アカデミー賞女優ヘレン・ミレン主演し、クリムトの名画をめぐる感動の実話を描いた映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』。公開を記念して、美術評論家の山田五郎と、「美術手帖」編集長のトークイベントが行われた。
オーストリアに留学したこともある山田は「”黄金のアデーレ”は、クリムトを代表する、”ゼセッション“と呼ばれるウィーン分離派の1作品。分離派というのは、ルネッサンス時代に続いたアカデミズムから分離し、日本の影響をとても受けている。
クリムトをはじめウィーンの画家は、パリなど他の場所の画家に比べて職人性がすごく高く、”ゼセッション“も、美術と工芸の融合がメインでした。例えば、印象派の絵画は、日本の浮世絵をそのまま写すといった直接的な影響を与えているのですが、”黄金のアデーレ”を観ると、アデーレ・バウワーの顔と首周りに関してはほとんどオーソドックスな書き方です。絵そのものというよりは、日本が影響を与えたのは、むしろ金の装飾です。金碧障壁画や唐草模様などは非常に日本の影響を受けていると思います。クリムト自身も美術学校を出たわけじゃなくて、工芸学校出身なのでもともと職人性が高いですしね。」と解説。
最後に、「美術作品は実態のある物だという側面を、この映画を通してすごく感じました。人の人生を豊かにしたり、狂わせたりする不思議な力を持った特殊な物であるという。絵画には秘められた物語がある」と、ナチスに奪われたクリムトが描いた伯母の肖像画返還を求め国を訴えた女性の、喪失から立ち上がり奇跡を起こすこの希望と感動の実話を絶賛していた。
11月27日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー
配給:ギャガ
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