「家族」という普遍的なテーマを扱いながら、観客の心に確実に爪痕を残す、話題の監督たちによる見逃し厳禁な「家族映画」をご紹介!
2019年5月、第72回カンヌ国際映画祭で韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が最高賞のパルムドールに輝き、前年の『万引き家族』に続いて、2年連続家族をテーマにしたアジア映画の受賞が大きな話題に。以降、今年から来年にかけての公開作には、世界規模で印象的な「家族映画」が続いていることをご存じだろうか?
“いま”を描く題材として、世界の映画人がテーマに取り上げる「家族映画」、いずれもメガホンを取るのは、新作が公開されれば話題沸騰必至の注目監督ばかりだ。さらに、どれもほのぼのしたファミリームービーとは無縁。「家族」という普遍的なテーマを扱いながら、観客の心に確実に爪痕を残す、話題の監督たちによる見逃し厳禁な「家族映画」をご紹介!
若き巨匠ポン・ジュノが韓国映画初のパルムドール受賞!
貧しい一家が富豪一家に“寄生”する──
映画『パラサイト 半地下の家族』2020年1月公開
『殺人の追憶』『母なる証明』『グエムル -漢江の怪物-』などを手掛け、韓国の若き巨匠として絶大な支持を集めるポン・ジュノ。最新作にしてパルムドールを獲得した本作で描かれるのは、相反する2つの家族の姿だ。全員失業中で半地下の住宅で暮らす貧しい一家の長男が、裕福な一家で家庭教師として働くことになったことから、事態は予期せぬ悲喜劇へと展開していく。
貧しい一家の長男役で主演を務めるのは、ポン・ジュノと4度目のタッグを組む名優ソン・ガンホ。韓国映画界のゴールデンコンビが展開する、いま世界中で問題視される貧富格差への批判を含んだ、一級のブラックコメディとしての「家族映画」から目が離せない!
アカデミー賞脚本賞受賞の鬼才ジョーダン・ピール最新作
ある家族の前に自分たちとそっくりな“わたしたち”襲来!
映画『アス』2019年9月6日(金)公開
初監督作『ゲット・アウト』で自ら手掛けた脚本がアカデミー賞脚本賞を受賞し、一気に注目のクリエイターとなったジョーダン・ピール。監督2作目となる『アス』では、自分たちと同じ顔の“わたしたち”に突如襲われる一家の姿を描くという、ひとクセもふたクセもありすぎる「家族映画」を誕生させた。狂暴な一家の分身たちは、“本家”を滅ぼして生活そのものを乗っ取ろうと執拗に攻撃してくるが、やがて自分たち家族だけでなく、世界規模で分身が発生していることが発覚し…。
一家の母親役で主演を務めるのは、『それでも夜は明ける』でアカデミー賞助演女優賞を受賞した実力派ルピタ・ニョンゴ。確かな演技力で本家と分身の二役を熱演し、強烈な設定とビジュアルが印象的な本作においてリアルな恐怖を与えている。予想だにしない衝撃のラストまで、息もつかせぬ怒涛の展開が特徴の異色の「家族映画」として、見逃せない作品となっている。
白石和彌監督が傷ついた“家族の再生”を描く
たった“一夜”で激変した彼らの人生とその行く末は──
映画『ひとよ』2019年11月8日(金)公開
メガホンを取るのは、『凶悪』で国内各映画賞を総なめし一躍脚光を浴びて以降、毎年のように作品・監督・俳優賞を中心に国内賞レースを席巻し名だたる俳優たちがいま最も出演を熱望する監督として熱い注目を集める、白石和彌。そんな白石監督が最新作で描くのは、血のつながった家族の物語。最愛の子供たちを守るため、暴力を振るう夫を殺め罪を背負うことを選んだ母が、15年の月日を経て三兄妹のもとへ帰還。15年前に母が起こした、たった一夜(ひとよ)の出来事により人生を狂わされた三兄妹は、葛藤と戸惑いのなか母と再会するが、バラバラになった家族の絆を取り戻すことはできるのか──。
桑原裕子率いる劇団KAKUTの舞台「ひとよ」を映画化した本作は、その重厚なドラマはもちろん、人気実力派キャスト陣の共演でも話題に。15年前の事件に縛られ家族と距離をおき、東京でフリーライターとして働く次男・雄二を演じる佐藤健。町の電気屋に勤務し、三兄妹で唯一自身の家庭を持つが夫婦関係に思い悩む長男・大樹に鈴木亮平。事件によって美容師になる夢を諦め、スナックで働きながら生計を立てる末っ子の妹・園子に松岡茉優。母親・こはるを、日本を代表する女優・田中裕子が演じることで、その“演技合戦”にも熱い注目が集まっている。
シリアスなテーマを扱いながらも、久々に再会したぎこちなくもどこかおかしな家族像や、リアルな兄妹の距離感など、名優たちの作り上げる家族の姿は必見。観終えた後は、思わず自身の家族や兄弟に想いを馳せてしまうこと間違いなし。自分ごとにしたくなる「家族映画」として、今秋押さえておくべき1本だ。現在の映画界のトレンドともいえる「家族」というテーマを、さまざまな作品を通して体感してみてはいかがだろうか。
映画『ひとよ』は11月8日(金)より全国ロードショー
(C)2019「ひとよ」製作委員会