映画『彼女がその名を知らない鳥たち』公開直前トークイベントが17日、都内・ヴィレッジヴァンガード渋谷本店にて行われ、主演の蒼井優、阿部サダヲ、監督の白石和彌、原作者・沼田まほかるのファンを公言する光浦靖子が出席した。
沼田まほかるのミステリー小説を原作に、『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』の白石和彌がメガホンを取った本作。8年前に別れた男が忘れられず、同棲相手の稼ぎに頼りながら他の男と関係をもつ女・十和子(蒼井優)と、十和子に異様な執着を見せる同棲相手・陣治(阿部サダヲ)の2人を軸に物語が描かれる。蒼井優、阿部サダヲをはじめ、松坂桃李、竹野内豊、村川絵梨、赤堀雅秋、赤澤ムック、中嶋しゅうが出演する。
原作&映画ともに堪能した光浦。全体の印象を聞かれると光浦は「すごくおもしろかったのと、映画も原作の通りだなと。あと、十和子って綺麗だったんだと(笑)小説では気付かなかったんです、でも十和子は蒼井さんのような美人じゃなきゃ辻褄が合わないということを改めて知りましたし、蒼井さんの、味というか、ぱっと見では出ていない魅力がありましたね。阿部さんのパンプアップしてない体も非常に陣治っぽくて(笑)背中のラインとか、役作りだったなら凄いなーと。映画で謎が解けました」と原作ファンならではの視点で本作について熱く語る。
蒼井は「程よい顔だと思うんです(笑)こういう顔は芸能界にいそうでいなかったりするので。本当の美人さんが来たらもっと幸せになってるはずなので、ほどよいんだと思ってます」と返すと、白石監督がキャスティングについて「登場人物が彼女に惹きつけられていかなくてはいけないので、すごく魅力的じゃなければ、と感じたのでぜひ蒼井さんに、という思いがありました」と振り返った。
続けて「阿部さんは汚し甲斐のある人で、十和子との年齢差も重要だと思いました。汚れることもいとわず、なおかつ純粋なものを抱えてなくてはいけない。阿部さんにやっていただいて気付いたのは、目は汚せないんだなと。一番重要なのは阿部さんの美しい瞳」と語ると、光浦がすかさず「茶目がきれいで、だから家康(2017年大河ドラマ「おんな城主 直虎」徳川家康役)に選ばれたんだと思ったんです。家康も肖像画が茶目なので、目が一緒なんです」と絶賛。阿部は「自分が茶目だとは。うれしいですね」と照れつつ喜びを明かした。
共感できない登場人物を演じた本作について問われると、阿部は「演じてるときは楽しいんです、どこまでも汚くして良くて、それはなかなか普段できない。お店で食べていても汚く食べちゃいけないと育ってきたので、それができる楽しさもあるし、監督やスタッフさんからもアイディアがすごく出てくる。昔、ロケ弁に陰毛が入ってたことがあって、共演の方に話したらそれは腋毛かもしれないと言われ、思い込みはいけないなと感じたことを思い出しました。なんでこんなことを話してるんでしょうか?ちょっと茶目が濁る(笑)」と衝撃的なエピソードを披露し会場を沸かせた。
蒼井は「脚本を読んでいるときは最低だと思ったんですが、松坂桃李さんや竹野内豊さんが自分よりもっと最低な役なので、あんまり自覚せずいられました」と話すと、光浦が「共感できなかったんです、何かを読むときってやっぱり誰かを応援しながら読むんですけど、この作品は誰一人応援せずに最後まで(笑)全員が切なくて。可哀そうだと言われることはよくあるけど、他人のことを可哀そうだとあまり言ったことはなくて、でもこの作品は小さすぎる世界、エンドのない地獄にハマっちゃった人たちに見えて可哀そうになっちゃいました」としみじみ。
白石監督は「タイトルに“鳥”とあるように、鳥かごから出られない人たちだと思ってやっていました。タイトルについてはまほかる先生からずっと宿題を出されたまま撮影をしていたような感じで、“彼女”はもちろん十和子なので、“鳥”はこの物語で気づく誰かの愛、なのかな」と同調して語った。
原作の沼田まほかる先生に話が及ぶと、大のまほかるファンを公言する光浦が「例え、言葉のチョイス、小さい単語一つ逃したくないです。どうなっても言葉に感情が誘導されてしまう。すごく好きなんです」とその愛が止まらない様子。
阿部も続き「描写がものすごく細かくて、映画にもできないようなものもあってすごい。実際に見ていないとまほかる先生も書けないような、そこまでするのかという描写もある。その、量、精液の量とかなかなか...あれ、ヴィレッジヴァンガードってこういうこと言っていい場所だと思ってたんですけど(笑)」と空気を一変させた。
光浦も「昔は言ってよかったんですよ!昔はね!」とフォロー。蒼井も「どういう人生経験をされてきたら、何を見てこられたらこんな描写が描けるのか、まほかるさんご自身に興味がわきました。なかなかいない経歴をお持ちですし。あんまり一人の方の本を読み込むことはしないんですが、ご本人に惹かれていってしまい、この映画の話をいただいていからまほかる先生のいろんな本を買って読みました」とすっかり魅了されていることを明かした。
白石監督も「すごい変わった経歴をお持ちなことと、とんでもない苦しみを人生の中で味わってきたのかなと想像してしまう。その先の、なかなか人間が持てないやさしさ、厚みをものすごく感じます」と続けた。
劇中の舞台が大阪ということで、関西弁に挑戦した蒼井と阿部。両親が大阪出身という蒼井は「耳なじみはあったのですが、大阪なまりが入っていると言われてきたのですが、実際100パーセントでしゃべろうと思うとこんなに難しいのかと。聞いているだけに自分で違いが分かるし、余計に気持ちわるくて。大変でした」と苦労を振り返った。
映画『彼女がその名を知らない鳥たち』は10月28日(土)より全国公開
【CREDIT】
原作:『彼女がその名を知らない鳥たち』沼田まほかる著(幻冬舎文庫・刊)
出演:蒼井優 阿部サダヲ
松坂桃李/村川絵梨 赤堀雅秋 赤澤ムック・中嶋しゅう/竹野内豊
監督:白石和彌
制作:C&I 配給:クロックワークス
(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会