31日、第27回東京国際映画祭クロージングセレモニーがTOHOシネマズ六本木ヒルズにて行われ、最高賞となる東京グランプリに『神様なんかくそくらえ』が選ばれた。日本映画『紙の月』は、観客賞と主演の宮沢りえが最優秀女優賞を受賞した。
ニューヨーク出身のサフディ兄弟監督による初の長編映画『神様なんかくそくらえ』が、東京グランプリと最優秀監督賞の二冠に輝いた。数年前までジャンキーでホームレスだった主演のアリエル・ホームズの実際の体験談を基に、ドラッグに溺れながらストリートで生きていく若者たちを徹底したリアリズムで描いた作品。アリエル・ホームズがドラッグに依存していたかつての自分自身を演じたことで話題を集め、彼女や『アンチヴァイラル』『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』で知られる若手俳優ケイレブ・ランドリー・ジョーンズらの真に迫ったジャンキーの振舞いは多くの観客を驚かせた。
コンペティション部門審査員長のジェームズ・ガンは「ポーランドからフィリピン、NYからイラン、様々な国々から集まった15本の今年のコンペティションの作品の中で見出される文化の違いは彩色的に美しく、楽しく描かれていた。本当の輝きは相違点よりも類似点。今年のコンペティションの各作品に流れるテーマは、愛する、そして愛される、という必要性。表現が違っていても、人間の心と感情は同じ。作品を観た後、自分自身をよりよく知ることができ、理解できたと思う。映画作りの楽しさの中で表現力の相違と類似点を体験できるのが東京国際映画祭の魅力だと思う」と総評した。
また、今回より新設された、革新的な映画を世界へ発信し続けてきた映画人の功績を讃えるSAMURAI賞は北野武監督とティム・バートン監督に贈られた。
23日より9日間に渡って開催された第27回東京国際映画祭は、累計動員約39万5000人(劇場:4万4706人、TIFFCOMおよび共催企画:約20万人、レッドカーペット・アリーナイベント:約15万1000人)を集め、大盛況で幕を閉じた。
受賞結果は以下の通り。
【コンペティション部門】
東京グランプリ『神様なんかくそくらえ』
審査員特別賞:『ザ・レッスン/授業の代償』
最優秀監督賞:ジョシュア・サフディ&ベニー・サフディ(『神様なんかくそくらえ』)
最優秀女優賞:宮沢りえ(『紙の月』)
最優秀男優賞:ロベルト・ヴィエンツキェヴィチ『マイティ・エンジェル』
最優秀芸術貢献賞:『草原の実験』
観客賞:『紙の月』
WOWOW賞:『草原の実験』
【アジアの未来部門】
作品賞:『ゼロ地帯の子どもたち』
国際交流基金アジアセンター特別賞:『遺されたフィルム』
【日本映画スプラッシュ部門】
作品賞:『百円の恋』
スペシャル・メンション:『滝を見に行く』
【SAMURAI賞】
北野武、ティム・バートン