母親を亡くしてしまった父親と子ども(姉、弟)──お母さん猫に先立たれた3匹の猫の家族を描いた3DCGアニメーションのショート・フィルム『Trois Petits Chats(三匹の子猫)』を紹介します。
母親に先立たれ悲しみに暮れながらも子どもの面倒を見るお父さん猫と明るく気丈に振る舞う子ども猫たちの家族をキュートな絵柄で描いた6分間の本作は、心が痛くなるようなとても悲しくつらいお話ではありますが、大切な人を失う苦しさや死と向き合うこと、それをなんとか乗り越えようとする姿を表現しています。
現実にある話をモチーフにフランスの4人の学生が2003年に製作した『Trois Petits Chats』は、世界中で様々な短編映画祭で賞を受賞。病気や事故で親や兄弟を失った悲しい環境にいるたくさんの子どもたちをもっとサポートしてほしい、という願いを込めて作ったそうだ。
父と姉、まだ幼い弟の三匹の猫が静かに暮らしていた。妻を亡くしてからというもの悲嘆に暮れる父親だったが、姉と弟のふたりは健気に振る舞い、父を元気づけていた。しかし、そんなある日、姉が体に異変をきたし入院してしまう……。
重病にかかった姉の体がひび割れていく、という体の痛みと同時に心の傷をアニメーションならではの方法で表現するアイディアが素晴らしい。
そして、幼く、まだ死の意味を完全には理解していない、どう気持ちに整理をつければよいのかもわからない小さな弟が、ずっと大切にしていた母の遺したぬいぐるみに、そのどうすることもできない感情をぶつけるラストシーンも秀逸です。安易なハッピーエンドを用意しない現実への誠実なまなざしがあると思います。