ウィル・スミスやマーゴット・ロビー、ジャレッド・レトらが出演する話題作『スーサイド・スクワッド』がいよいよ9月10日に公開される。バットマン、スーパーマンのDCコミックスに登場するヴィラン(悪役)が多数登場する今作だが、中でも主役級の輝きを放つデッドショット、ハーレイ・クイン、そしてジョーカーを演じる俳優陣の魅力について掘り下げていく。
■今一番“バズっている”映画『スーサイド・スクワッド』とは
まず、今作は『マン・オブ・スティール』と『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』に続く、DCエクステンデッド・ユニバースの第3作である。デッドショット、ハーレイ・クイン、ジョーカーといった“極悪”ヴィランたちが、減刑と引き換えに、失敗しても切り捨てられるだけの自殺部隊(=スーサイド・スクワッド)として世界を救うために立ち上がるさまを描く今作。
アメリカでは、先月に公開されるやいなやオープニングの興行収入が8月公開作で歴代1位となり、3週連続1位を獲得した。現在全世界で6億4,336万2,209ドル(約662億6,630万7,527円)を売り上げ、年間興行収入ランキングでも既に8位につけている。(Box Office Mojo調べ、1ドル103円換算)
ストーリーの展開を掻き立てる音楽も忘れてはいけない。映画のサウンドトラックとしては、昨年5月に『ピッチ・パーフェクト2』が獲得して以来15カ月ぶりに全米アルバム・チャート首位を獲得しているほか、配信でも合計20カ国でiTunesチャート1位を獲得しており、日本でも公開前にTOP10入りしているほど。正に「今もっとも”バズっている”映画」と言えるだろう。
■ウィル・スミス×マーゴット・ロビーの再タッグに注目!
ウィルは日本でも人気が高く、先月開催されたジャパン・プレミアでの来日が実に13回目であり、空港にも多くのファンが駆けつけた。一方のマーゴットといえば、小悪魔キャラの印象を持っている方も多いのではないだろうか。特に、マーティン・スコセッシ監督&レオナルド・ディカプリオ主演の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』で、ディカプリオの顔をハイヒールで踏みつける刺激的なシーンが当時話題となった。今年のアカデミー賞で脚色賞を受賞した『マネー・ショート 華麗なる大逆転』に本人役で出演するほど、近年人気急上昇中の女優の1人だ。
『スーサイド・スクワッド』で主役級の役柄を演じるこの2人は、昨年公開の『フォーカス』で既に共演しており、ウィルは凄腕詐欺師、マーゴットはスリを得意とする女詐欺師を演じている。『フォーカス』で彼女は、映画監修を務め、かつて「世界最高のスリ師」と呼ばれていたアポロ・ロビンス本人から稽古を受け、集団での盗みや手さばきのテクニックをわずか3日で習得してしまったそうだ。実際に使われる数々の手口やその鮮やかな犯行に、あなたも視線(フォーカス)を奪われてしまうだろう。
冒頭でウィルが「注意をそらせば何でも盗れる」と、圧巻の器用さを披露するシーンも必見である。また、最初は未熟だったマーゴット演じる女詐欺師が、詐欺師としての能力、そして女性としての魅力ともに開花していく様子も見所の一つである。
そんな2人が再びタッグを組む『スーサイド・スクワッド』。銃の腕は百発百中だが、娘だけが弱点の暗殺者:デッドショットをウィルが、犯罪王ジョーカーの恋人:ハーレイ・クインをマーゴット・ロビーがそれぞれ演じている。ウィルが詐欺師の次に挑戦する暗殺者、そしてマーゴットの小悪魔キャラに狂気が加わった犯罪クイーン。2人の魅せる新たな顔に要注目である。
■変幻自在の演技で魅せるジャレッド・レト
新ジョーカーを演じるジャレッドは、ストイックな役作りをすることで有名な俳優の1人である。
例えば、ジョン・レノン暗殺に至るマーク・チャップマンの3日間を映画化した『チャプター27』では、体重を27kg増量し、マーク本人に限りなく近い容姿で謎に包まれた心理を描写した。逆に、主演のマシュー・マコノヒーと共にアカデミー賞主演・助演男優賞をW受賞した『ダラス・バイヤーズクラブ』では、トランスジェンダーのHIV患者役を演じるため、21kgのダイエットを成功させている。
また、アウトローな役も演じており、『ファイト・クラブ』では猟奇的なテロリスト役、『レクイエム・フォー・ドリーム』では薬物中毒者など、様々な顔を魅せてくれるジャレッド・レト。中でも『ロンリーハート』での役どころに注目してみよう。『スーサイド・スクワッド』では、医師だったハーリーン・クインゼルが、ジョーカーに影響されてハーレイ・クインとなるが、『ロンリーハート』ではヒロインとの関係性が逆である。
ジャレッドは、新聞広告から未婚の女性や未亡人を探し出して標的とする結婚詐欺師レイモンドを演じている。サルマ・ハエック扮するマーサと出会い、それまで金品を騙し取るだけだったレイモンドが、歪んだ愛ゆえに一線を越え、次第に歯止めが利かなくなっていくさまが描かれている。
まさに『スーサイド・スクワッド』におけるジョーカーとハーレイ・クインのような関係となった2人が、どこへ向かっていくのか、そして作品を最後まで観ることで分かる、タイトルの本当の意味にも注目の一作である。『ロンリーハート』でジャレッドは頭部が禿げ上がった役を演じるため、カツラを使うのではなく、髪を剃ったり抜いたりしており、細部へのこだわりも怠っていない。
『スーサイド・スクワッド』でのジョーカー役も、メソッド法という演技法で私生活まで役へ入り込み、共演者へ銃弾や使用済みのコンドームを送るなど、あまりのジョーカーぶりが話題となった。その怪演に期待の高まるジャレッドだが、「これ以上楽しい役はない気がするよ!」とコメントしており、ジョーカー役を複数回演じた後の引退も示唆しているため、その力の入りようが窺える。デヴィッド・エアー監督も「彼が初めてセットに現れてメイクと衣装を身につけたときには、現場が静まり返ったんだ。だって、そこにいるのはジョーカーそのものだったからね」と絶賛している。
ジャレッドが体現するジョーカーのルックスは、手や顔まで覆う大量のタトゥー、銀歯だらけの歯など、ジャック・ニコルソンや故ヒース・レジャーがこれまで映画で演じてきたものとは少し趣が異なる。デヴィッド監督曰く、そのタトゥーや銀歯にも全て意味があるそうで、鑑賞しながらそれに予想を巡らせるのも面白いだろう。
■チーム×アウトローな作品を得意とする鬼才デヴィッド・エアー
今作で監督・脚本・製作を務めるデヴィッド・エアーは、アメリカ海軍出身ということもあり、“チーム”を描くことに長けている。これまで『S.W.A.T.』(共同脚本)や『サボタージュ』(監督・共同脚本)、『フューリー』(監督)などを手掛けている。アウトローを描く作品も多く、デンゼル・ワシントンが悪徳警官を演じ、アカデミー賞主演男優賞を受賞した『トレーニング デイ』(脚本)や、走り屋チームの熱いドラマを描いた『ワイルド・スピード』(共同脚本)などが代表的である。
そうした作品の中で犯罪を取り上げることも多いため、それだけ犯罪者を描いてきた経験値も認められている。『トレーニング デイ』のアントワーン・フークワ監督と再タッグを組み、『暗黒街の顔役』『スカーフェイス』として映画化されてきた作品をリメイクするというニュースも報じられた。
つまりチーム×アウトローな作品を得意とするデヴィッド監督が、『スーサイド・スクワッド』で「アウトロー集団」を描くことになったのは当然の起用とも言える。その上、今作のスタッフやキャストは互いに“SKWAD”(「仲間」という意味のスラング)をタトゥーで彫り合うほど親交を深めたようで、そのチームワークがいかに作品に落とし込まれたのか注目である。
映画『スーサイド・スクワッド』は9月10日より全国公開
【CREDIT】
監督・脚本:デヴィッド・エアー
製作:チャールズ・ローブン、コリン・ウィルソン、リチャード・サックル
出演:ウィル・スミス、ジャレッド・レト、マーゴット・ロビー、ジョエル・キナマン、ヴィオラ・デイヴィス、ジェイ・コートニー、カーラ・デルヴィーニュ、福原かれん
配給:ワーナー・ブラザース映画
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