『湯を沸かすほどの熱い愛』駿河太郎インタビュー、「いろんな角度から“家族の愛”に触れられる」

ベルリン国際映画祭など数多くの映画祭で上映された自主制作映画『チチを撮りに』で知られる中野量太監督の商業映画デビュー作となった『湯を沸かすほどの熱い愛』が10月29日より全国公開される。

湯を沸かすほどの熱い愛

宮沢りえを主演に迎え、銭湯「幸の湯」を営む幸野家の母・双葉が余命2か月の病と闘いながらも、家族からすべての秘密を取り払うべく奮闘する姿を描く本作。そんな双葉から依頼を受け、1年前に姿をくらましたオダギリジョー扮するダメ夫・一浩を探す探偵・滝本を駿河太郎が演じる。2016年だけで映画『夢二 愛のとばしり』『真田十勇士』『シンデレラゲーム』と立て続けに話題作へ出演し、幅広い役柄でその存在感を見せつけている駿河。今回は、探偵として幸野家と関わりを持ちながらも、双葉の生き様に心を動かされ、ある“秘密”へと導いていくキーパーソンを演じた駿河に話を伺った。

──完成した作品を観ていかがでしたか?その時の心境などお聞かせください。

駿河:今年の2月くらいに初号を観させていただいたんですが、自分が出てる映画を初めて観るとき、自分の芝居が気になって泣けないことが多いんですよ。いい作品でも。これは、もちろん他の部分でも何回か涙流してるんですけど、滝本が真由という娘に一つ“秘密”を告白するシーンで、自分の芝居で泣きました。初めて観るのに、主観じゃなくて客観的にちゃんと観れるように監督が作ったんだなっていう。それは僕の部分だけじゃなく他の部分も含めてなんですけど。『すごい良い映画やな』っていう感想で、僕も大好きです。

──常に行動を共にしていた娘の真由を演じている遥(はるか)ちゃんとの共演は?

湯を沸かすほどの熱い愛

駿河:監督自身が、基本的に“芝居してる芝居”が嫌いなんですよ。だから一番初めに監督とお会いした時に『真由ちゃんと仲良くなってください』というのが僕への初めてのオーダーで。僕も実際3歳と8歳の子がいる父親なので、子供好きやし、実際に親でもあるから気持ちもわかる。真由とはクランクインする前から何回か会わせていただいて、仲良くなって『2人の関係性がちゃんと親子に見えるようにしたい』っていう思いがあったんです。それは僕もそうですし、監督の意向もそうだった。まぁ映画観たときに、自分が泣くくらいですから『ちゃんと親子になれてたなぁ』と思ってすごく良かったと思います。

──劇中でも仲睦まじく肩車したりしていましたよね。

駿河:このとき(撮影時)遥何歳やったんかな?4歳とかそれくらいなんですけど、なんせまだ子供なんで、もちろん気持ちと芝居がついてこない。それでいいんですけど、それをどう緩和したらいいかなって考えて、すごい一緒に遊んでたなっていう記憶があります。自分の芝居どうこうより、遥がいい顔してくれたらいいなと思って僕は現場にいました。

駿河:遥はすごく良い子で、初めは「パパ役の人ー!」って呼ばれてたんです(笑)。クランクインするちょっと前からやっと「パパ」って呼んでくれて、インしてからはずっと「パパ、パパ」でしたね。打ち上げとか初号試写の時も会ったんですけど、撮ってから半年以上経ってちょっとでかくなってて!久々だったので覚えてるかなと思って声かけたら、「パパー!」ってすげーキラキラした目で見られて(笑)。すごい良い関係になれたなと思いましたね。

──今回主演を務めた宮沢りえさんとの共演はいかがでしたか?

駿河:僕もともとりえさんすごい好きな女優さんで、共演させていただきたいと思っていた。今回りえさん主演の映画に関わらせてもらえて、それも素晴らしい作品に自分が入れたことはすごい大きいです。

湯を沸かすほどの熱い愛

駿河:りえさんの“すごさ”というのは、演じてるんですけど“演じていないように”見えるんですよ。そこにそのまま居てくれるというか。初めは依頼主と探偵という関係なんですが、滝本の中でどこか亡くした奥さんの影を双葉に見つけちゃったんじゃないかな。真由も一緒で、お母ちゃんの影を見つけたからすごい懐いていく。その関係を気持ちとして出させてくれたりえさんってやっぱすごい人だなと思うし、ご一緒できて本当に良かったなと思います。

──中野量太監督とご一緒してみて何か感じたことはありますか?

駿河:監督のこの作品に対する愛が、脚本や演出に込められてる。お話聞いてるとちょっとロックなところがあって、どうしてもオリジナルのこれでやりたかったらしいんです。例えば、原作のあるやつとかの監督の依頼が来ても、どうしてもこれがやりたかったって。脚本書いて、いろんなところへ行って、お金も稼がなあかんから葛藤はあったと思うんですが、2年くらいかかったと。監督の作品に対する想いっていうのが、脚本にも反映されている。りえさんがこの本を読んで「主演をやりたい」って言ったこともすごいこと。監督の想いがすごい詰まってるんですよね。「これがやりたい」っていうものじゃないと撮りたくない監督なので、こだわりや信念というものを全員が感じていたんじゃないかな。だからこういう良い映画ができたんじゃないかと思いますね。

──最後に公開を待つファンへメッセージをお願いします。

湯を沸かすほどの熱い愛

駿河:観た後に、当たり前のように思っていたことが当たり前じゃないんだなと思わせてくれる映画。僕もこれを観て「ちゃんと言葉にしよう」と改めて思いましたね。家族がいない人はこの世に生を受けた限りいない。そういう意味では、いろんな角度から“家族の愛”に触れられる映画。ぜひ観ていただきたいですね。

映画『湯を沸かすほどの熱い愛』は10月29日より新宿バルト9ほか全国公開

【CREDIT】
出演:宮沢りえ 杉咲花 篠原ゆき子 駿河太郎 伊東蒼 /松坂桃李 /オダギリジョー
脚本・監督:中野量太
配給:クロックワークス
公式サイト:atsui-ai.com

©2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会

スタイリング:種市暁
ヘアメイク:白銀一太

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