『龍三と七人の子分たち』下條アトムインタビュー「変なものは脱ぎ捨てて裸になって臨んだ」

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北野武監督が、これまでの作風とは一風異なるコメディタッチのエンターテインメントに挑戦した『龍三と七人の子分たち』のDVDとBlu-rayが2015年10月9日(金)よりリリースされる。

ヤクザを引退した元組長とその子分たちが、オレオレ詐欺や悪徳訪問販売などの犯罪行為を働く若者たちを成敗しようと世直しに立ち上がる様を描いた本作は、2015年4月25日に公開されるやいなや『アウトレイジ ビヨンド』(2012)を抜き、北野武監督作品史上興行収入歴代第2位のヒットを記録した。

その中で悪徳詐欺集団の下っ端・徳永に扮した下條アトムは、相手によって態度をコロコロ変えるような卑近な小悪党を若々しく絶妙なニュアンスで演じ、随所に印象に残る存在感を発揮。人気TVドキュメンタリー番組「世界ウルルン滞在記」で披露していたあの独特で親しみ深いナレーションなど柔和なイメージとはまた一味異なる役柄に挑んだ下條に、初参加となる北野組の印象やベテラン俳優が集う現場の様子、撮影時の裏話などを伺った。

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──元ヤクザの面々が義理や人情を重んじる、ある種チャーミングさもあるキャラクターであるのに対し、下條さんが演じられた徳永は義理も人情もあまりない小悪党で、一般的に共感のできにくいキャラクターだったかと思いますが、そういった人物に対してどのような役作りをなされたのでしょうか。

下條 脚本の中であのキャラクターはすでに出来上がっていたので、具体的な役作りというものは特に行いませんでした。小悪党みたいな役を演じてみようとかいうのではなく、最初にパチンコのシーンからはじまるので、最近のパチンコ屋を体験いたしまして、気付いたら5万円程、勉強代に使ってしまいました(笑)。

──事前に役を固めていたというよりも、現場で実際に動いてみて、という感じだったのでしょうか。

下條 そうですね、特に北野監督作品なので、変に色々なものをくっつけて、自分が着込んで現場に持って行くのはやめようと思いました。どれだけこの作品の中で裸になれるかなというのが勝負かなと思って臨みました。北野監督の深い洞察力の前では、どうせバレてしまうでしょうし、むしろ変なものは脱ぎ捨てていこうと思いました。

──すべてアドリブで反応していくような感じですか。

下條 アドリブってことではなく、その瞬間を大事にしてらっしゃるということです。それでもし何か変な風にやっちゃったとしても、それはそれでいいんだよ、と。そのやり方がどうだからと細かくやるのではなく、「はい、オッケー」と。その辺は非常にスマートな方でした。だから逆に、ぼくらは「よかったの? これで」と思ってしまうこともありましたが、だけどやっぱり出来上がった作品を見ると、納得でした。

──例えばパチンコのドル箱で藤竜也さんから殴られるシーンなどは本番一回だけだったのでしょうか。リハーサルでも何度かやられたのでしょうか。

下條 手作りの箱がふたつしかなかったので、何度もできない状況だったようです。だけど一度本番をやった時に、ぼくがパチンコ屋のイスに引っかかって上手く転げられなかったので2回目でOKが出ました。本当は頭に防具をつけてるんですが、その状態でバツンとやられても結構痛い。飴で作ったこんなデカくて重いものが当てられるわけですから、初日から大変でしたよ。元々役者なんて大体Mなんですけどね(笑)。北野作品では前にうちの親父も出演させていただいたんですけど(注:故・下條正巳氏は『キッズ・リターン』に出演)、ビートたけしさんとの共演作『教祖誕生』では親父も結構殴られて蹴られてるんですよ。だから親子揃ってドMになりました(笑)。

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──北野監督は現場ではどのような印象でしたか。

下條 現場に入る前にどういう感じだろうって想像はあまりしていませんでした。早く撮る人だよとか、監督はあまりお話しされないよとか、何となくチラチラとは聞いていましたが、あまり先入観を持つと、監督とお話する時も何がいいのかなとか、色々考えるものが余計になっちゃったりするので、ストレートにそのまま感じたことをやろうと心がけました。でも、予想していた以上に現場は早かったですね。「えー、もう本番なの!?」ってぐらい。リハーサルはあるけれども、ほとんどないに等しい状況でした。メイキング(DVD特典収録)に少し映っていますが、役者のみなさん「え、こんなに何も話さないの?」と若干戸惑っていたと思います。それも北野監督とスタッフの信頼関係あってのなせるワザだと思います。

──キャラクター的にこうしてほしい、ああしてほしいみたいな監督からの指示も特になかったのでしょうか。

下條 北野監督は本作でセリフやコントのようなリズム──藤(竜也)さんはセッションとおっしゃっていましたが──そういう感じを大事にしてらしたので、監督は何十年も経験のある役者のみなさんを信頼し、キャスティングした段階でこの人はこういう人だとわかってらしたと思うので、こうしてくれああしてくれというのはそんなにはなくて、そのままやって下さいというのが多かったような気がします。でもぼくは時々ダメ出しいただきましたけどね、助監督の方から「それはやめといてください」と(笑)。

──今回、監督はセリフを大事にされていたということでしたが、他の共演者同士でこうやっていこうなどのやりとりはあったのでしょうか。

下條 ぼくのところはそんなになかったです。たぶん全体的に話し合うヒマがなかったですね。監督がいらっしゃって撮り方を決めるとすぐに撮影が始まるので、こうやろうとか提案する時間すらない感じで、撮影は非常に早かったですよ。こうだのああだの、君はこういう役だからもうちょっとこうやった方がいいと言うのではなく、本当にその場のセッション、その場で感じたことをバンバン撮っていく。ある意味ではドキュメンタリーと言えるかもしれないですし、その瞬間に出るものを映したいというようなニュアンスを感じました。たぶん監督は、やり方としてそういうものを大事にしてらっしゃるのだと思いました。

──現場はどのような雰囲気だったのでしょうか。

下條 皆さん緊張の中でも、男同士和気藹々という感じでした。ぼくがイジられてるのをみんなが笑って楽しくやっていました。特に中尾彬さんは劇団の先輩ということもあり、中尾さんがぼくをイジって、ぼくはイジられてみたいな感じでお世話になりました(笑)。

──DVDで観ていただく際に、ここのシーンに注目してほしいなどありますか。

下條 もちろんこの映画がどんな風に作られているのか知らなかった、見えなかったシーンでいっぱいです。殴られてばかりの役柄なので、見てほしくないところの方が多いかな(笑)お願いだから止めないで見てね(笑)女々しいものですから、自分で見ると「あー、ヤダな」っていうのがほとんどですから。ぼくじゃないところではかっこいいところや素敵なところはたくさんありますけど。

──ナレーターを務められた、特装限定版の特典DISCに収録されるメイキング映像「北野流 ジジイ映画の作り方」についてもお聞かせください。

下條 もしかしたら本編より面白いんじゃないの!? ってぐらい充実しています(笑)。だから映画を観た方はもちろん、メイキングだけでも楽しめると思います。ぜひよろしくお願いします。

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【作品情報】
『龍三と七人の子分たち』
監督・脚本・編集:北野 武
音楽:鈴木慶一

出演:藤 竜也、近藤正臣、中尾 彬、品川 徹、樋浦 勉、伊藤幸純、吉澤 健、小野寺 昭、安田 顕、矢島健一、下條アトム、勝村政信、萬田久子、ビートたけし

「特装限定版」 ※2枚組
Blu-rayスペシャルエディションエディション(BD+DVD)¥7,000(税別)
DVDスペシャルエディション(DVD+DVD)¥6,000(税別)

 

 

 

 

 

 

 

「通常版」
Blu-ray¥4,800(税別)
DVD ¥3,800(税別)

 

 

 

 

 

 

 

発売・販売元:バンダイビジュアル 日本/2014/111分
公式HP:http://www.ryuzo7.jp
(C)2015 『龍三と七人の子分たち』 製作委員会

映画『龍三と七人の子分たち』DVD&Blu-rayは、10月9日(金)よりリリース

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