、まさか今のような方向に行くとは思っていませんでした。でも、いざやってみると「なるほど、こっちにはこういう面白さがあるんだなぁ」と気づいたり…。今となっては「こっちの方が得意なのかもしれない」と思えるようになっているくらいなので、わからないものですね(笑)。

──「必ずしも自分が好きなものが、自分に向いているとは限らない」ということですか?

月川:好きなものもだんだん変わってきたりしますよね。昔は観ようともしなかったものを観てみたら、意外と面白いとか。単純に食わず嫌いだった面もあったりして。

──具体的には?

月川:う~ん……なんだろう?例えば“青春キラキラもの”は、昔は絶対観なかった(笑)。でも、若い子たちを確実にキュンキュンさせるじゃないですか。今みたいに、こうして有難くお仕事をもらえなかった頃は、「なぜキュンキュンさせられるんだろう?」と、少女漫画を読み漁って研究していた時期もあります(笑)。

──その研究成果が『君の膵臓をたべたい』や『君は月夜に光り輝く』の大ヒットに結びついたわけですね。

月川:でも、人の気持ちって必ず移ろいゆくものなんです。いまや“キラキラもの”にも飽きてきているのかもしれないし、きっと時代にもよりますよね。こればっかりは正解もないし、いろんな要因があるので、世の中の流れを常に敏感に読み取っていくしかないです。

「生きるということ」についての映画を作ろうと思ってやってきた

君は月夜に光り輝く
月川翔監督

──作り手側も、結婚して家族が増えたりすることで、物事の捉え方や考え方も変わっていきますよね。環境の変化は、作品にどんな影響をもたらしますか?

月川:例えば、小津安二郎監督の『東京物語』にしても、大学時代と今とでは、感動する場面が全然違ったりするんです。大学の時は、原節子さんのことをひたすら追いかけていたのですが、今となっては笠智衆さんのことを追ってしまう。そう考えると、自分も年齢や人生経験に即した映画を撮っていくべきなのかな、とも感じます。

──本作にも、及川光博さん演じるまみずのお父さんが卓也に、「お嬢さんをください」と言わせるシーンがありますね。

月川:あれは完全に映画オリジナルなのですが、「プロポーズしてみてよ」と言うまみずの親は、「どんな人なんだろう?」という発想から生まれたシーンなんです。確かに、親の視点を入れるというのも、僕自身が親になってから撮った映画だからかもしれないですね。『君の膵臓をたべたい』の頃は子供がまだ妻のお腹の中にいて、生まれる前だったので。

──WOWOWドラマ「そして、生きる」なども手がけられていますが、今後も「生と死」をテーマに撮り続けていきたい、という想いはありますか?

月川:結局、「難病もの」といわれるジャンルでも、「人が死んで悲しい」という事だけじゃなくて、「生きるということ」についての映画を作ろうと思ってやってきたつもりです。

僕は“受注生産型”の監督「エンターテインメントに振り切ろう」と思えた

君は月夜に光り輝く
月川翔監督

──その反面、月川監督の公式プロフィールに「オーダー以上のクオリティを〜」と書かれていて、とても興味深かったです(笑)。

月川:どこかの企業みたいな感じですよね(笑)。僕は“受注生産型”の監督なので、「作家性で映画を作ってる人ではないですよ」ということを伝えているだけです。それこそ藝大時代は「どうやって自分の作家性を出していこうか」と悩んだ時期もありましたが、個人的に「自分はそっちの方向じゃないなぁ」と感じた出来事があって……。

──そのお話、めちゃくちゃ気になります!

月川:実は、藝大の2期に濱口竜介さんがいて、彼の修了制作を観たときに「あぁ、こういう人が映画を作ればいいんだ」と思ったんです。僕の大学時代の映画研究部の顧問の先生が、東大で濱口さんを教えていたことがあって、たまたまその先生と同じ回を観ていました。「僕、もう映画撮らなくていいですわ」みたいなことをつぶやいたら、先生から「君は娯楽作品を作る人だと思うから、そっち方向に行ってみたら?」と勧められて。「あ、そっか!」と思って、そこから“受注生産型”に切り替えた。それがちょうど社会人2年目の時ですね。「同じ土俵で戦ったら、俺は濱口さんには絶対に敵わない。だったら俺はエンターテインメントに振り切ろう」と思えたんです。

──ある意味、『君の膵臓をたべたい』も、月川監督が濱口監督と出会わなかったら生まれていなかったかもしれないと思うと、感慨深いです。

月川:僕にとっては、濱口さんの卒業制作の『PASSION』がスペシャルな1本ですね。今でも何シーンか観返したりすることもあるし、濱口さんに「今度こういうシチュエーションを撮るんだけど、何か参考になりそうな映画ある?」とメールで相談すると、ものすごく難解な映画のリストが返ってくるんです。で、その難解すぎる映画を観ながら「うわ、やっぱり俺はこの方向じゃない!」と、改めて思います(笑)。

──貴重なお話、ありがとうございました!

映画『君は月夜に光り輝く』Blu-ray&DVDは9月18日(水)リリース

https://kimitsuki.jp/bluraydvd.html

(C)2019「君は月夜に光り輝く」製作委員会

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作品情報

君は月夜に光り輝く

君は月夜に光り輝く

4.2
2019/3/15 (金) 公開
出演
永野芽郁/北村匠海/甲斐翔真/松本穂香/今田美桜/優香/生田智子/長谷川京子/及川光博/斉藤慎二 ほか
監督
監督:月川翔/原作:佐野徹夜『君は月夜に光り輝く』(メディアワークス文庫/KADOKAWA刊)