2013年公開の『夏の終わり』以来4年ぶり、満島ひかり単独主演となる映画『海辺の生と死』が7月にテアトル新宿ほかにて全国公開されることがわかった。
本作は、「私小説の極北」と評され戦後文学の傑作として現在も多くの読者を惹きつけている長編小説「死の棘」で知られる島尾敏雄と、自身も作家である妻島尾ミホが、それぞれ出会いのエピソードを綴った小説「島の果て」「海辺の生と死」の2作品を原作に、2人が出会い永遠に解くことのできない赤い糸で結ばれるまでの時間を描いた「死の棘」へと続く美しい愛の物語。
映画の舞台となるのは、透き通った青い海に囲まれ、緑濃い葉が生い茂げり、圧倒的な生命力に満ち溢れ、その美しさから“神の住む島”とも呼ばれる奄美群島内の加計呂間島(かけろまじま)。時代は1945年の太平洋戦争末期、主要人物は隊員たちと酒を飲むより島唄を習いたがる海軍特攻艇の部隊を率いる朔(さく)隊長と、彼を眩しそうに見つめる国民学校教師のトエ。ある日、トエは朔から「今夜九時頃浜辺に来て下さい」という手紙を受け取る。トエは胸の高鳴りを抑えられず、体の中に宿った狂おしいほどの愛に戸惑う。朔(さく)隊長はいつまでも下されない出撃命令を待ち、無為に日々を過ごす。敵からも見離されたような静かな島はゆっくりと終戦を迎えようとしていた。
トエを演じるのは、日本随一の演技力と圧倒的な存在感を併せ持つ女優・満島ひかり。主人公トエを演じるにあたって「この脚本と共に、私自身の本性を自らあばいてやろうと思いました。なんにせよ、一生抱えていかなきゃいけない作品になったと思います」と並々なる気概を持って本作に挑んでいる。「私のルーツは奄美大島にあります」と話す満島は、本作で島唄(奄美民謡)の歌唱にも挑戦。「撮影中、楽しめたことも、できなくて悔しかったこともいっぱいあったけど、奄美のすごさを感じる日々でした」と振り返っている。劇中、満島が披露する島唄は、UAとの共作でも知られる奄美島唄の第一人者、朝崎郁恵が歌唱指導に当たった。
この戦後文学史に残る伝説的夫婦の愛の物語のメガホンを取った越川道夫監督は、『かぞくのくに』など数多くの作品のプロデューサーとして活躍後、2015年『アレノ』に続き本作が監督2作目となる。「満島さんは、島尾ミホさんをモデルにしたトエを演じ、彼女の戦時中の恋とその時代を、激しく狂おしいまでに駆け抜けていきました。ぼくたちは、島の人々を、島にしげる木々を、島の歌を、海を、満島さんが歌えばその歌声と呼び交すように鳴き始める鳥たちを愛し、彼らとともにこの映画を作りました」とコメントを寄せている。
満島ひかり コメント
撮影中、楽しめたことも、できなくて悔しかったこともいっぱいあったけど、奄美のすごさを感じる日々でした。私のルーツは奄美大島にあります。おばあちゃんから聞いていた海や空や生き物たちの話、アダンの木の下でのロマンの話、戦争中に「あにーあにー」と叫びながら飛行機を追いかけた話。おとぎ話のような本当のことが、この「海辺の生と死」には狂おしいほど描かれていました。この脚本と共に、私自身の本性を自らあばいてやろうと思いました。なんにせよ、一生抱えていかなきゃいけない作品になったと思います。
越川道夫監督 コメント
若い頃から大切に読んできた島尾ミホさんと島尾敏雄さんの作品を、まさか自分で映画にする日がくることになるとは思ってもみませんでした。奄美群島で撮影されるこの映画の主演に満島ひかりさんを迎えることができたのも、とても幸福なことでした。満島さんは、島尾ミホさんをモデルにしたトエを演じ、彼女の戦時中の恋とその時代を、激しく狂おしいまでに駆け抜けていきました。ぼくたちは、島の人々を、島に繫る木々を、島の歌を、海を、満島さんが歌えばその歌声と呼び交すように鳴き始める鳥たちを愛し、彼らと共にこの映画を作りました。それをこの映画から感じていただけたならば、こんなに嬉しいことはありません。
映画『海辺の生と死』は7月にテアトル新宿にて全国公開
【CREDIT】
主演:満島ひかり
監督・脚本:越川道夫
原作:島尾ミホ「海辺の生と死」(中公文庫刊)/島尾敏雄『島の果て』ほか
公式HP:www.umibenoseitoshi.net
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