行定勲監督が作品に込めた想いが明らかに!『ピンクとグレー』Q&Aイベント

芸能界の嘘とリアルを現役アイドルの加藤シゲアキ(NEWS)が描いた問題作を、初主演・中島裕翔を迎え、『GO』『世界の中心で、愛をさけぶ』の行定勲監督が映画化した『ピンクとグレー』。28日、東京国際映画祭Japan Now部門での本作上映後に、行定監督登壇による観客とのQ&Aセッションを実施した。

1028『ピンクとグレー』③本編上映後には、満席となった会場から大きな拍手が起こり、行定監督が舞台に姿を現すと、一気に会場の温度はヒートアップ!さらに本作で音楽担当の半野喜弘と、撮影担当の今井孝博が駆けつけ、2人が見守る中、イベントはスタートした。

<イベントレポート>
MC:映画を拝見しましたが、不思議な感じがしました。まず、この作品を撮ろうと思ったきっかけは何だったんですか?

監督:原作者はNEWSの加藤シゲアキくんで、彼はいくつか小説を書いているんですね。僕は彼の作品を読んでいたんですが、加藤くんのデビュー作である「ピンクとグレー」の映画化のお話をいただいたんです。この小説を読んだ時、エロスを強く感じたんですよね。男と男、そして姉と弟の。今の時代にこの濃密で濃厚なエロスをどうやって表現したらいいのか、浄化したらいいのか考えました。今まで僕は生や死というものを撮ってきました。加藤くんが書いた本小説も生と死が中心で、死んだ人ではなく、残された人の心情、そしてどう向き合っていくかが描かれていたので、自分の映画に引き付けやすかったですね。

自分のオリジナルだとそういったテーマを描く時、不可解で曖昧になってしまうんです。でも他人が書いたものに対して、定義付けがしたくなるんですよね。映画の中で描かれるのは、生きていることの残酷さ、死ぬ時のピュアさ、そして死者を忘れたくないという気持ちもあるのに、忘れたいという気持ち。結局、死者に足をすくわれてしまっているんです。

ごっち(中島)の姉は、ダンス発表会の演技中に亡くなるんですが、彼女の潔さやけじめのつけ方は不条理でふがいなくも感じますが、ごっちは彼女に憧れをもって、圧倒的な想い秘めているんですね。だから僕は、追随する人物を描いてみたかったです。

MC:原作がある作品ですが、シナリオを書く時はどうでしたか?

監督:明確にしないようにしましたね。今回、原作を忠実に描いたというよりアレンジした部分もあるんです。原作と同じにしなかった理由は、違う着地点が見えたらから。『ひまわり』という作品を撮った時も死んだ人の気持ちを考えたんですが、
結局答えが出なかったんですよね。僕は死者を美化する気はないんです、だから死者には届かない想いを理解するしかないのかなと思いました。自分のオリジナルだとできないんですけどね。(笑)だから、『ピンクとグレー』はしっかり向き合える良い機会になりました。

MC:本作は『ピンクとグレー』というタイトルですが、どんな意味があるんでしょうか。

監督:本作は、映画タイトルに色がついていますよね。色が重要なポイントでもあって、色で表現することで鮮やかな世界と色褪せた世界があると解釈していいのかなと思ったんです。

MC:映画の前半と後半はガラリと雰囲気が変わっていますよね。前半は、久しぶりに行定監督が撮る“青春映画”といった感じでしたが、難しかったことはありますか?

監督:前半はダメ監督が撮る“青春映画”テイストにしました。(笑)自己批判も込めて、わざとらしい感じにもしました。ごっち(中島)とりばちゃん(菅田)の幼馴染のサリー(夏帆)が2人のもとを去っていくシーンは、大林宣彦監督の『転校生』をまるパクリしています。(笑)下手な『転校生』を撮っている感じですね。

1028『ピンクとグレー』①<Q&Aセッション>

Q:本作を撮る際、キャラクターのアイデンティティについて何か考えましたでしょうか。また監督ご自身のアイデンティティは?

監督:僕は常に自分が何者なのかわからないですね。アイデンティティは他人が決めるものだと思っています。人に言われて気付くというか・・・映画を撮る時、原作が作品で原作者に登場人物について聞いてもきっと答えてくれないと思います。
だから自分でキャラクターについて考えて、見つけ出したものを映画に出ていると思うんですね。『ピンクとグレー』の登場人物は、自分のアイデンティティがわからないところからスタートして、突き詰めていってこれから始まる様子を描いています。

Q:映画に登場する中島くんがとても綺麗でした!

監督:特に前半、中島くんはすごいと感じるシーンがありました。映画の中で「Hey Girl」という曲のPV撮影シーンがあったのですが、15分くらいでものの見事にキレキレにやりきったんですね。恥ずかしがらずにキメ顔でアピールできてしまうというか、プロフェッショナルだと思いましたね。中島くんはもちろん素晴らしかったですが、菅田くんも本当に素晴らしかったんです。彼は今、日本の映画界が一番欲しているような存在。2人ともお互いをリスペクトしていることが伝わってきたし、撮影中は本当にいつもベタベタしていましたよ。(笑)結果、映画の中でもその関係が上手く出ていたと思います。

Q:原作者の加藤さんから映画の感想は聞いていますか?また原作を大幅にアレンジしていると思うのですが、その点について加藤さんから何か言われましたか?

監督:実はまだ感想は聞いていないんです。加藤くんは、映画が大好きでよく観る人なんですね。今回、実験的なことも多いのですが、きっとそんな彼なら理解してくれると思います。原作を大幅にアレンジしていることを知った加藤くんは、「監督の本気度が伺えました!」と言ってくれました。(笑)原作を映画化の時、人によっては自身の作品愛もあると思いますし「一語一句変えないでほしい」と言う方もいると思います。その分ハードルが上がりますが、逆に燃えますけどね。(笑)でも加藤くんの場合は、何も言わない人。僕は両方ありだと思っています。それに、原作をちゃんと映画化できる!と思わないと預かれないですよね。

映画はオリジナルで作るべきとも思いますが、原作を映画化することはとても大変ですが、面白いと感じています!

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【STORY】
大人気スター俳優・白木蓮吾が、突然、死んだ。第一発見者は幼い頃からの親友・河田大貴。蓮吾に何が起きたのか?動揺する大貴は、6通の遺書を手にする。遺書に導かれ、蓮吾の短い人生を綴った伝記を発表した大貴は、一躍時の人となり、憧れていたスターの地位を手に入れる。初めてのキャッチボール、バンドを組んで歌ったこと、幼馴染のサリーをとりあった初恋・・・。いつも一緒で、いつも蓮吾が一歩先を進んでいた―。輝かしい青春の思い出と、蓮吾を失った喪失感にもがきながらも、その死によって与えられた偽りの名声に苦しむ大貴は、次第に自分を見失っていく。なぜ、蓮吾は死を選んだのか?なにが、誰が、彼を追い詰めたのか?蓮吾の影を追い続ける大貴がたどり着いた“蓮吾の死の真実”とは―。

2016年1月9日(土)全国ロードショー
配給:アスミック・エース
(C)2016「ピンクとグレー」製作委員会  

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