映画『旅猫リポート』福士蒼汰インタビュー
有川浩原作の同名ベストセラー小説を映画化した映画『旅猫リポート』。物語は、心優しい青年・悟(サトル)が、とある事情から飼えなくなってしまった愛猫・ナナと一緒に、新しい飼い主を探して日本各地を巡る旅に出るところから始まる。主人公の悟を福士蒼汰が演じ、愛猫・ナナの声を高畑充希が担当。監督を『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』などで知られる三木康一郎が務める。
映画ランドNEWSでは、主演を務めた福士蒼汰に、今作の魅力や愛猫・ナナとの撮影エピソードについて話を伺った。
──オファーを受けた時の率直な感想から教えて下さい。
福士:有川浩さん原作の作品は以前も出演させていただいたことがあったので、絶対いい作品になるんだろうという確信がありました。実際原作を読ませてもらうと、有川さんが「一生に一本しか書けない物語」とおっしゃっている意味が分かって、すごく感動しました。ただ猫目線でお話が進んでいくので、実写化するにあたっては“撮影はどうなるんだろう?”という不安も大きくて。自分自身犬は飼っていたことはあるんですが、猫とはこれまでちゃんと接する機会がなかったので、扱い方が全然分からなくて。そういう意味での緊張がありつつのスタートでした。
──撮影現場はどんな雰囲気で進んだのでしょうか。
福士:皆がナナのために!という現場でした。ナナからいい表情を引き出そうということに向けて全員がひとつになっているような感じで、現場の雰囲気もすごく柔らかく。例えばナナが膝の上にいるシーンでも、ナナとしては膝の上に乗りたくない日もあると思うんです。そういう時はナナが居やすいように、抱っこしているような体勢に変えて話しかける。そうするとスタッフさんも「じゃあカメラこっちのアングルに変えて、カット割ります」というような。本当にナナの気分次第でその場で変わることも多かったので、他の作品とは全然違いました。自分が主演の場合はどうしても責任感やプレッシャーを感じるものですが、今回はナナという絶対的な存在がいたおかげで、逆に自分はリラックスできたんです。現場ではいつも以上に気持ちよくお芝居ができていた気がします。
──今年だけで4作品もの出演作品が公開されていますが、その中でも『旅猫リポート』は福士さんにとってどのような作品になりましたか?
福士:ほかの3作品と比べると、キャラクター性の強い役柄ではなく、すごくリアリティのある役でした。漫画原作で、ビジュアル的に明確なものがあった作品が多かったので、『ラプラスの魔女』もミステリアスな雰囲気でしたし…。今回はリアルな、人間が生きていく中での物語だったので、他とは違う毛色の作品になりました。
──悟というキャラクターについては、どのように演じていこうと?
福士:なかなかこうはなれないよなというくらい、優しい好青年です。丸くて全く角がない。最近とんがったアクション映画をやることが多くて、こういう日常の中にいるキャラクターは実は一番難しいなと思います。キャラクターチックに演じるのではなく、見る方の想像の範囲内に収めながら悟という人をどう魅力的に映していくのかということをすごく考えました。ただ三木康一郎監督に初めてお会いした時が、ナナとの初対面の日でもあったんです。そこでナナと接する自分を見て、監督が「その感じいいね。福士くんの素の感じでいいよ」とおっしゃってくださって。その言葉にすごく救われました。キャラクターとして作り込むのではなく、もし自分の中に悟に似た部分が見えるならそこを最大限引き出して演じていこうかなと。
──ご自身的には悟との間に共通点は感じられましたか。
福士:自分はここまで優しくていい人じゃないかもしれないです(笑)。でも彼の生い立ちや、育ってきた環境が過酷だったからこそ、ここまで優しくなれたのかなということは想像できました。悟という名前のごとく、本当にいい意味でいろんなことを悟ってる人だなと。だから今回は役作りをしたというよりは、猫や人との関係性を作っていこうと考えました。ナナやハチとの関係性、叔母さんや学生時代の友人達との関係性……それぞれが悟にとってどういう存在だったのかということを考えていく作業でした。
──悟にとってナナはどんな存在だったのでしょう。
福士:一言で言うと家族です。もとは野良猫で家族がいなかった子ですが、今はナナと自分は間違いなく家族。だからこそナナには家族がいてほしい、絶対に一人にはしたくないというのが悟の想いなんだなと。
──共演者の方々についての印象もお聞かせ下さい。
福士:竹内結子さんとは今回初めてご一緒させて頂きましたが、とてもナチュラルな空気感を持たれている方でした。その場にスッと溶け込める空気を作ってくださる方なので、今回は叔母と甥という関係だったんですが、すごく自然に身内のような雰囲気を出してくださって助けて頂きました。学生時代の友人達に関しては高校パートが撮影としては一番多かったので、広瀬アリスさん、大野拓朗さんとのシーンが特に印象に残っています。皆、いい大人なんですが(笑)制服を着て高校時代を元気いっぱいに演じたりするのも楽しかったです。この3人に限らずキャストは皆動物好きの方ばかりだったので、とても話が合いました。
──高畑充希さんの声が入った完成作をご覧になっての感想は?
福士:高畑さんの声の質、しゃべり方……全部がナナになじんでいて驚きました。最初の一言目で「わ!猫がしゃべった!」と思ったんですが、二言目からはすっかりナナにしか見えなくて。ナナは実は男の子なんですが、少年の役を女性の声優さんがあてることがあるように、男の子なんだけどヒロイン感も出ていて(笑)余計ナナが可愛く見えました。あとはやっぱりナナのお芝居もすごく良くて!そこに至るまでの撮影の大変さを知っているぶん、その苦労の跡が全く見えない仕上がりにも感動しました(笑)。自分の出演している映画を見て泣いたのも初めてでした。ナナやハチのシーンはもちろん、悟の少年時代のパートは現場でも見ていなかった部分なので思わず涙してしまいました。
──ナナとの初対面時の印象は?
福士:とってもかわいくて、とにかくフワフワしてる!と思いました。すごく好みのタイプだったので(笑)、ぎゅ~ってしたかったんですが、ナナは抱っこが嫌いですぐ逃げちゃうんです。でも自分はすぐナナのことが好きになりました。ただやっぱり犬とは愛情表現の仕方が根本的に違うので、最初は結構大変でした。
──すぐに心が通い合ったわけではなかった?
福士:最初の頃は犬にする感覚で顔を近付けてみたら、ぺろぺろってしてくれるかな?と思ったんです。そしたら「嫌~!」という感じで、猫パンチされました(笑)。爪は立ててなかったんですが、肉球で思いっ切り。でも撮影が始まって2週間くらいしてから、顔を覚えてくれたなと感じる瞬間があって。今回は車に乗って旅をするシーンが多くて、車内では基本2人きりなんです。しかも毎日撮影で会ってるので、だんだんと慣れてきてくれたみたいでした。あとは猫のトレーナーの方がどんな風にナナを扱ってるのかを、常に見て勉強していました。犬とは違って、猫は首のところをつかんでもOKだそうで。皮がびよ~んと伸びてて、かわいかったです。いつも気ままな感じも猫ならではなんですが、シャワーのシーンでは水が怖かったらしく、珍しくしがみついてきてそこもかわいいなぁと思いました。
──ナナと会うのは「久しぶり」とお聞きしましたが。
福士:やっぱり久々に会うと成長していました(笑)。撮影の時は2歳で、いま4歳なので。いろんな成長が見られて嬉しいです!
──写真撮影の時も始めは大人しかったのに、撮影していたらどんどん動きが激しくなっていましたね(笑)。
福士:猫は気分屋ですから(笑)。毎回撮影をしてて、良いカットを撮らせてくれるのは、ナナだからかなと思います。
──他の猫ちゃんがしないような表情をされますよね。
福士:猫らしさもちゃんとありつつ、止まる瞬間「パッ」っとちゃんと止まったりするんです。でも、その後すぐに跳ねたりとか(笑)。
──福士さんから見た、ナナのキュートなシーン、好きなシーンはどこですか?
福士:いっぱいあります!良いなと思ったのは、悟が居る場所に「悟、悟~!」って来るところです。あのシーンが本当に可愛くて(笑)。“どうやって撮ったんだろう?”っていうくらい、すごく可愛かったです。ナナがお芝居をしてるシーンはすべて可愛いです!
──いまも見ていて、ナナとすごくお似合いです!
福士:最初は全然でした(笑)。猫パンチもされるし(笑)。自分に懐いてるかはわからないですが、単純に自分が『旅猫リポート』を通してナナへの接し方がわかってきたのかなと。前に猫と一緒にCMの撮影をしたのですが、その後に『旅猫リポート』があって、またその後にナナと一緒にプロモーション活動をして。3度目の時はやっぱり慣れていました(笑)。
──『旅猫リポート』は観ていると旅に出たくなるし、旧友に会いたくなる作品だなと感じたのですが、福士さんはどこに旅に行きたいですか?どんな旅がしたいですか?
福士:やっぱり海外を周りたいです。ヨーロッパ巡りとかしたいです。建物とか文化とか歴史とか。単純に街並もキレイだなと思いますから。日本も周りたいんですが、日本はもうちょっと大人になって、おじさんになったら日本のこと勉強しつつ周りたいです。
──今回のロケ地も、福士さんとナナが訪れた先を巡りたくなるような景色ばかりでした。
福士:すごく景色が良いんです。海とか、富士山とか、菜の花畑とか。ビジュアル的にインパクトの強い景色が多くて。
──福士さんにとって、ナナのような“家族のように大切に想う存在”はいますか?
福士:友達です。お互い忙しいので、2ヶ月に1回会えるかな~って感じですけど。会う・会わないとかではなくて“繋がり”があるというか。家族もそうじゃないですか。1年会っていなくても、1年ぶりに会っても家族は家族。親友もそういう関係なので、全然会わなくても、会っていても変わらない関係性でいれる。自分が役者になっても、役者になる前でも変わらず接してくれます。「久しぶり~!」とはなるんですが、「え、そんな久しぶりだっけ~?そんな感じしないね~」みたいな。
──良い関係ですね!最後に、作品を通じて伝えたいことは?
福士:猫の可愛さは当然のこととして、猫と人間の繋がり、人間と人間の繋がりがしっかり描かれていて、すべてが愛情でできているお話だと思います。猫とどう接するのか、大事な人とどう接するのかを見つめ直す機会になれば嬉しいです。
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映画『旅猫リポート』は10月26日(金)より全国公開
(C)2018「旅猫リポート」製作委員会 (C)有川浩/講談社
取材:矢部紗耶香/撮影:ナカムラヨシノーブ
ヘアメイク:髙橋幸一(Nestation)/スタイリスト:小松嘉章(nomadica)
協力:ZOO動物プロ