『ジュラシック・ワールド』に込められたオマージュの数々

全世界興収第3位を記録し、日本でも観客動員530万人以上、興行収入は80億円を超える記録的な大ヒットとなっている『ジュラシック・ワールド』。すでに映画をご覧になった方はお気づきかもしれないが、本作には『ジュラシック・パーク』シリーズに捧げたオマージュがいくつも隠されています。

「『ジュラシック・パーク』で叶わなかった夢が遂に実現した」と語るスティーヴン・スピルバーグ製作総指揮と、「シリーズの魅了を新たな世代に伝えたい」と語る新進気鋭のコリン・トレボロウ監督の2人が込めたオマージュの数々を、カナダ・アルバータ大学で古生物学を中心にサイエンスを学んだ恐竜研究科・恐竜くんの解説と共にご紹介します!


■冒頭:地響きを立てて現れる小鳥

⇒1作目ではグラント博士が「鳥は恐竜から進化した」と主張するシーンがあり、ラストシーンも、島から脱出する際のヘリコプターから鳥を見つめるシーンで幕を閉じます。「1作目の正統な続編」として位置づけられた本作が「鳥」の登場とともに幕を開けるのは、必然かもしれません。なお、鳥が恐竜であるというのは映画だけの話でなく、科学的に立証された定説でもあります。

 

■パーク中央に位置するメイン体験施設「イノベーションセンター」

⇒建物内の「ハモンド・クリエーション・ラボ」の前には、ジュラシック・パーク創設者ジョン·ハモンドの彫像があります。

⇒恐竜の化石発掘体験コーナーで砂をハケで掃き出すシーンは、1作目前半の恐竜発掘現場でのシーンとそっくり!

⇒施設内のモニター画面上でDNAについて解説するキャラクターは1作目と同じ「Mr. DNA」

 

■映画の中での時間の流れ(二十数年)が現実の世界と同じ:ジュラシック・パーク1993年⇒ジュラシック・ワールド2015年

⇒ストーリー内でクレアが「20年前は誰もが衝撃を受けた恐竜も、今では当たり前の存在になってしまい、誰も驚かない」と語るくだりは、「20年前のジュラシック・パーク公開時は誰もが度肝を抜かれたCGも、今やごくありふれたものになってしまった」という現実世界とシンクロします。もはや恐竜が当たり前になってしまった世界で何か新しいことはできないか、どうやったら人を驚かせられるか、客を満足させられるか…と苦心する映画内のパーク経営陣の悩みは、そのまま、映画『ジュラシック・ワールド』制作者たちの切実な悩みを投影したものかもしれません。

 

■パークのオペレーター「ロウリー・クルーザー」

⇒プレミア付きのTシャツをわざわざネットオークションで入手してくるなど、旧ジュラシック・パークへの強い憧れを見せるロウリー。パークにおける役職でいえば、1作目の“悪役”デニス・ネドリーにあたるポジションです。両者は、性格や作中の役どころは大きく異なるものの、机の上が散らかっていたり、飲みかけのドリンクが放置してあったりするところや、同僚に「少しは整理しろ」と注意される点まで全く同じ。また、余りにゴチャゴチャなロウリーの机を見たクレアは「Chaotic(混沌としている)」と表現しますが、その机の上には、カオス(Chaos)理論を唱えるイアン・マルコム博士(1・2作目両方に登場)の著作「God Creates Dinosaurs」が!なお、クレアの助手ザラも、映画序盤のモノレールの中で同じ本を読んでいます。

 

■パークの運営を管理するクレア・ディアリングの服装

⇒当初クレアは、1作目のハモンドを彷彿とさせる全身真っ白な服装をしています。しかし中盤以降、
インドミナスに襲われた恐竜の死を目の当たりにし、パークや甥達の危機を実感したクレアは、1作目のエリー・サトラー博士と同様に、お腹の辺りでトップスを結んで行動するようになります。

 

■恐竜は全てメス

⇒オーウェンが訓練しているヴェロキラプトルは4姉妹で、同僚のバリーも「(ラプトルが)女の子だ」と断言しているほか、インドミナスを筆頭に全ての恐竜が、劇中ずっと「Her(彼女)」と呼ばれています。これは、1作目でヘンリー・ウー博士が話していた「パークの恐竜は(繁殖抑制のために)全てメスである」という設定を、忠実に引き継いでいるためでしょう。
また、1作目では、冒頭で作業員がラプトルに襲われた時にマルドゥーンが連呼する「Shoot her!(彼女を撃て!)」という台詞の「Her」が、演出上特に強調されていたり、中盤のマルコム博士とサトラー博士のやり取りが「そして女が地球(大地)を支配する」という台詞で締めくくられたりします。恐竜がメスという設定は原作通りですが、人間側のキャラクターも、映画1~4作全てで、土壇場で肝の据わった活躍を見せるのは大抵「女性(女の子)」だったりします。「強いメス(女性)」というのはシリーズ通してのテーマの一つかもしれませんね。

 

■女王の“古傷”

⇒映画の中で明言こそしていませんが、本作のティラノサウルスは1作目と同一個体であるという設定があります。その証拠に、1作目ラストでラプトルによってつけられた「首から肩辺りの古傷の痕」が確認できます。

 

■インドミナスのデザインと擬態

⇒設定上、インドミナスに組み込まれたDNAの中には「カルノタウルス」という恐竜が含まれていますが、これは原作の「ロストワールド:ジュラシック・パーク」に登場した恐竜です。インドミナスの目の上の角は明らかにカルノタウルスの角であると思われるほか、原作のカルノタウルスの「体色を変えて風景に擬態する」という特性も引き継がれています。

 

■廃墟と化した旧ジュラシック・パークのビジターセンター跡地

⇒1作目のラスト、ティラノサウルスの咆哮とともに落ちていく「When Dinosaurs Ruled the Earth」の垂れ幕が本作でも確認できます。また、同じく1作目ラストで恐竜(ティラノサウルスとアラモサウルス)の骨格が破壊されましたが、その時の骨の1本(肋骨)を拾い、そこに先述の垂れ幕をまきつけて、ザックが松明として使用します。

⇒この廃墟にインドミナスが侵入してきた際、上記のバラバラになったティラノサウルス骨格の「頭骨」を前足で踏みつぶして破壊します。

⇒1作目でも印象的に映し出されたラプトルの壁画や、ジープ、暗視ゴーグルなども登場します。なお、本作で兄弟が修理して運転するジープにつけられたタグが「029番」になっていますが、1作目でハモンドと弁護士のジェナーロが乗っていたジープのタグも「029番」であり、同じ車体であったことがわかります。


※ここから先はストーリーの重要なネタバレを含みます。※
<映画を観た後にご覧ください!>

 

■ヴェロキラプトルの前に立ちはだかるホログラム

⇒終盤、イノベーションセンター内でラプトルから逃げるオーウェンたちが、とっさに作動させたホログラムに映し出されているのは、1作目にも登場したエリマキ恐竜ディロフォサウルス。1作目でも、ラプトルが「キッチンのステンレス台に映り込んだ子ども(レックス)に突進して頭をぶつける」というシーンがありますが、本作でもホログラムにムキになって飛びかかっている様子を見るに、「狡猾なラプトルだが、視覚情報には意外なほど惑わされやすい」という性質は健在のようです。

 

■発煙筒は“彼女”を呼び寄せる

⇒インドミナスとの最終決戦。発炎筒を持って走り出したクレアは、1作目と同じやり方でティラノサウルスを誘導します。

 

■3作目のカタキ討ち?

⇒クライマックスでティラノサウルスが広場に登場する際、そこに展示されていた恐竜の全身骨格を思い切り破壊します。1作目のラストでも展示骨格を粉々に破壊するシーンはありましたが、重要なのは、これが3作目に登場した「スピノサウルス」の骨格であるという点です。「ジュラシック・パーク3」公開当時、「新登場のスピノサウルスがティラノサウルスを倒してしまう」という(悪い意味で)意表をついた衝撃の展開に、世界中で大ブーイングが巻き起こったといわれています。本作の「ティラノサウルスがスピノサウルスの骨格を盛大に粉砕する」というシーンが、この3作目の問題シーンを意識したものであることは間違いありません。お世辞にも評価が高かったとはいえない3作目への痛烈な皮肉、あるいは、全世界のティラノサウルス・ファンへのささやかなお詫びだったのでしょうか…?

 

■T-REXとラプトル夢の共闘

⇒インドミナスに追い詰められ、絶体絶命のティラノサウルス。そこで、絶命したと思われたラプトル(ブルー)が駆けつけて加勢するシーンは、アングルは違うものの、1作目で「仲間を殺されたラプトルがティラノサウルスに襲いかかるシーン」と、走り方・飛びつき方などの演出がそっくりです。ただし、今回は敵・味方の関係が入れ替わっているため、かつて争い合った恐竜同士が土壇場でタッグを組んで強敵に挑む…という、本作屈指の熱いシーンとなっています。

 

■メインテーマと共に颯爽と登場

⇒本作の楽曲はマイケル・ジアッチーノが担当していますが、過去シリーズでお馴染みのテーマ曲(ジョン・ウィリアムス作曲)がここぞというところで使われ、各シーンを大いに盛り上げています。更に、クライマックスの「ティラノサウルスが檻から出てくる瞬間」にジュラシック・パークのテーマのメロディをほんの一瞬だけ被せたり、「インドミナスにラプトルが突進してくるシーン」に2作目ロストワールドのテーマ曲のフレーズをかぶせたりなど、瞬間的な演出もかなり凝っています。


いくつ見つけられましたか?
他にもここでは紹介しきれないほどたくさんのオマージュが隠されています!
ぜひみなさん劇場でチェックしてみてください!

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