ハワイ ハナレイ・ベイの美しい自然の中で描かれる“希望”の物語── 吉田羊×佐野玲於×村上虹郎『ハナレイ・ベイ』特集

作家・村上春樹の同名短編作品を吉田羊×佐野玲於×村上虹郎のキャストで映画化した『ハナレイ・ベイ』が10月19日(金)に公開される。映画ランドNEWSでは、俳優陣が魅せる迫真の演技、原作:村上春樹×監督:松永大司が奏でるハーモニーの魅力に迫る。

ハナレイ・ベイ

2005年に発表され単行本、文庫あわせ累計70万部を超えるベストセラーとなっている作家・村上春樹の『東京奇譚集』(新潮文庫刊)の一篇である「ハナレイ・ベイ」を映画化した今作。サーフィンに明け暮れる思春期の息子と、シングルマザーで彼を育ててきた母親サチの姿を描き出す。

ハワイのハナレイ・ベイで一人息子をサーフィン中の事故で亡くした主人公サチ役に吉田羊、サチの息子・タカシ役に佐野玲於(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、サチがハナレイ・ベイで出会う日本人サーファー・高橋役に村上虹郎が扮する。監督を『トイレのピエタ』で知られる松永大司が務める。

1987年発表の「ノルウェイの森」が大ベストセラーとなり、それ以降も時代に刻まれる名作・話題作を発表し続ける作家、村上春樹。「ハナレイ・ベイ」は彼の短編集『東京奇譚集』(新潮文庫刊)に収録されている一篇だ。今回の映画化にあたっては、単行本が発売された2005年から企画が動き出しており、実に13年の道のりを経てのプロジェクトとなる。村上春樹作品の日本での映画化は、『ノルウェイの森』(2010)以来8年ぶりだ。

ハナレイ・ベイ

今作で主演を務める吉田は「もともと村上さんの作品世界が好き。ムラカミハルキの作品世界にしかも映画で自分が生きられる、これ以上の幸せはありません」と意気込みを語っており、撮影前には劇中に多く登場する英語のセリフやピアノ演奏などの習得に励んだ。

ハナレイ・ベイ

また、本作で大事な役どころを担う村上が「“死”は、この自然の循環の一部であるという原作のテーマに強く惹かれた」と言うように、村上春樹の原作には「愛する人を突然失った哀しみ」「失意の中から、いかにして人は前に進んでいけばいいのか」というメッセージ性が込められている。自然災害など、今まさに“死”が身近に存在する昨今の世界で、主人公サチの純粋なまでに強く生きようとする姿は、“再生”への一筋の希望を与えてくれる。

ハナレイ・ベイ

決して登場人物が多くない今作で、圧倒的な存在感で物語を引っ張り、観る者を釘づけにするのが、主人公・サチを好演する吉田羊と、その一人息子・タカシ役の佐野玲於、そしてハナレイ・ベイでサチと出会い影響を与えていく日本人サーファー・高橋を演じる村上虹郎らの存在だ。

ハナレイ・ベイ

サーフィン中の事故で亡くなった息子を想いながらも、息子のことが“好きではなかった”過去の自分との葛藤。その想いと葛藤の狭間で苦しみ続ける主人公・サチという難しい役どころを、吉田は生々しく見事に演じ切っている。予告編などでも垣間見れるように、息子を心から想い苦しみながら涙を流す姿には胸を打つものがある。

ハナレイ・ベイ

松永監督が「すごく“輝いている”人がいる」と、2016年に「HiGH&LOW THE LIVE」のステージで観た姿に惚れ込み、1度は断られるも熱烈なオファーを送りキャスティングが叶った佐野玲於。サーフィンを愛し、訪れたハナレイ・ベイでの不慮の事故で亡くなってしまうサチの息子・タカシ役を、等身大に瑞々しく演じている。

ハワイ ハナレイ・ベイの美しい自然に溶け込む佐野の姿は無邪気で美しく、対照的にサチの記憶の中に映る姿には胸を締め付けられる。佐野の自然体な魅力が、いかんなく発揮された姿は必見だ。

ハナレイ・ベイ

さらに、物語の要となっているのが、吉田扮するサチに大きな影響を与えることになる日本人サーファー・高橋役を演じた村上虹郎。圧倒的な存在感を放ち続ける村上の演技には、若く世間知らずながら“人間の深み”を感じさせる。サチが亡き息子の姿を重ねるという役どころを、大胆かつ繊細な演技で魅力的に演じ切っている。ハナレイ・ベイの青く美しく広がる海での、日本から一緒にやってきた友達・三宅を演じたプロサーファー佐藤魁とのサーフィンシーンにも注目だ。

作品のタイトルにもなっている“ハナレイ・ベイ”は、約67,000人の人口と島全体が箱庭のような美しさから、別名「ガーデン・アイランド」と呼ばれているカウアイ島にある湾。カウアイ島は、ハワイ諸島で最も古くに誕生した島で“自然の博物館”と称され、神聖な伝説も多いスピリチュアルな島として知られている。

ハナレイ・ベイ

原作者である村上春樹にとっても、かけがえのない大切な場所である“ハナレイ・ベイ”。スクリーンに映し出される“ハナレイ・ベイ”の神々しいまでの美しく雄大な自然の姿は、限られた命を生きる「人間の生と死」をより強く浮かび上がらせ、「“死”は自然の循環の一部である」というテーマに胸を締め付けられる。

ハナレイ・ベイ

今作の撮影を務めたのは、数多くの話題作を手がけ、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞に当たるパルムドールを受賞した是枝裕和監督『万引き家族』(2018)のカメラマンとして参加している近藤龍人。松永監督が絶大なる信頼を寄せ、長編映画でのタッグは今回が初めてとなる。ハワイ ハナレイ・ベイの美しい景観と音(音楽)とが融合したスタイリッシュな映像美に心を動かされ、ラストには観る人にとって<人生で一番大切な人に会いたい>と強く想うほどの感動を与えてくれるだろう。

トイレのピエタ』(2015)で脚光を浴びた松永大司監督。ハワイを舞台にしたミュージックビデオを見ているような感覚を覚える美しい映像と、「人間の生と死」「哀しみからの再生」という作品のテーマが絶妙に織り交ざった今作を見事に完成させた。今作で脚本・監督を務め、文庫本にして“42ページ”の原作を、1本の情感あふれる長編映画へと昇華させている。

ハナレイ・ベイ

実際に今作の舞台となるハワイ ハナレイ・ベイへ赴き、現地の人たちの生活に触れたことから、映画独自の脚本のアイデアを得た。また、現地での撮影が危ぶまれた時も、何としても実際のハナレイ・ベイで撮影をすべく「絶対にハナレイで撮るんだ」という強い意志を貫き、雄大に広がる美しい現地の映像をスクリーンに映し出すことに成功。この地で撮影するのは、ハリウッド作品でさえ“珍しい”という貴重なありのままの景色を目に焼きつけることができる。

ハナレイ・ベイ

“俳優の持っている力”、その魅力を最大限に引き出す松永監督の演出・手腕も大きい。松永監督は、吉田からサチの姿を引き出すため、吉田が「女優を本気で辞めようと思った」とコメントするほど、撮影中は吉田に対して非常に厳しく、吉田のこれまでのアプローチや武器にしてきたものを否定するところから始まったという。だが、撮影後には「吉田さんにサチを演じてもらえてよかった」「彼女はサチそのものだった」と称賛の言葉を贈り、吉田も「私の代表作になった」と答えている。

松永監督の妥協なき姿勢、そして「映像と音(音楽)でどこまで表現できるかを挑戦したかった」と語っているように、美しく、時にスタイリッシュな音楽と物語のテーマとの見事な調和は、既存の枠に捉われない“新たな日本映画への幕開け”を感じさせる。

──映画『ハナレイ・ベイ』STORY──

ハナレイ・ベイ

ハワイのハナレイ・ベイで息子を失った母親サチ(吉田羊)は、浜辺でチェアに座り海を見つめる日々を過ごす。命を落とした息子タカシ(佐野玲於)との思い出を振り返ってみても心のどこかでよぎる、「私は息子のことが好きではなかった」という想い。

美しいハナレイ・ベイの景観の中で、10年をかけて亡き息子を想い続け、自分自身に向き合い続ける主人公サチ。そんな中出会ったのは、まだ世間知らずでサーフィンに夢中な2人の日本人青年。そのうちの一人、高橋(村上虹郎)に、サチは亡き息子の姿を重ねていた。ある日、その2人から“片脚の日本人サーファー”を浜辺で見かけたと耳にするサチ。息子を亡くして10年、海を見つめるだけだった彼女は立ち上がり、自らの人生を変える一歩を踏み出すことを決意する──。

映画『ハナレイ・ベイ』10月19日(金)全国ロードショー

©2018『ハナレイ・ベイ』製作委員会

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作品情報

ハナレイ・ベイ

ハナレイ・ベイ

4.1
2018/10/19(金) 公開
出演
吉田羊/佐野玲於/村上虹郎/佐藤魁/栗原類 ほか
監督
松永大司