若きベテラン俳優・染谷将太【監督・俳優のすすめ Vol.10】

“監督で観る” “俳優で観る”映画の楽しみ方。今注目の人やこれから注目すべき映画監督・俳優について紹介する【監督・俳優のすすめ】。Vol.10は独特の存在感で国内外から高い評価を得る気鋭の若手俳優・染谷将太。

Keyword 1:23歳にして出演作50本以上、様々な監督から愛される驚異の若手俳優

俳優・染谷将太。つい先日(9月3日)誕生日を迎えた若干23歳の彼に、「初々しい」という表現は似合わない。俳優としてのキャリアはすでに10年を超え、その演技力は若手の中でも抜きん出ている。国内外を問わず数多くの賞に輝いており、日本を代表する俳優の一人と言っても過言ではない。

9歳のときに『STACY ステーシー』(01)で映画デビューして以降、松本大洋原作の青春映画『ピンポン』(02)、西川美和監督の『蛇イチゴ』(03)などに出演し、廣末哲万監督の『14歳』(06)で母親と歪んだ関係を持つ少年という複雑な役どころに挑み、映画作りの面白さに目覚めたという。

そんな彼の俳優人生で一つの転機となるのが、園子温監督の『ヒミズ』(11)だ。苛酷な家庭環境で育ち、親からも愛されず、絶望しか見出せない世の中へ全身全霊でぶつかっていく少年を演じ、第68回ヴェネチア国際映画祭で日本人初のマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人賞)受賞という快挙を成し遂げた。

『ヒミズ』で見せた圧倒的な演技は多くの監督の目に止まり、故・若松孝二監督の遺作『千年の愉楽』(12)で危うい色気を放つ美少年、三谷幸喜監督の『清須会議』(13)では森蘭丸役、そして山崎貴監督の『永遠の0』(13)では物語の鍵を握る特攻兵の役など、イメージにとらわれることなく幅広い役柄を演じきり、彼のキャリアはさらに加速していく。

矢口史靖の『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』(14)、園子温の『TOKYO TRIBE』(14)、三池崇史の『神さまの言うとおり』(14)、山崎貴の『寄生獣』(14)。昨年の出演作を振り返っても、錚錚たる顔ぶれの映画監督の作品に出ていることがわかる。子役時代から培ってき経験と天性の鋭い感覚が、彼の自然体な、それでいて観る者の記憶に残る独特な存在感を生みだし、多くの監督から愛される要因となっているのかもしれない。

 

Keyword 2:無類の“シネフィル(映画狂)”

幼少期に影響を受けた映画スターは、ジェームズ・ボンドとジャッキー・チェンとチャップリン。そこから映画の面白さにハマり、流行りの作品だけでなく名画座に足しげく通うようになったという。マニアックな映画もチェックしPFF(ぴあフィルムフェスティバル)を毎年の楽しみにしている、筋金入りの映画ファンなのだ。

そんな彼が好きな俳優として挙げるのは、オスカー俳優のフィリップ・シーモア・ホフマン。映画『ブギーナイツ』(07)で見せた、セリフを発さずとも佇まいからその人物像が説得力を持って伝わってくる演技に感銘を受けたという。これは染谷自身の、作り込みすぎず「趣」を大切にしたいという演技へのこだわりにも通じるものがある。
また映画を作る「現場」がとにかく好きで、自ら制作に関わることも。主演映画『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(10)のスピンオフDVDには、自身が監督・脚本を手がけ全編16ミリフィルムで撮影した短編映画『シミラー バット ディファレント』が収録されている。そして2年ぶりに監督を務めたショートフィルム『清澄(仮題)』が、映画配信サイトLOAD SHOW(http://loadshow.jp/)で配信される予定だ。「俳優」だけでなく「監督」としての才覚からも、今後目が離せない。

Keyword 3:サエない高校生から天才漫画家まで──今後の注目作

出演作が目白押しの彼だが、2015年下半期もその勢いは止まらない。
まずは大ヒット上映中の主演作『映画 みんな!エスパーだよ!』。2013年にテレビ東京にて放送されたドラマの映画版で、突然超能力を手に入れた平凡な高校生をドラマに引き続き好演している。『ヒミズ』『TOKYO TRIBE』以来の園子温監督とのタッグも注目だ。

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10月には出演作が3本公開される。10月3日公開の映画『バクマン。』は、原作・大場つぐみ × 漫画・小畑健の「DEATH NOTE」コンビの大ヒット漫画を原作に、『モテキ』の大根仁が監督を手がける話題作。染谷が演じるのは、漫画家として週刊少年ジャンプの頂点を目指す2人の主人公たちの前に立ちはだかる天才漫画家。原作ではかなりクセのあるキャラクターだけに期待が高まる。
≫ 映画『バクマン。』公式サイト

二つ目は、イッセー尾形の9年ぶりの主演作『先生と迷い猫』(10月10日公開)。夫婦の愛を描いたハートフルなドラマで岸本加世子、もたいまさこ、北乃きい、ピエール瀧らとともに華を添える。
≫ 映画『先生と迷い猫』公式サイト

そして10月24日公開の『ディアーディアー』は、『ヘヴンズ ストーリー』『かぞくのくに』など数多くの名作の助監督を経験してきた菊地健雄の初監督作。子役時代からの知り合いでプライベートでも親交があるという染谷は、ニート役で友情出演している。
≫ 映画『ディアーディアー』公式サイト

コメディに青春ドラマに人間ドラマとジャンルを問わず引っ張りだこの売れっ子俳優は、まだまだ新しい顔を見せてくれそうだ。


染谷将太
1992年9月3日生まれ。東京都出身。映画『パンドラの匣』(09/冨永昌敬監督)で長編映画初主演。『ヒミズ』(11/園子温監督)で、第68回ヴェネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人賞)を日本人として初受賞し一躍脚光を浴びる。同作と『悪の教典』(12/三池崇史監督)の2作品で第36回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その他の主な出演作に『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(10/瀬田なつき監督)、『永遠の0』(13/山崎貴監督)、『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』(14/矢口史靖監督)、『神さまの言うとおり』(14/三池崇史監督)、『寄生獣』『寄生獣 完結編』(14/山崎貴監督)、『ぶどうのなみだ』(14/三島有紀子監督)、『ストレイヤーズ・クロニクル』(15/瀬々敬久監督)がある。また『おおかみこどもの雨と雪』(12/細田守監督)や『バケモノの子』(15/細田守監督)で声優としても活躍している。

『映画 みんな!エスパーだよ!』
9月4日(土)よりTOHOシネマズ 新宿 他 全国公開中
公式サイト:esper-movie.gaga.ne.jp
【監督・脚本】園子温『ヒミズ』『新宿スワン』『ラブ&ピース』
【原作】若杉公徳「みんな!エスパーだよ!」(講談社『ヤンマガKCスペシャル』所載)
【出演】染谷将太 池田エライザ 真野恵里菜 マキタスポーツ 高橋メアリージュン 安田顕
(2015/日本)

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©若杉公徳/講談社 ©2015「映画 みんな!エスパーだよ!」製作委員会

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