『孤狼の血』中村倫也インタビュー|白石和彌監督をニヤつかせた“危険な色気”、強烈な役に宿る“支配する楽しさ”とは

孤狼の血
中村倫也

柚月裕子のベストセラー同名小説を、『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』の白石和彌監督が映画化した映画『孤狼の血』。物語の舞台は暴対法成立以前の広島・呉原市。暴力団系列の金融会社社員失踪事件をきっかけに、捜査する警察が仁義なき抗争「極道のルール」に触れていくさまが描かれる。

映画ランドNEWSでは、今まで演じてきた役柄からは想像もつかないほど“危険な色気”を醸し出し、尾谷組構成員・永川恭二を熱演する中村倫也に、役作りや撮影現場でのエピソードなどを伺った。

孤狼の血

──今作での役作りについて教えて下さい。意識したことなどはありましたか?

中村:ある“刺激物”でないといけない役だったので、自分のこの器で、この猛者たちの中に居てそういう存在感を出すには「どうしたら良いのかな」ってふと考えて。現場でやったら白石さん(白石和彌監督)がニヤってしたので、「ああ、いいんだな」って思って、そのままやりました。

──一発OK?中村さんの役作りで?

中村:そうですね、基本的には。お互いニヤニヤして(笑)。白石さんも白石さんで、最初の登場シーンとか「ちょっとここで耳食ってみようか」「食べて、『まずい耳じゃのう』って言ってみようか」みたいな。「耳ですか・・・」って(笑)。そんなことをやり取りもしましたね。現場では非常ににこやかに白石さんと「ここで耳食べよっか!」みたいな(笑)。健康的な温度で、一緒に役を作っていきましたね。

孤狼の血

──電話ボックスのシーンがすごく格好良かったのですが、お気に入りのシーンや印象的な場面はありますか?

中村:あそこのシーン僕も好きです。桃李(松坂桃李)が演じた日岡と、僕が演じた永川って、同学年だけど立場が全く違う、正義感も全く違う。永川の“ある帰結点”というか着地点を、日岡の「・・・。」で終わらすには、永川は何を経て、日岡にどんなことを渡せばいいのかなって考えてやっていました。それ以降、日岡もだんだんと変わっていきますし、丁寧に渡さなきゃいけないシーンだなと。自分なりの永川の感情的な決着は見つかって。それも現場で白石さんに「座り込んでやりたいんすよ」って言ったらニヤっとしたので、「良いんだな」って思ってやりました。

孤狼の血
中村倫也

──白石監督が納得してない時はニヤってしてくれないのですか?

中村:どうなんですかね?納得いってなくても、白石さん助監督の経験もあるので、ここ粘ったらどれだけ時間とお金が飛ぶとかわかってやってるので、そういうのは見せないですけど(笑)。でも、ニヤっとさせたいですね。

孤狼の血

──往年の東映のヤクザ映画や、役作りの上で参考にされたものはありますか?

中村:監督からもらった言葉は「永川は“狂犬”だと思います」って。あとは、台本に書いてないけど「シャブ打ちたいんだ」って言われましたね。永川の役作りというか、永川っていう人物は時代も平成になる直前、まだ熱を残していた時代っていう接点としてあって。明確な年齢はわかりませんが、ヤクザの世界に憧れ、何か夢を持って飛び込んだけど、上からブレーキかけられるから鬱憤が溜まっていき…。台本を読んで考えて、いつの時代も若者って“狂犬”で有り得るのかなって思いましたね。現代の一般社会の企業の若者も、きっと社会に出て色んなこと試したり、やりたいことあるけどやらせてもらえなかったりするじゃないですか。その中で、上のやってきた成功体験とか教えてもらって、「突き破りたい!」って想いを抱いて鬱憤が溜まってる若い人たちがいっぱいいると思うんですよね。

孤狼の血

中村:立場は違えど、正しいか間違ってるかは別として、永川と現代の若者に通ずるものというか。それが爆発した時に、みんな“狂犬”、牙になるんじゃないかなって。その鬱憤が溜まってる感じとかも理解出来たので。あと、全うに育ってきて、“もっともな正義感”を持った同学年の日岡と、“アウトローなりの正義”を抱えてる永川の対比だったりをヒントにして役を作っていきました。

孤狼の血

──氷川は“狂犬”ではありますが、クレーバーさも持ち合わせていて、若い構成員の中で存在感がずば抜けてたと思います。江口さん(江口洋介)や役所さん(役所広司)と共演されて刺激を受けたことなどはありましたか?

中村:江口さんとは、今回が実は3回目の共演なんです。最初は若い頃、「トライアングル」という江口さんが主演のドラマで。その頃は刑事の役で出させてもらって。あと大河ドラマで信長と信忠の親子役をやったりして。自分が言うと変な話ですし、江口さんに怒られるかもしれないですけど、あの江口さんですら、今回は張りつめて現場に入っていました。そこまで江口さんをも準備させるような作品・役なのだなと刺激になりましたし、その張りつめる緊張感とか、テンションとか、現場全体に伝わってるんじゃないかなと肌で感じました。役所さんは、言葉にもできない、推し量れない存在で。とにかく偉大でデカい山。横にいる桃李が羨ましかったですね。同じ事務所の後輩ですけど、「そこ変われ」ってずっと思ってました。

孤狼の血

──強烈な役が多い今作ですが、役所さん(役所広司)演じる大上章吾のように、出会っただけで当人の人生を動かすというか、出会っただけで人生を動かされた方はいらっしゃいますか?

中村:仕事では…堤真一さんがそれに近い感じですね。堤さんは僕にとって、芸能界の“おじき”的な存在。気にかけてくれます。いつも刺激と良い影響を背中でも見せてくれます。あと、パッと浮かぶのは、舞台とかで一緒だった古田(古田新太)さん、阿部サダヲさん。スター、主役像を背中で見させてもらったのは、20代前半の頃に皆さんご一緒させてもらったんですが、自分が主役をやらせてもらう時に、すごくデカい背中として影響を受けてますね。

──『日本で一番悪い奴ら』に引き続き、白石組に参加されましたが、この組ならではの思い出はありますか?

中村:先輩方もそうですし、関わってるみんなが楽しそうですね。それがやっぱり1つの答えな気がしていて。そういう現場って良い循環が残るんですよね、スクリーンや作品に。自分なんか若者ですけど、色んな経験をしてきた先輩達もニヤニヤ出来るのが白石組の力強さでもあり、頼もしさでもあるのかなって現場で思いました。抽象的すぎる?

──いえいえ。日岡役の松坂さん(松坂桃李)とはどういうお話をされましたか?

中村:現場では「日岡が殺気を纏う」ってト書きがあったんで、「楽しみにしてるよ!」って話はしました(笑)。

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中村倫也

──『あさひなぐ』などのコミカルな演技もされますし、ドラマ「闇金ウシジマくん Season3」「ホリデイラブ」などで、ぶっ飛んだ強烈な役も演じられていますが、どちらが楽しいですか?

中村:どっちも楽しいですよ!「ホリデイラブ」とか疲れますけど(笑)。コミカルなものは、それぞれ種類の違う楽しみと、種類の違う怖さがありますね。コミカルなものは“笑い”っていうわかりやすい結果がありますし。

──『3月のライオン』も独特なキャラクターを演じていましたよね。

中村:真面目なシーンの中で、ふと肩の力が抜けるような、箸休め的な存在でしたね(笑)。「ホリデイラブ」とか、「ウシジマ」はアクションで果敢に、自分の芝居で周りを動かすっていう“支配する楽しさ”もあります。その分、説得力が無いと空回りになるので、それぞれ違った面白さや怖さがありますね。

中村倫也
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【応募期間】2018年5月1日(火)〜5月15日(火)正午まで
【当選人数】1名様
【応募方法】映画ランドアプリをダウンロード→該当するSNS投稿を拡散→応募フォーム入力

映画『孤狼の血』は5月12日(土)より全国公開

©2018「孤狼の血」 製作委員会

スタイリスト:戸倉祥仁/AKIHITO TOKURA(holy.)
ヘアメイク:松田陵(Y’s C)

取材・文:矢部紗耶香/撮影:小宮駿貴

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