『高野豆腐店の春』麻生久美子 インタビュー「優しい映画」

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麻生久美子

「SUPPORT EIGA PEOPLE ON THE LAND.〜映画に関わるすべての人々をサポートする〜」をビジョンとして掲げる映画ランド。そんな弊社が、映画界で活躍する監督・スタッフ・役者にお話を伺う。

今年デビュー60周年、81歳を迎える藤竜也主演の映画『高野豆腐店の春』が8月18日より公開される。企画・製作は『Shall we ダンス?』『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』などユーモアのある作品を数々手掛けてきたアルタミラピクチャーズ。本作で藤の娘役を演じるのは、『カンゾー先生』『夕凪の街 桜の国』ドラマ『時効警察』シリーズなど幅広い役柄をこなす麻生久美子。今作では父親想いの娘役を演じた麻生にお話を伺った。

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麻生久美子
ASO KUMIKO

1978年生まれ、千葉県出身。
1995年に俳優デビュー。主な映画出演作に『カンゾー先生』(98)、『CASSHERN』(04)、『THE 有頂天ホテル』(05)、『夕凪の街 桜の国』(07)、『インスタント沼』(09)、『モテキ』(11)、『マスカレード・ナイト』(21)があり、ドラマでは『時効警察』シリーズ(06〜)、『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』(21〜22)などがある。

 

 

父親役の藤竜也さんと

――今回演じられた役についてお聞かせください

麻生:春は、監督から可愛らしくてみんなから愛されるキャラクターというのを言われていました。脚本を読んで感じたのは、お父さんもそうですけど、ちょっと頑固な部分がある。そういうところは一緒に過ごしてきただけあって似てるのかなって。でもお互いにすごく信頼があるし、お父さんを思う気持ちだったりとか、そういうものが出せればいいなと思って演じました。

――春はどんな人物ですか?

麻生:まず、明るいですよね。いろんな人とよく会話をして、社交的。ちょっと世話好きなのかなとかも思ったりして。藤さんがとってもチャーミングなので、そういうところが春にもあるといいなっていうのはありました。

――春に共感できるところはありますか?

麻生:私はお父さんと暮らしてなかったから、今回はそういう意味でもとても嬉しくて。共感とはちょっと違うんですけど、自分がお父さんと暮らしてたらこんな感じだったのかな、とか、藤さんを見ながらそんなことを想像したりして、良い時間でした。

――演じる上でこだわった点はありますか?

麻生大げさなことはしたくないなと思っていて。この映画にはふさわしくない気がしたので。チャーミングではありたいけれど、コメディになりすぎないようには気をつけていました。あとは、藤さんとお芝居してると生まれてくるもの、空気感みたいなものがあったので、自然と台本に書かれてないことをしてるときもあり、そういうのが出てくるのが良かったなと思っています。

藤さんもいろいろ考えてらっしゃる方なので、アドリブが割とあるんですよね。それを見たら素敵だなと思って。私はこの人の娘だから、そういうところを少し引き継げたらいいなと考えていました。酔って二人で帰るシーンで、藤さんが歌っていたので、私は勝手に腕を組んだり、そういうことぐらいですが。

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©2023「高野豆腐店の春」製作委員会

豆腐への見方が変わった

――お豆腐屋さんの役作りはどのようにしましたか?

麻生仕事の場では師匠と弟子みたいな関係でいきたいという監督の強い想いで、しっかり挨拶をする、というのが脚本にもありました。仕事場はすごく音がうるさいんですよね。だから大きな声で挨拶をする。

今回、お豆腐屋さんにいろいろお仕事を見せていただいて、ちょっとだけ作る工程に関わらせてもらったりしたんですけど、大変ですね。体力仕事というか。大きい鍋で作っていくので重いですし。

一番びっくりしたのが、お水の中で豆腐を切るとき。お水がとっても冷たいんですよ。今まで経験した中で一番水が冷たかった。その中でずっと豆腐を支えて切らなきゃいけないから、手がちぎれるかと思いました。でも「だんだん温かくなってくるから」って言われて。本当?って思ったんですけど。冷たすぎて逆にほてってくるっていうか、確かにだんだん温かくなってきて、このことか!と発見がありました。お豆腐、豆乳に関して今回で私は見方が変わりました。

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©2023「高野豆腐店の春」製作委員会

――どんな風に変わりましたか?

麻生:私の中で美味しいお豆腐って、何となく、いいところっぽいパッケージの、絹のお豆腐だったんですけど、実は丁寧ににがりだけで作った木綿の豆腐が、一番豆の味が濃くて美味しいんですよ。好みはあると思いますけど、私はそう感じて。監督が最初の顔合わせのときに手作りのお豆腐をくださって、美味しくてびっくりしたんです。今まで食べていたのは何だったんだろうって。あれで私のお豆腐観が変わりました。

――美味しいお豆腐はどんなところが違いますか?

麻生:味が違う。豆の味がしっかりします。深いコクがあるというか。今までは、お豆腐の味を感じるというよりは、お豆腐にかけたものの味を感じていた。つるっとしたのどごしと、醤油などの味を楽しんでいたのですが、しっかり豆の味を楽しめるようになりました。

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麻生久美子

自然体のかっこよさ

――藤さんとの共演はいかがでしたか?

麻生:藤さんって人間的にすごく尊敬できるというか、いつも自然でありのままでいらっしゃる。お芝居を楽しんでいるし、すごく真剣に考えているのが伝わってくるんですけど、とても自然なんです。そこにまず惹かれました。

すごい俳優さんだと思いますし、もちろん尊敬してるんですけど、そういうすごさみたいなものを一切出さないんですよね。偉そうなところが微塵もないですし。普段のお芝居をしていない藤さんがあまりにかっこよくて、惹かれました。

お芝居されているときも、まとう空気をすぐ変えられて、チャーミングなときとか、コミカルなときとか、怒ってるとか、機嫌悪いとか、芝居をしてる感じがしないんですよ。あの感じはどうやったら出せるんだろうなと思って見ていましたが、なかなか意図的にできることではないんだろうなと。とにかく魅力的な方で、ずっとかっこいいです。

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©2023「高野豆腐店の春」製作委員会

カメラの向こうにもう一人の春が……

――三原監督の作品に参加してみていかがでしたか?

麻生:私はあんなに丁寧な監督さんは初めてかもしれません。演出も佇まいも口調も全て丁寧です。だけど、静かに燃えている方だなっていうのは感じます。愛情がすごく詰まっていて、役や作品に対する情熱みたいなものはひしひしと伝わってくるから、そこは私も頑張って、いい春になれればいいなと思いました。

――監督ならではの演出はありましたか?

麻生あまり細かくはおっしゃらないんですけど。私がお豆腐について熱く語るシーンのときに、監督もそこのシーンの春にすごい思い入れがあったんでしょうね。そこだけはもう少し熱くみたいなことは演出で言われたのを覚えています。

カメラの後ろで、春になってるんですよ、監督が。あれは忘れられない(笑)。私がセリフを言ってると、同じテンションでどんどんヒートアップしていく監督が目に入って。それに若干戸惑ったんですけど、何とかやりきりました。それぐらいの熱い気持ちで春を作ってくれてるんだなと。一緒に芝居をしてる感じでした。

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麻生久美子

支えあいたい人

――完成した映画をご覧になっていかがでしたか?

麻生脚本を読んだときもすごく面白いなと思ったんですけど、映像になって、芸達者な役者さんたちが魅せてくれているので、厚みが増してより面白い作品になったなと思います。

笑いもあるし、泣けるし、考えさせられるところもたくさんあって。自分がこれから歳を重ねていって、お父さんの世代になったときにどうしてるかなとか。そのとき周りに人がいるといいなとか。支えてくれる人、支えたい人が周りにいるといいなとか。そういうことも考えながら観ました。

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©2023「高野豆腐店の春」製作委員会

――映画に登場した恋の形を、麻生さんはどう感じましたか?

麻生:一生そばにいたい人って考えると、安心感のあるというか、一緒にいて楽しい人というか、一時の恋愛感情じゃないところで選ぶのかなと。お父さんに関しては、支え合って生きていきたい相手が見つかったことによって、安心するし、長生きできるんじゃないかなとか、人生楽しく生きられるんだろうなとか、そういうことも思いました。

――最後に記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。

麻生:優しくて、人を思いやる気持ちにあふれた、とても素敵な映画が出来上がりました。この映画を観たらお豆腐食べたくなるかもしれないし、豆乳を飲みたくなるかもしれない(笑)。笑いもあって、感動するシーンもあって。シンプルで素朴なお話ですけど、持ち帰ってもらえるものは結構多いのではないかなと思います。いろんなことを感じてもらえる映画になっていると思うので、ぜひ劇場で観ていただけたら嬉しいです。

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麻生久美子

(取材・写真:曽根真弘/ヘアメイク:ナライユミ/スタイリスト:井阪恵(dynamic))

高野豆腐店の春』は8月18日(金)ロードショー

監督:三原光尋

出演:藤 ⻯也/麻生久美子/中村久美/徳井優/山田雅人/日向丈/竹内都子/菅原大吉/桂やまと/黒河内りく/小林且弥/赤間麻里子/宮坂ひろし ほか

配給:東京テアトル

©2023「高野豆腐店の春」製作委員会

公式サイト:https://takanotofuten-movie.jp/
公式Twitter:@takanotofuten

 

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