『羊の木』吉田大八、主演・錦戸亮を絶賛「普通の人を演じる天才的な能力がある」

韓国・釜山で開催中の第22回釜山国際映画祭で「アジア映画の窓」部門に正式招待された映画『羊の木』。10月15日(日)にワールドプレミアを実施し、釜山国際映画祭に初参加となった吉田大八監督が登壇。観客からのQ&Aに応えた。

羊の木

本作は、殺人などの凶悪犯罪に手を染めた元受刑者たちを受入れた港町で起こる数々の事件、住民と元受刑者の不協和音、そして人間が本能的に犯罪者に感じる生理感覚を描き出す問題作。山上たつひこ×いがらしみきおがタッグを組んだ原作は2014年文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した。吉田大八監督が「普通の人の輪に入り込む異物」という極限の設定と、その異物が元殺人犯であるというセンセーショナルなテーマを軸に、原作を大胆にアレンジ。全く異なる新しいエンディングを創り出す。

主人公のお人好しな市役所職員・月末一を吉田組初参加となる錦戸亮が演じ、共演に、町に帰郷した月末の同級生・文(あや)を木村文乃、傲慢ですぐ人に絡む釣り船屋・杉山勝志役に北村一輝、色っぽく隙のある介護士・太田理江子役に優香、人見知りで几帳面すぎる清掃員・栗本清美役に市川実日子、大人しく気弱な理髪師・福元宏喜役に水澤紳吾、強面で寡黙なクリーニング屋・大野克美役に田中泯、無邪気で好奇心旺盛な宅配業者・宮腰一郎役に松田龍平が扮する。

羊の木

400人もの観客で満席となった会場に登壇した吉田監督は「『羊の木』は日本でもまだ一般のお客さまにはご覧頂いていないので、一番最初にここ韓国の皆さんにご覧頂けることを光栄に思います」と挨拶。主演を務める錦戸について、「錦戸さんとはこの映画ではじめて会いました。彼はミュージシャンでもありますが、すごく良い意味で普通の人というか、普通の雰囲気を持っていると思いました。映画の中では個性溢れる人物に囲まれて、その真ん中でほぼ普通の人としてひたすらいろんな状況に対応し続ける。彼の表情の一つ一つに観客が気持ちをのせていくような映画になっているし、撮影しながら現場では飄々とリラックスしてカメラの前で演技をしていて、普通の人を演じる天才的な能力がある人であり、フラットなままで状況に対応する月末という人物をすごく上手に演じてくれました。音楽をやっていることもあり、すごく感覚的にその場に一番フィットする演技を理解してくれ、スムーズな現場でした」と、錦戸の魅力を絶賛した。

羊の木

多様なキャラクターが出てくる本作で「監督にとって特に愛着があるキャラクターは?」という質問には、「もちろん全員に思い入れがあって、分け隔てなく撮影から仕上げまでそれぞれのキャラクターを愛してきましたが、自分でも見直す度に興味がわくキャラクターが変わることがありまして、今日の上映では大野さんを受けいれたクリーニング屋さんのおばさんと、福元さんを受けいれた理髪店の店主のことを考えることが多かったです」と、観る度にそれぞれのキャラクターに愛着をもつこと作品であることを明かした。

羊の木

6名の元殺人犯のそれぞれの犯した罪の設定については「この物語には原作があって、原作ではもっと新住民の数も多いし、殺人だけじゃなく窃盗や性犯罪、詐欺などもあります。今回、殺人だけに絞ったのは、2時間の映画の中で一つ自分がこだわって考えたのは、人を殺したことがある人と無い人の間の境目がどう見えてくるかに興味があって、それを念頭において話を作りました。人を殺すことについても、弾みで殺したのか、計画的に殺したのか、あるいは残酷な殺し方なのか、運悪く相手は死んでしまったのか...その経緯によって、目の前に人を殺したことがある人がいたとしても、相手にどういう感情も持てるのか、どう付き合っていけるのか、いけないのかを細かくやりたかったので、全員殺人犯として一人一人変化をつけました。自分も撮影しながら、何が見えてくるか考えながら撮っていました」と述懐した。

映画『羊の木』は2018年2月3日(土)より全国公開

【CREDIT】
出演:錦戸亮 木村文乃 北村一輝 優香 市川実日子 水澤紳吾 田中泯 / 松田龍平
監督:吉田大八 脚本:香川まさひと
原作:山上たつひこ いがらしみきお 「羊の木」(講談社イブニングKC刊)
製作:アスミック・エース 配給:アスミック・エース
公式サイト:hitsujinoki-movie.com

©2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ いがらしみきお/講談社

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