映画『私の人生なのに』稲葉友インタビュー
清智英・東きゆう著書の原作「私の人生なのに」が主演に知英を迎え映画化。音楽で綴る青春サクセスストーリーの今作で、知英演じる瑞穂の幼なじみ役・淳之介を演じるのは、2018年に公開された映画『N.Y.マックスマン』で映画初主演を務め、今冬公開の映画『春待つ僕ら』の出演が決定しているなど注目を集めている若手実力派俳優の稲葉友。今作の撮影秘話や劇中に登場する弾き語りのシーンについてなどを語ってくれた。
──最初にこのお話を読んでどう思いましたか?
稲葉:まず最初に“弾き語りのシーンがあるなぁ。ギターを練習しないといけないな…”と思いました(笑)。物語に関してはシンプルに凄く良い脚本だなと思って、障害を重く描いてるわけでもなく、だからといって軽んじてるわけでもなく、凄く真っすぐな視点で障害を負ってしまった方やご家族を失ってしまった人、その周りの人達を描いていたので好感が持てたというか。完成を観て改めて良い映画だなと思いましたし、最初に脚本を読んだときに僕が抱いた印象がちゃんと映像として物語を綴っていて素敵だなと感じました。
──障害を持った瑞穂ちゃんに対して自然な態度で寄り添う淳之介くんを、どんなことを意識して演じられたのでしょうか?
稲葉:ほとんどが瑞穂(知英)と一緒にいるシーンだったので、淳之介が瑞穂以外の人とどんな接し方をしているのかわからないですし、そういった部分は自分で想像して埋めていかなければいけませんでした。ただ、もの凄く考えながらというよりは“淳之介らしさ”を意識して演じていたように思います。凄くわかりやすく“淳之介らしさ”が出ているなと思ったのは、落合モトキくんが演じているアスレティックトレーナーの誉田先生と瑞穂との3人のシーン。誉田先生は瑞穂の車いすを押してあげたり、スロープでの段差を気遣ったりしますけど、淳之介はそういうことはしないんです。でも基本的にはどっちが良いとか悪いというわけではなくて、瑞穂にとっては淳之介のぶっきらぼうな優しさのほうが心地よかったんじゃないかなと。それは観ていくうちにわかってくることですが、僕としてはそういう細かいことひとつひとつをちゃんと体現できていればいいなと思っていました。瑞穂からしたら対等に扱ってくれていると思ったのかもしれませんが、淳之介は多分そこまで意識してやってないと思っていて、僕自身はそこまで考えながら丁寧に演じるように心がけました。
──稲葉さんは淳之介くんが瑞穂ちゃん以外の人ともうまくコミュニケーションが取れていると思いますか?
稲葉:最初は瑞穂もイライラしていたので、他の人も淳之介に対してイライラしているかもしれないですよね(笑)。たまたま瑞穂にはハマっただけで。でも、僕も監督も淳之介のことが凄く好きなので、愛情を持って演じたことは間違いないです。彼は過去にある辛い出来事を経験しているので、観てくださった方にはそれをふまえて色々と想像して頂けたらいいなと思います。
──先ほどおっしゃっていた弾き語りのシーンについてもお聞きしたいのですが、バンド経験があるとプロフィールに書かれていたので“ギターの練習をしなきゃ”と思われたのは意外でした。
稲葉:ギターの経験はあるんですけど、アコースティックギターでの弾き語りをしたことがなかったんです。アコギを持っているのに自分で弾いて歌うという経験がなくて。なので弾き語りのシーンは今回一番不安でした。
──どのくらい練習されたのですか?
稲葉:3週間ほど毎日2時間は練習していました。家で弾いたりアコギを持って夜中にカラオケまで行って練習したり(笑)。劇中で歌う曲を2曲作らせて頂いたんですけど、作曲者のところに自分の名前がクレジットされていて“うぉおお!”と感動しました(笑)。もちろん僕一人で作ったわけではなくて、監督が歌詞を書いて、数少ない弾けるコードを駆使して作曲したものを音楽担当の方に聴いて頂いたりして。みんなで作っていったので、自分では作曲しているという感覚はなかったんですけど、割と自由に作らせて頂いたので楽しかったです。
──作曲の才能が開花されたのですね!素敵な曲なのでもっとじっくり聴きたくなりました。オリジナル曲だけではなく爆風スランプさんの『Runner』を弾き語るシーンも出てきますね。
稲葉:コード進行を簡単なものにして頂いて、テンポも弾きやすいテンポにしたんですけどそれでも本当に難しかったです。『Runner』を歌う前後のお芝居のシーンも凄く好きで、特に“車いすで走れる”ことを教えてくれた少年は実際に脊髄の損傷で下半身不随の子なんです。あのシーンは本当に痺れて、役者がどれだけ考えて演じたとしてもこの子のこの一言には勝てないなと実感しました。今作で『Runner』が凄く好きになりましたし、観て頂いた方にとっても印象に残るシーンになればいいなと思います。
──“歌なら走れる”という言葉も印象的でした。
稲葉:歌詞で“俺たち”と歌ってるから女の子の瑞穂は歌えないとか、『およげ!たいやきくん』はたい焼きじゃないから、『だんご3兄弟』は兄弟じゃないから歌えないの?みたいなくだりのシーンの台詞を言ってるときは凄く楽しかったです(笑)。考えたら確かにそうだなと思うことばかりですもんね。歌なら走れるし“たいやき”にも“だんごの3兄弟”にもなれますから(笑)。そう考えると音楽って凄いですね。
──ちなみにストリートで歌った気分はいかがでしたか?
稲葉:淳之介が劇中で言うように凄く気持ちよかったです。なんか普段と違うじゃんという感じは僕自身もリアルに体感できて、こういうのっていいなと思いました。高校生の頃に友達と2人で駅前や女子校の前でストリートやったことがあるんです。もちろんモテたくて(笑)。当時の僕は歌うだけで、友達がギターを弾いていたんですけどそのときのことを思い出したりしました。
──話は変わりますが、昨年は舞台「すべての四月のために」で日本陸軍二等兵の役、そして『HiGH&LOW』シリーズでは女性の心を持つKIZZYなど幅広い役に挑戦されていますが、今後はどのような役者になっていきたいですか?
稲葉:役者として“どこにでもいれる人”になりたいです。ビジュアルや声など色んな要素で役にハマるハマらないはもちろんあると思うんですけど、佇まいや心持ちとしてはどんな時代のどんな世界でもちゃんといれる人でありたいなと。それから、自分のことを癖の強いタイプの役者ではないと思っていて、そんな僕がちょっとぶっとんでいる役を演じたら逆に面白いんじゃないかと思ったりもします。
──KIZZYは割とぶっとんでいる役でしたけど凄くハマっていましたよね。
稲葉:KIZZYは良い意味でやりたい放題させて頂いて楽しかったです(笑)。あの役で僕を知ってくださった方も多いですし良い経験になりました。イケメンが出てるから観るという感じの方も映画好きも色んな層の人が観てくださっていたので嬉しかったです。ああいう役も今後需要があれば是非やっていきたいです。
──では最後に映画を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。
稲葉:観終わったあとに、いま目の前にあることや足下に落ちているような些細なことを認識したり再確認するきっかけになれば凄く嬉しいです。どの世代の人でも何かひとつは共感できるものがある作品だと思うので、是非映画館でご覧頂ければと思います。
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映画『私の人生なのに』は7月14日(土)より新宿バルト9ほか全国公開
(C)2018『私の人生なのに』フィルムパートナーズ
取材:奥村百恵/撮影:小宮駿貴