映画『さよならくちびる』初日舞台挨拶が31日、都内・TOHOシネマズ新宿にて行われ、小松菜奈、門脇麦、成田凌、塩田明彦監督が登壇した。
会場に集まった観客約450名から万雷の拍手が送られる中、笑顔で登壇した面々。鮮やかな花柄のドレス姿を披露した小松と、シックな黒のドレスに身を包んだ門脇。先日CDデビューも果たした、劇中の人気ギター・デュオの“ハルレオ”の登場に、「レオ!」「ハル!」と2人を呼びかける声が飛び交い、場内は一瞬にして黄色い歓声に包まれた。
会場に集まった多くの報道陣からフラッシュの嵐を浴びながら、少し緊張した素振りを見せた小松は、「お話をいただいてから、ギターと歌をずっと練習してきて、正直『3曲も成立するのかな…』という不安な日々もありました。でも、撮影中に地方を巡る中で、この3人でいる楽しい時間であったり、幸せな日々が沢山あったので、初日を迎えられてとても嬉しいです」と笑顔で挨拶。続く門脇も「とても感慨深い想いです。プロモーション期間中も、3人でいる時間がすごく好きなことを改めて感じました。この3人だからこそ作り出せたハル・レオ・シマだったのかなと。皆さんにも、この3人を愛してもらえると嬉しいです」と笑顔で頭を下げた。一方、そんなハルレオの付き人兼ローディとして支えるシマ役を演じた成田も本作を「みんなの想いの詰まった映画」として、塩田監督とともに、感慨深い表情で改めて公開への喜びと感謝を述べた。
本作の撮影期間は、昨年6月末~約1か月間。公開は約1年越しとなったが、撮影を振り返った小松は「北海道でのライブシーンの撮影中、空き時間に3人でなんとなく演奏と歌を合わせたんです。その時は、リラックスしていたこともあって、ささやかながら感動したのを覚えてます。最初の頃は何にもできなかったので、頑張って良かったなって。」と述懐。この時間は小松以外の2人にとっても想い出深い瞬間だったようで、成田が「3人だけの空間だったよね。僕も感動したのを覚えています。小松さんとの初対面の時、お互いギター初心者としての苦しい想いを感じながら、練習後に「お疲れ様です」って言い合ったのを思い出したりしました(笑)」と明かすと、門脇も笑みを浮かて頷いた。
そんな門脇は、想い出深いシーンとして本作の見どころの一つである【ハルレオのライブシーン】について言及。「会場にお客さんが入った瞬間に、1人で練習している時とは全く“歌う意味”みたいなものが変わった気がして。『来てくださった方の為に歌うんだ』って感じた瞬間が、とても印象的でした」と語り、小松も「ライブはお客さんの反応がリアルに見える気がしました。アーティストさんはこんな思いだったんだ、と少し感じさせてもらった気がします」と、門脇と同じくライブシーンの撮影が強く印象に残っていることを明かした。
一方、本作の監督のみならず、脚本・原案を務めた塩田監督は、「印象的なエピソードをどれか一つを挙げるのは難しいですね…」と唸りつつ、「音楽の話で言うならば、ギターを弾けない方々に、3曲も無茶ぶりしたことでしょうか(笑)」と回答。「実は、その無茶ぶりに各所から悲鳴も聞こえていて…。僕自身『そりゃ難しいよな』って思った瞬間もあったのですが、極めて厳しく、妥協せず、3曲のままでお願いしますと押し通したんです。御三方に『1分1秒惜しまず練習しろ』と間接的に言い続けたのも、実は辛かったんですよ」と懺悔した監督だったが、成田が「もう少し簡単にしてもらえないかと注文したら、かえって難しくなって戻ってきたじゃないですか(笑)」と突っ込まれると、会場からは笑いが起きた。
そのままトークは、ハル(門脇)、レオ(小松)、シマ(成田)による劇中の“三角関係”についての話題へ。本作で描かれる、複雑な男女の三角関係について、小松と門脇は「愛おしい」と口を揃え、「ずっと喧嘩はしているんだけど、3人でいるからこその空気感、三角関係がハル、レオ、シマにはあって。そういう関係性は良いなって思います」(小松)、「ハル、レオ、シマを観ていて、大事すぎるから難しい、うまくいかないこともあるんだなって感じました。3人とも不器用ですし、簡単な一方通行の三角関係じゃない。だけどすごく愛おしいんです」(門脇)と、思い思いにハル、レオ、シマの関係性の魅力を語った。一方の成田も、「ハル、レオ、シマは“1対1対1”だから、不器用で特殊な愛情同士の関係性だけど、成立しているのかなって思います」とコメントしつつ、「最近テラスハウスを観ているんですが、あんまり“男1対女2”の構造はうまくいっていない気がするんですよね(笑)」と独自の理論をかざし、観客の笑いを誘った。
さらに、「劇中のような三角関係に自身が置かれたら?」と聞かれた三人。「好きな人がいても、安定性を求める気がする」(小松)、「私も引きますね。3人の関係性を大事にしちゃいます」(門脇)と答える二人に対して、「性別の違いもあるし理解できないところもあるとは思うけど、やっぱり自分もシマのように2人の間に入って中立になる気がします。2人にちょっと小馬鹿にされる感じになるかなと。現に、小松さんと門脇さんにはちょっと小馬鹿にされていると思います(笑)」と成田が冗談を交わすと、小松と門脇は笑顔で否定していた。
最後に、観客に向けたメッセージを語った面々。「この映画は、秦さん、あいみょんさんが一から作り上げた素晴らしい曲があったからこそ、産まれた作品。何度聴いてもいい曲です。最初に聞いた時の感動を今でも忘れません。淡々とした中で感じられるリアルな感情であったり、色んなことを感じられる映画です。この作品を通して、前向きな気持ちになってもらえたら嬉しいです」(小松)、「青春映画であり、音楽映画であり、多面的に楽しめる映画だと思います。大事な人を大事にする難しさ、普段忘れがちな感情のすれ違いみたいなものを、塩田監督の優しい眼差しで丁寧に丁寧に描いています。皆さんに愛してもらえると嬉しいです」(門脇)、「ジャンルを1つに絞るのがもったいない作品。ただやっぱり音楽映画かな。3人の軸ができたのも音楽ですし、今回、音楽の持つ力を改めて実感しました。シマは夢をあきらめた役ですが、僕自身も過去夢を諦めたこともあるので、そういう色んな思いを込めて作られた本作は、共感とは少し違うかもしれないですが、皆さんが好きに感じて、好きに観てもらえると嬉しいです」(成田)。
最後に、「小松さん、門脇さん、成田さんのこれまでとは違った魅力を惹きだせている作品だと思う」と豪語する塩田監督から、「本作は“不器用な人たち”というのが重要。世の中を見つめる時に、生きるのがへたくそな人の立場に立ちたいという想いがありまして。実は、自分もこう見えて人見知りだし繊細なんです(笑)ハル、レオ、シマも何かを手に入れようともがいているんだけど、そのやり方がすごく不器用なんです。でも、生きるのが下手くそなんだけど、七転八倒して頑張っている姿に共感してほしいし、彼らの生きざまを愛おしく感じてほしい」とのメッセージとともに、「この映画は決して大きな声で皆さんに何かを訴える映画ではなくて、静かにささやくように語りかけるもの。そのささやきに込めた想いや魂が、少しでも皆さんに届けばいいなと思います」との言葉で締めくくられ、イベントは盛大な拍手に包まれながら終了した。
映画『さよならくちびる』は全国公開中
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