「SUPPORT EIGA PEOPLE ON THE LAND.〜映画に関わるすべての人々をサポートする〜」をビジョンとして掲げる映画ランド。そんな弊社が、これから注目の監督・キャストにお話を伺う。
繊細な感性で話題作を生み出し続けている小説家・大前粟生原作の『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』が4月7日より京都シネマ、京都みなみ会館にて先行公開。4月14日より新宿武蔵野館・渋谷 ホワイト シネクイントほかで全国順次公開される。『いとみち』の主演で第35回高崎映画祭最優秀新進俳優賞を受賞するなど今注目の女優でもある駒井蓮にデビューのきっかけや今作についてお話を伺った。
駒井蓮
KOMAI REN
2000年生まれ、青森県出身。
映画やドラマ、MV、CMなどジャンルを問わず活躍中。ドラマ連続テレビ小説『ちむどんどん』(2022年)、『束の間の一花』(2022年)に出演。主な映画出演作に『名前』(2018年)、『町田くんの世界』(2019年)、『朝が来る』(2020年)、『いとみち』(2021年)などがある。現在、LINE VISIONにて主演ドラマ『改札で止まっちゃったら』配信中。
最初から役者をやりたかった
――駒井さんが芸能界に入られたきっかけは?
駒井:きっかけはスカウトなんです。地元が青森で、13歳のときに家族で東京に旅行に来たんですよ。その時原宿の竹下通りでスカウトされて、今の事務所に入りました。
――7、8年前でしょうか。
駒井:そうですね。2014年の春かな。もともと役者をやりたかったんですけど、地元が青森ということもあってなかなか踏み出せずにいた時期だったので、「ラッキー」という気持ちで入りました。
――事務所に入って、モデル活動もされていたと思いますが、役者を目指すようになったのはいつ頃ですか?
駒井:最初から役者をやりたくて。モデルなどももちろん興味はあったんですけど、でも役者をやりたいと思っていました。
監督自身が映画の雰囲気
――今回、金子組に初めて参加されていかがでしたか?
駒井:監督の人柄がとても素敵な方なので、その人柄に支えられて、とても楽しかったです。監督の反応がかわいくて。部室のシーンでいっぱいぬいぐるみがいるんですけど、「このぬいぐるみは誰に似てる」とか「どのぬいぐるみを映そうか」とか、監督とぬいぐるみとのやりとりも印象的でした。
あとは、演出の時に監督が実際に演じてくださるのですが、その姿も常に愛らしくて。他のキャストの方と一緒に監督を見ながら、これが映画の雰囲気なのかもしれないと思っていました。
――金子監督ならではの演出はありましたか?
駒井:実際に金子監督が「こういう風にやってみて」っていうのが一番参考になりましたし、「これだとやりにくくないですか」って確認してくださって。役者陣が今何を考えてるのかということに寄り添ってくださったなと思います。
――京都での撮影はいかがでしたか?
駒井:鴨川のシーンがあって、亀の石があるところがすごい印象的で。監督が学生時代をこのあたりで過ごされていたので、ザ・京都っていう場所を説明していただきました。
世の中の出来事に触れていく
ーー駒井さんから見て、麦戸というキャラクターはどんな存在ですか?
駒井:傷つくこととか、しんどいこともそうだし、あとは優しいこともそうだし、そういうものに素直に反応できる人だなぁって思いましたね。
――そんな素直な麦戸を演じるに当たって意識されたことはありますか?
駒井:麦戸ちゃんって、世の中に起こっている辛いことにすごく敏感なので、撮影前にそういう世の中の出来事に触れていくようにしていました。逆に細川さん(細川岳)は見ないようにしてるって言ってたんですけど、私は麦戸ちゃんとして触れたほうがいいなと思ったので、ニュースなどをいっぱい見てましたね。
――駒井さんご自身は麦戸と似ていると感じるところはありますか?
駒井:似てる、と思いますね。最初、脚本を拝見したときもそうですし、監督とお話させていただいたときも、こんなに素直にしんどさを出したり、家にこもったりとかはできないけど、世の中の出来事に対する、あとは人に対する、敏感さみたいなところはなんだか似てるなと思って、ちょっと驚きましたね。
――細田さんと共演されていかがでしたか?
駒井:細田さんとは『町田くんの世界』という映画で、私のお兄ちゃん役だったんです。本当は、実年齢は逆で細田さんが一歳下なんですけど。その時は一緒に撮影する期間がすごく短くて、またいつかご一緒できたらいいなと思っていたら、こんなにちゃんとご一緒させていただけて、すごく嬉しかったです。
ーー細田さんとの共演シーンで印象的だったところはありますか?
駒井:直接的に関わるっていうよりは、私が細田さんを見ていてすごいと思ったところが、細田さん演じるナナくん(七森)が、ぬいぐるみを見ながら「うちにも一人いて、ここに連れて来たら喜ぶかも」っていうシーンがあって。その時に細田さんが、振り返ってぬいサーのみんなを見るところで、目がとてもキラキラしていて。その時に「うわぁ!ナナくんだ」ってすごく印象的だったのを覚えてますね。
ーー七森そのものだと感じた瞬間でしょうか。
駒井:純粋さというか、きらめき、輝きみたいなものが、役を通してにじみ出てるような感じがして。素敵だなって。お芝居中に「わぁっ!」と思いましたね。
――他の共演者の方も同世代の方が多かったですが、共演されていかがでしたか?
駒井:とても面白かったです。皆さんそれぞれ個性はあるんですけど、持っている雰囲気が一緒だったんですよね。だからそれをずっと共有しているような現場だったなと。
――どんな雰囲気だったのでしょうか?
駒井:みんな役としてぬいぐるみと緩やかに話したりとか。ぬいぐるみと一緒にいても全然違和感がない。あとは会話のテンポとか、笑いのテンポとかそういうのが皆さん合ってるなって思いましたね。
――駒井さんにとってぬいぐるみとはどんな存在でしょうか?
駒井:私、ぬいぐるみが本当に好きで。親には、さすがに二十歳越えてぬいぐるみをそんなに持ってるのは、って言われるんですけど(笑)
小さいときからぬいぐるみ遊びみたいなこともたくさんしてきましたし、それこそ今作の撮影の時に、自分のぬいぐるみをホテルに連れてきたり。基本的に、長期撮影の時には一人ぬいぐるみを連れていくんですよ。ホテルにずっと置いています。あとは姉妹がいるので、未だにぬいぐるみしゃべりみたいなのはしてますね。ぬいぐるみと対話することはないけれど、ぬいぐるみ同士のおしゃべりみたいなのはしてると思います。ちょっと親に心配されるんですよね(笑)
――今作には駒井さんのぬいぐるみも?
駒井:出てます。ちょこちょこ。映画デビューだねと思って。
優しさについて考えるきっかけに
――撮影で大変だったことはありますか?
駒井:麦戸ちゃんが途中から引きこもってずっと家にいることになるので、撮影の順が、昨日まではぬいサーの中にいたけど、次の日は長い期間家にこもってた状態から出てくるということもあって。ずっと人と関わってない時間を経た上での人との距離感みたいなのは、ちょっと難しいなと思いました。あまりにもコミュニケーション拒絶みたいになっちゃうのも極端だし。
――実際に完成した作品をご覧になっていかがでしたか?
駒井:先ほどお話した、みんなの間合い、テンポ感が合っていること、それ自体が映画の空気になってるなって思いました。あとは、私が実際見ていないシーンがたくさんあり、そこでの皆さんのやりとりが、とっても温かくなるようなもので、かわいいなと思いながら観ていました。
――今後、役者としての目標はありますか?
駒井:一人ですごい色を持っている方はたくさんいらっしゃいますが、私はそうじゃないなって最近感じていて。いろいろな頂いたものを、自分のなかで消化して形にしていくほうが向いてるなって最近思うようになったので、これからもそういうことを積み重ねながら、どんな役にも染まれる、そういう役者になっていけたらなって思います。
――最後に記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。
駒井:観た方が「優しさ」について考えるきっかけになる映画だと思います。今までの自分が持ってきた優しさもそうだし、これからどんな風に優しさを抱えて人と関わっていきたいか、というのを考えられる映画です。あとは、登場人物のやりとりがとってもあったかくて、ほっこりする映画だと思うので、ぜひぜひほっこりしつつ、ちょっと真剣に考えつつ、そんな風に観ていただけたらいいなと思いますね。
(取材・写真:曽根真弘/ヘアメイク:里吉かなで/スタイリスト:尹 美希)
映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』は4月7日より京都シネマ、京都みなみ会館にて先行公開。4月14日より新宿武蔵野館・渋谷 ホワイト シネクイントほかで全国順次公開。
監督:金子由里奈
原作:大前粟生
脚本:金子鈴幸/金子由里奈
音楽:ジョンのサン
出演:細田佳央太/駒井蓮/新谷ゆづみ/細川岳/真魚/上大迫祐希/若杉凩 ほか
配給:イハフィルムズ
公式サイト:https://nuishabe-movie.com/
公式Twitter/公式Instagram :@nuishabe_movie
©映画「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」