『アズミ・ハルコは行方不明』『アイスと雨音』などで知られる松居大悟が監督・脚本を務める本作『君が君で君だ』は、好きな女の子の好きな人になりきって、自分を捨て去り、10年間彼女を見守ってきた3人の男たちの愛の結末を描いた恋愛譚。
日本の伝説のロックシンガー“尾崎豊”に池松壮亮、世界中の誰もが知るハリウッドの名俳優“ブラッド・ピット”に満島真之介、日本の歴史を大きく変えた人物“坂本龍馬”に大倉孝二がなりきる。映画ランドNEWSでは、池松壮亮×満島真之介×大倉孝二の3人に、現場でのエピソードや作品の魅力を存分に語ってもらった。
──脚本を読んだ率直な印象を教えてください。
満島:まずは大倉さんの聞いていいっすか?
大倉:なんでだよ(笑)。やっぱり意味がわかんなくて「どういうこと?」って思いましたね。そのことは率直に監督にもお話しして。監督からは明確なことよりも「飛び込んで来てほしい!」と話をされたから、「じゃあそれでいいや!」って思いました。
満島:まさしくそうですね!すごく客観的に読んでたんですよ、本を。そうじゃないと最初読めなかったんで。自分が演じるから“どういう風に”という意識で読むというよりも、“人の心の中を見てる”感じがしたので。しかも、大倉さんがちゃんと「意味がわからない」って(松居監督に)言ってくれたことも大きかったんですよ。そこから、みんなで話すことが出来たりとか、そういう時間も設けられたので。特に僕ら(大倉・満島)は松居さんの組は初めてだったので。他の作品は観てましたけど、今回は完全に自分の内側を吐露してるなっていうのを感じたので、読んでる時も、松居さんに会ったことも無いのに“松居さんの内側”を見ている感じでしたね。なんだか身体に入り込んだ“菌”みたいな気持ちになっちゃった(笑)。ちょっと小恥ずかしさみたいなものを感じる本にはあまり巡り会ったことが無かったので。刺激的な部分ももちろんありましたけど。
──何度も松居監督作品に出られている池松さんはいかがでしたか?
池松:松居さんが映像をやりはじめてから、割と近い場所で見てきたんで、たぶん初めて松居さんに触れる人とか、初めて松居さんの脚本に触れる人よりも、大きな驚きは無かったですね。今回はじめて正真正銘のオリジナル作品ということで、さっき満島さんがおっしゃいましたけど、内側を深く掘っていくような、間違いなく松居大悟にしか、松居大悟以外は作れないような映画が出来上がるんじゃないかっていう期待感はありました。
──いろいろ想像を膨らませながら脚本を読んでいった感じでしたか?
満島:そうですね。特に大倉さんは松居さんより年上じゃないですか。僕らは年下だし、同世代っちゃ同世代なので。どんな感じだったんですか?この若者が書いた本は。
大倉:今までいろんなのを見てきて、「なるほど、こういう風に撮りたいんだな」って大体わかるものが多いんだけど…今回はさっぱり、ちょっと分かんなかったんだよね。
池松・満島:(笑)。
大倉:でも、途中から話をしていて、「わかるからってどうなんだ!?」って気持ちになってきて。わかんなくてもただやるっていうのもアリだなって思って。だから「わからないんで、最後までそこは違うとか、もっとこうして欲しいとか、ちゃんと言ってくださいね」って伝えましたね。
──最終的にはわかりましたか?
大倉:いや、わからないですね。
池松・満島:(笑)。
大倉:でもそれは、もうそのコンセプトで演じていったんで、わからないままで良いと思ってるんですよね。理解しようとか、体現しようというよりは、ただただやってみるっていうか。
──松居監督とは役に対しての深掘りはされたんですか?
満島:リハーサルを何日間かやって、部屋の中のシーンとかをみんなでまずやってみよう!っていう状態から始まっているので、その時間はとても大きかったんですよね。松居さんもこの題材を舞台でもずっとやってきているので、台本がどうとかよりも、松居さんも真剣に見てくれてる感じがあったんで。違う要素がその場でポンって入ってくると、「これも入れたいな」って。そういう臨機応変な動きだったので、その分身を委ねられることもあったし、みんなで拡がりを見つけていく過程が、何かを作り上げる時には大切だなと感じられたのが良かった。
──実際のあの部屋でリハーサルされていたんですか?
満島:いや、あの部屋ではないですね。
大倉:あの部屋でもやったよ!丸1日!
満島:そうだ!丸1日やったわ(笑)。
大倉:ヘトヘトになったよ。
満島:ヘトヘトになりましたね(笑)。部屋のシーンほとんどやりましたもんね。
──匂いや湿度もスクリーンから伝わってきました(笑)。
満島:本気で暑かったです。ハンパじゃありませんよ(笑)。しかも、下に老夫婦が住んでて、「これ…大丈夫か?」っていう感じだったし、おじいちゃんとかずっと寝てたのに、どんどん外に散歩しに行っちゃって(笑)。たぶん、すごいうるさかったんだろうなって(笑)。
──すごい響きそうですもんね。
満島:この映画のために作った場所じゃなくて、本当に人が住んでるところなので、あれも中々無い体験ですよね(笑)。隣も居て、下も居てっていうのはほとんど無いし。とにかく暑かったですね。でも、その分匂いとか、確かに伝わってくるものがあると思います。
大倉:だから、どうでも良くなっちゃいましたよね。
池松・満島:(笑)。
大倉:ドロドロだったしね。
満島:しかも、大倉さんは袴っていうか坂本龍馬の格好でしたもんね(笑)。
大倉:どんどんヤバい匂いに…(笑)。
──首輪は本当にしてたんですか?
大倉:首輪は本当にしてたね。繋がれてました。1日中首輪をつけられていたら、本当に精神がやられましたね(笑)。
──皆さんは今作のように、“全てを投げ出してでも愛するものに出会った時”はどうなりますか?
満島:出会ったことあります?(笑)。
池松・大倉:(笑)。
満島:あんまりないでしょ?
池松:投げ出したいと思わないしね。
大倉:結婚してる身としては一応出会ってるって言っておかないとマズイんじゃない?
満島:そうですね(笑)。
──好きとか憧れという気持ちは、エネルギーに変わる感じですか?
満島:やっぱり恋は良いですからね。(池松に)恋してます?
池松:恋…してませんね(笑)。
──キャスティングもすごく面白い組み合わせでしたよね。
満島:なかなかこういうキャスティングをする映画って無いんじゃないですか?だって、この3人ですよ?だから僕は“これは希望だな”って思いました。こういうものを作ってくれる人たちがいるんだっていう喜び。やっぱりポイントで入ったりとか、個性的な役とかになっちゃって。幅が広がっていかないなって思っちゃうんで。みんながそれぞれ違う要素を持った人たちがこうやって集まってきて、あれだけ狭いところで肉体も精神もボロボロになりながら映画を作る。あの2週間は密度の濃い体験でしたね。
──観ていて、YOUさんとか向井さんの感覚が観客と近いのかなと思って、だんだん3人のことを愛おしく感じてきたんです。おかしい設定を“おかしい”って思ってることが“おかしい”んじゃないかって思わされる位の真っ直ぐさというか…
池松:今回は今までで一番そういう幅を作っていて。最初の3人の見え方と最後の3人の見え方が変わるって言うのは、あそこに向井さんとYOUさんの目線を配置したことも含め、落差を狙ってたんじゃないですかね。今回は今までで一番落差は狙っていた気がします。集合体からパーソナルなものが見えてくるって作り方はいつも通りなんですけど、入りは今までで一番突拍子もなかったんじゃないですかね。
──完成された映画を観て、どう思いましたか?
満島:こんなに客観的に自分が出ている作品を観たのは初めてでしたね。客観的にというか、普通に観てた。いつもだと細かいところが気になったりとか、どういう編集をしてるのかとか、いちいち雑念が入ってくるんですけど、初めてだったんですよ。自分が自分じゃないっていうか。それは演じ方がどうっていうよりも、「これ、やってたんだ!」っていう感じでしたね(笑)。だから、すごくお客さんに近い感覚で観てたかもしれないです。それはすごい発見だった!でも、何故それがそうだったかっていうのは、未だに自分でもわからないですけど(笑)。
大倉:いろんなこと含めて“大変だったな”っていうのは残ってたんですよね、自分の中に。だから観始めて、あの部屋が出て来た時に「うわぁ…」っていう苦い気持ちになって。
池松・満島:(笑)。
大倉:妻は結構笑ってました。だから、“これは笑っていい映画なんだ!”って、その時初めて知ったんです(笑)。
──撮っている時は「笑える」っていう感覚はなかったんですか?
大倉:あんまりなかったよね。自分が観た後も、全く客観的になれないまま「これは…何なんだろう?」って(笑)。
池松・満島:(笑)。
大倉:でも、妻は結構面白かったって言ってたんで、「そうなんだ」って思いましたね。
満島:そういう反応ってめちゃくちゃ良いっすね!
大倉:池松くんの最後のシーンとか、妻はゲラゲラ笑ってて。
池松・満島:(爆笑)。
大倉:「あ、そうなんだ?そういう感じなんだ?」って思って。
池松:それはなんか報われますね。笑ってくれないと結構キツいですからね(笑)。
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映画『君が君で君だ』は7月7日(土)より全国公開
(C)2018「君が君で君だ」製作委員会
取材:矢部紗耶香/撮影:中村好伸