長い下積み生活を経て、舞台、テレビ、映画と幅広くブレイクした唐沢寿明。さわやかなトレンディスターとしてテレビで人気を集める一方で、舞台では野田秀樹、三谷幸喜、蜷川幸雄ら名演出家の話題作で活躍。映画でも日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し、三谷監督のコメディやサスペンス大作『20世紀少年』シリーズで話題を集めた。最近は俳優の年輪を感じさせる『イン・ザ・ヒーロー』や最新作『杉原千畝 スギハラチウネ』と、ますます深みのある演技を見せる唐沢の、その魅力の秘密に迫る。
映画・テレビ・舞台と幅広く活躍する実力派スター
唐沢寿明の役者人生は最初から順調だった訳ではなかった。無名時代にはスーツアクターなどの長い下積みを経験。さわやかな青年イメージの路線に変更して人気が出始め、1992年に話題のTVドラマ「愛という名のもとに」のエリート好青年役で一気にブレイク。フジテレビの月9枠「妹よ」などでトレンディスターとして人気を集めた。
同じ時期に舞台でも、人気の演出家・野田秀樹の「から騒ぎ」(1990年)、「真夏の夜の夢」(1992年)と話題作に続けて出演。さらに唐沢は、舞台・テレビで当時気鋭の脚本・演出家だった三谷幸喜の「出口なし!」に主演。宮本亜門演出のミュージカル「熱帯祝祭劇マウイ」、そして巨匠・蜷川幸雄の舞台にも「マクベス」を始め多く出演し、舞台でも名演技を披露している。
映画でも、1991年に『おいしい結婚』『ハロー張りネズミ』2作品で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。95年には『君を忘れない』で木村拓哉、反町隆史らと共演し、特攻隊隊長となったエリート士官役で、若き命を奪う戦争への思いを鮮やかに演じた。シリアスな役の一方で、三谷幸喜の初監督コメディ『ラヂオの時間』や『みんなのいえ』に主演し、以降は三谷映画の常連に。蜷川幸雄とも舞台が縁で、四谷怪談を元にした監督作『嗤う伊右衛門』(2004年)に主演し、伊右衛門とお岩の凄絶で哀しい愛の物語を演じた。そして製作費60億円を投じた『20世紀少年』3部作では悪と戦う主人公ケンジ役。またアニメ『トイ・ストーリー』シリーズではウッディの声で出演し、雰囲気がそっくりと観る人を魅了した。
50歳を過ぎても『イン・ザ・ヒーロー』のスーツアクター役で、高さ8.5mの危険なダイブや刀での大立ち回りを吹き替えなしで演じ、真剣勝負の役者魂を見せる。仕事があれば一生懸命なんでもやる。しかし掛け持ちはしない。コンテや衣装で文句を付けない。作品全体の中で俳優はその一部であり、自分の出来るところを完璧にやる、と常にプロ意識に徹したその生き方は、凄いの一言に尽きる。
『ラヂオの時間』(1997)
『20世紀少年』シリーズ(2008〜2009)
『イン・ザ・ヒーロー』(2014)
唐沢寿明の最新映画をご紹介!
現在公開中の唐沢寿明の新作『杉原千畝 スギハラチウネ』。
第2次世界大戦のさなか、ナチスに迫害される6000人ものユダヤ人難民に日本通過ビザを発行し、彼らの命を救った外交官・杉原千畝を演じる。リトアニアの日本領事館に赴任した杉原は、ユダヤ人難民を救うため日本政府の命令に背き、自らと家族の危険を覚悟しながら、ビザを発行し続ける。彼の波乱に満ちた半生と、最後まで信念を貫いた物語を、資料が殆どない中で、妻の著書や残された肉声を元に真摯に演じた唐沢の熱意が見逃せない。そして杉原を支える妻役を『嗤う伊右衛門』でも妻役だった小雪が演じる。深い絆で結ばれた夫婦愛のドラマにも注目したい。
PROFILE
唐沢寿明(からさわ としあき)
1963年東京都出身。高校を中退して東映アクションクラブに入り、役者を目指す。しかし「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」の特撮シリーズにスーツアクターとして出演する他、照明など裏方もこなす下積み時代が長く続いた。尊敬するスターはブルース・リー。自動車愛好家としても知られており名車を所有。A級ライセンスを持ちレース参加の経験もある。妻は7年越しの交際を経て1995年に結婚した山口智子。
映画情報
『杉原千畝 スギハラチウネ』
全国ロードショー公開中
公式サイト:http://www.sugihara-chiune.jp
【監督】チェリン・グラック
【出演】唐沢寿明、小雪、小日向文世、塚本高史、濱田岳 ほか
(2015/日本)
©2015「杉原千畝 スギハラチウネ」製作委員会