映画『パンとバスと2度目のハツコイ』のワールドプレミアが30日、都内・TOHOシネマズ六本木ヒルズにて開催中の第30回東京国際映画祭で行われ、深川麻衣、山下健二郎、監督の今泉力哉が登壇した。
満席の会場でワールドプレミアを迎えた本作。深川は「短い時間ですが、一緒に楽しみたいです」と挨拶。続けて、長靴で登場しキャスト陣を笑わせた今泉監督は「お足元が悪い中(笑)お越しいただいてありがとうございます」と話し、「『長靴で良いよ、監督は』と言ってくれる優しい周りのみなさんでよかったです」と笑顔を見せた。
ワールドプレミアを迎えた気持ちを聞かれた今泉監督は「キャスト陣もそうですし、元々知っていた方と、しかもオリジナルで書かせていただいて、2人も内容に親身になって話してくれて、作ってこれた作品をこう言う場でお披露目できることを光栄に思います」と答え、本作については「今までも描いてきたことに似ていますが、さらに結婚というテーマと、ずっと同じ人を好きで居続けるっていうテーマとともに、作り上げていきました」と語った。
映画初出演にして初主演を務めた深川は「撮影に入る前まではかなり緊張もしていましたし、不安もあったんですけど、始まってしまってからはとにかく今泉監督の作る世界の中でふみっていう女の子が、相手と自分と向き合ってる姿が伝われば良いなと思いました。監督の持つ人柄があったかいので話し合いながら作らせていただきました」と当時を振り返った。
山下は「現場はほっこりしていましたね。作品がそういう雰囲気のものなので、深い話は深川さんとも監督ともしました。今回は体験したことのない役柄だったので、どうやって引き出すかを考えながらやっていきましたね。決して人を殴ったりとか、オラついたりとか、バイク乗ったりとかはしないです(笑)」と笑いを誘った。
深川との初共演について山下は「お互いグループ活動の経験があるので、グループあるあるを(笑)僕は基本的に愚痴ばっかり言ってたんですけど(笑)深川さんは一切ネガティブなことを言わないので、素晴らしいなと思っていました」と真っ直ぐに話し、そんな山下について深川は「クールなイメージがあったんですけど、休憩時間にバス釣りの話を熱心に語っていたりとか、明るくて現場を盛り上げてくれる人でした」と素直な気持ちを打ち明けた。撮影が休みの日はバス釣りに行く程はまっているという山下にちなんで「パンとバスのバスがそっちなんじゃないかと(笑)」と今泉監督が話し、会場を笑いの渦で包んだ。
そんな2人について監督は「役者をずっとやってきた人の魅力もあるけど、他のことをされている人の引き出しとかはすごく魅力があって、柔らかいというか、自分も頭に全てあってそれを全部やってください。というタイプではないので、一緒に考えながら作ってくれたし、それを不安に思わないでいてくれた。その場に決めた演出についても柔軟に対応してくれていましたね」と絶賛した。
そんな今泉監督の現場の感想を深川は「映画を作るってこと自体も初めての経験でしたので、ちょっとしたアクシデント的なことも逆にすごく勉強になるというか、楽しかったです」と笑顔で話し、続けて山下は「長回しだったりとか、セリフとセリフの間を大事にしたりとか、表情1つとっても、役者としても、この作品を経て自分のレベルを1つあげていただいたような気がしますね」と語った。
今泉監督はかねてより「キラキラした作り物みたいなものではない、自分たちに近い恋愛の話を作りたいっていうのがあった」と話しており、日頃キラキラした世界で活躍する2人への演出を「美しい部分や、かっこいい部分とかを、ちょっと落としてもらうことで逆に繊細に、別の美しさやキラキラした部分を見せられればと」と話した。
さらに山下の、とあるシーンでは「山下さんが鏡越しに手を洗う場面で、何回テストやっても格好良くなってしまって(笑)『まだ格好いいです』って(笑)でも普段の活動を知ってしまっているからこそ、本人に近い部分も設定したりしましたが、役にはすり寄ってもらいましたね」と振り返った。
質疑応答のコーナーでは「国際的な活躍をする2人に対して海外のファンの方へメッセージを」とリクエストされ、深川は「グループを卒業しても変わらず応援してくださってるのも、ありがたいと思っていて、どういう機会になるかわからないですが、いつか海外のファンの方に会いに行きたいと思っています。引き続きよろしくお願い致します」とコメント。
山下も「普段やっている音楽は海外も意識して発信していますが、今回は映画で個人として注目していただけるのは非常に嬉しいです。そういう部分を見ていただいたりとか、引き続きもっと海外に発信できるように精進して頑張って行きたいです」と意気込みを語った。
そんな2人に対して今泉監督は「映画祭などがきっかけで、映画のファンになってくださった方が2人のファンになって2人の活動に戻って行く、そういうことが起きるとすごく幸せだなと思います」と語った。
さらに、乃木坂46を卒業してから約1年が経つ深川に対して、「女優業への覚悟は?」と質問が飛ぶと「変わったことも大きんですけど、変わらないこともすごくあって、自分にとって乃木坂で5年間活動してきた経験が今の自分の土台になっているな。とはすごく感じているんですけど、自分で選んで本当にやりたかったことをさせていただいているので、5年間に甘えずに地に足をつけてお仕事に向けて毎日頑張って行きたいと思います」と力強く応えた。
最後に深川は「今日この後ついに初めての上映ということで見終わった後にどういう風に感じていただけるんだろうと思うとドキドキしますが、ぜひ気軽な気持ちで楽しんでいただけたら嬉しいです」と話し、続けて山下は「この映画は本当にみんなスタッフ含め楽しみながら思いを込めて一生懸命作ったので、楽しんでいただければと思います」と挨拶。
今泉監督が「たくさん映画がある中で今日はこの映画を選んでいただいてありがとうございます。見る人それぞれが自由に感じてもらえたらと思って映画を作っているので、見終わった後にみなさんがそれぞれバラバラの顔をしていたらすごく嬉しいです」と語り、拍手が巻き起こる中ワールドプレミアは幕を下ろした。
第30回東京国際映画祭は2017年10月25⽇(⽔)〜11⽉3⽇(⾦)にわたって六本⽊ヒルズ、EXシアター六本⽊ほか開催
公式サイト:www.tiff-jp.net