第68回仏カンヌ国際映画祭の授賞式が現地時間5月24日に行われ、最高賞パルムドールにフランスのジャック・オディアール監督の『ディーパン（原題）』が輝いた。また、妻夫木聡出演の『黒衣の刺客』のメガホンを取った台湾のホウ・シャオシェンに監督賞が贈られた。邦画唯一の出品作であった是枝裕和監督『海街diary』の受賞はならなかった。
世界3大映画祭の1つであるカンヌ映画祭で、是枝裕和監督『海街diary』など19作品がノミネートされていたパルムドール（最高賞）を競うコンペティション部門の結果が発表された。
『ディーパン』のジャック・オディアール監督は、これまでにもカンヌ映画祭では、デビュー作『天使が隣で眠る夜』（1994年）でカメラドール賞、二作目の『つつましき詐欺師』（1996年）で脚本賞、『預言者』（2009年）で審査員グランプリを受賞しているが、パルムドールを受賞したのは初。スリランカ内戦で家を失った3人の難民が、新たな人生を始めるべくフランスへ逃れ、治安の悪いパリ郊外の地域で苦難を乗り越えながら絆を深めていく姿が描かれる。
監督賞に輝いた台湾の巨匠ホウ・シャオシェン監督『黒衣の刺客』は、唐代伝奇小説「聶陰娘」を原作とし、台湾の人気女優スー・チーを主演に迎えたアクション時代劇。唐の時代の中国を舞台に、誘拐され暗殺者として育てられた女性が、かつての婚約者だが人民を迫害している君主を暗殺しようとする姿を、独特のリズム、繊細で美しい映像で描く『黒衣の刺客』は、今までに見たことのない武侠映画だと驚きをもって評されている。ヒロインを救う遣唐使船の日本人青年役で妻夫木聡が出演。ホウ・シャオシェンは、カンヌでは1993年に『戯夢人生』で審査員賞を受賞して以来のコンペ受賞となった。『黒衣の刺客』は、今秋日本公開予定。
妻夫木聡は同作監督賞受賞の吉報に対し、「この度は監督賞受賞おめでとうございます。侯孝賢（ホウ・シャオシェン）監督の作品に参加できたこと、このような素晴らしい賞を受賞したこと、こんな奇跡的な瞬間に立ち会えたことに幸せを感じています。一期一会の心を忘れず、これからも人や作品に出会えていけたらと思います」と喜びの声を発表した。
4姉妹を演じている綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずが公式上映前のレッドカーペットに揃って登場し、批評家からは好感をもって評価された『海街diary』だが、惜しくも受賞は逃した。また、渡辺謙が出演している、ガス・ヴァン・サント監督『ザ・シー・オブ・ツリーズ（原題）』も受賞はなかった。
(C)2015 吉田秋生・小学館／フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ
なお、日本映画では、コンペに並ぶカンヌ映画祭の公式部門「ある視点」で、黒沢清監督が『岸辺の旅』で監督賞を受賞ほか、河瀬直美監督『あん』が正式招待され、三池崇史監督『極道大戦争』が監督週間で上映された。
＜コンペティション部門受賞結果＞
【パルムドール（最高賞）】
『ディーパン（Dheepan）』ジャック・オーディアール監督
【グランプリ】
『サウルの息子（Son of Saul）』ラズロ・ネメス監督
【監督賞】
ホウ・シャオシェン監督 『黒衣の刺客』
【男優賞】
ヴァンサン・ランドン 『マーケットの法則（The Measure of a Man）』
【女優賞】
ルーニー・マーラ 『キャロル（Carol）』
エマニュエル・ベルコ 『私の王様（Mon Roi）』
【脚本賞】
ミシェル・フランコ 『クロニック（Chronic）』
【審査員賞】
『ザ・ロブスター（The Lobster）』 ヨルゴス・ランティモス監督
【カメラドール（新人監督賞）】
『ランド・アンド・シェイド（Land and Shade）』 セザール・アセヴェド監督
【短編コンペティション】
『ウェーブズ ’98（WAVES ’98）』 イーライ・ダゲール監督
【名誉パルムドール】
アニエス・ヴァルダ
via：http://www.reuters.com/article/2015/05/21/us-filmfestival-cannes-assassin-idUSKBN0O625120150521
