映画『卒業』などの作品で知られるアメリカの映画監督マイク・ニコルズさんが19日、心不全により死去した。83歳だった。
1931年ドイツ・ベルリン生まれ。父はユダヤ系ロシア人、母はドイツ人で、7歳の時にナチスの迫害を逃れて渡米。66年『バージニア・ウルフなんかこわくない』で映画監督デビューすると、翌年、当時無名俳優だったダスティン・ホフマンを主演に起用した『卒業』でアカデミー監督賞を受賞。ベトナム戦争を背景に青年の葛藤や鬱屈を描いた『卒業』は「アメリカン・ニューシネマ」の代表作の一つとなり、教会で花嫁を奪うクライマックスやサイモン&ガーファンクルによるテーマ曲「サウンド・オブ・サイレンス」はあまりにも有名。
『ワーキング・ガール』や『バードケージ』、『キャッチ22』など生涯で20本近い映画を監督したマイク・ニコルズさんは、コメディアン(エレイン・メイとのコンビ"ニコルズ・アンド・メイ")や舞台演出家としても実績を残した。米テレビ界のエミー賞、音楽界のグラミー賞、映画界のアカデミー賞、演劇・ミュージカル界のトニー賞の4大賞(通称「EGOT」)の全てで受賞歴のある史上9人しかいないうちの1人である。
「ショウビジネス界の大きな損失」「我々に多大な影響を与えたかけがえのない人物」と彼の死を悼むコメントをメリル・ストリープやトム・ハンクスらが次々発表している。
人と社会を観察し続けた名匠だった。